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しのぶの演劇レビュー
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2010年07月30日

非戦を選ぶ演劇人の会ピースリーディング『Re:カクカクシカジカの話』7/20-21全労済ホール/スペース・ゼロ

 劇団劇作家の相馬杜宇(あいばもりたか)さんの新作を劇団チャリT企画の楢原拓さんが演出するという若手コンビへの興味もあり、非戦を選ぶ演劇人の会ピースリーディングを観に行きました。すっごく・・・面白かったです!

 毎年超豪華キャストですが入場料金は全額寄付されますので、出演者もスタッフも全員ボランティアなんですね。微々たる額ですが終演後にカンパさせていただきました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『Re:カクカクシカジカの話

 西山水木さんのアナウンスで開幕。正確ではありませんがこんな感じ↓でした。
 「大勢の演劇人が、仲のいい人も悪い人も、平和への祈りのもとに集まりました。」
 「悪い人も」のところで客席に大きな笑いが起こりましたが(笑)、人間はこうやって、気の合う人も合わない人も、共通する目的のために手を握り合うことができるんだと、見せていただけた気がしました。
 このイベントは世代の異なる演劇人が交流し、ノウハウを共有して受け継いでいく役割も果たしていると思います。

 ここからネタバレします。

■第一部:朗読劇「Re:カクカクシカジカの話」
(作:相馬杜宇 構成・演出:楢原拓 演出補助:丸尾聡)

 内容についてはこちらに詳しいです。細かく書いてくださってありがたいですね。
 核武装派・核廃絶派が上下(かみしも)に分かれてけんか腰で議論するのは、楢原さんらしい“茶番劇”のようでとても良かったです。ザンヨウコさん、西田夏奈子さんの配役はお見事!爆笑させていただきました。
 鈴木瑞穂さんがご本人役で登場し、きのこ雲を目撃した体験をお話(朗読)された時は衝撃と感動で震えました。

 “核の傘”には効果が期待できないという証言の数々。相馬さんは多くの資料を読んで構成されたようです。たとえば防衛目的で日本も核爆弾を持ち、攻撃してきた国に実際に核爆弾を投下したとしたら?自衛とはいえ日本は世界中から非難されて信用を失うことは避けられません。つまり核爆弾は所持しても使うことはできない。資産ではなく負の遺産であるとのこと。

 実在の科学者や弁護士が登場して自身の論文を紹介(朗読)していくスタイルに、坂手洋二さんの作品がパっと思い浮かびました。疑問・反論に次々と答えていく、論理的に説得力のある構成が素晴らしかったです。
 被爆者の証言をクライマックスに持ってきたことに感動しました。核武装するかどうかはただの議論であって、その前に原爆とは何だったのかを、データとしてではなく自分のこととして知る必要があるんですね。相馬さんの磨き上げられた主張を受け取り、井上ひさしさんのあとにつづく若者がここにいた!・・・と思いました。

≪休憩≫

■第二部:インタビュー 鎌仲ひとみ(ドキュメンタリー映像作家)
 聞き手/永井愛・渡辺えり

 鎌仲ひとみさんが凄くって、もう、圧倒されどおしでした。
 映画『六ヶ所村ラプソディー』は拝見しました。必見です。

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 『ヒバクシャ』も観なきゃ。DVDに収録されている短編「女性兵士の証言」(タイトルは不確かです)がその場でスクリーンに映写されました。装甲車に付けられた(塗られた?)劣化ウラン弾でヒバクした若い女性兵士が病状を語ります。恐ろしい。でも知らなきゃ。

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 新作『ミツバチの羽音と地球の回転』で鎌仲さんは「初めて“解決方法”を提示した」とおっしゃっていました。7/25の座・高円寺での上映回には残念ながら行けなかったんですが、ぜひ観たいと思っています。


■第三部:追悼企画 リーディング「井上ひさし 平和への祈り」
 出演:梅沢昌代 神野三鈴 田根楽子 三田和代 渡辺えり すまけい 高橋長英 益岡徹
 構成台本:石原美か子、長田育恵 演出:渡辺えり 演奏:朴勝哲

 『井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法』を中心に。

非戦を選ぶ演劇人の会ピースリーディング vol.13
第一部出演:小山貴司 洪明花 山本悠生 青井陽治 大沢健 野々村のん 松岡洋子 山口馬木也 鴨川てんし 戸田恵子(21日) 板倉光隆 西田夏奈子 三田和代 高橋長英 鈴木瑞穂 渡辺えり ザンヨウコ 小杉美香 伊藤伸太朗 熊野善啓 佐藤滋 松本大卒 横澤有紀 長岡初奈 大谷亮介 深沢敦 成本千枝 舞山裕子 吉本菜穂子(20日) 田根楽子 重田千穂子 有森也実 枝元萌 志賀廣太郎 高畑こと美 小飯塚貴世江 小山萌子 友寄有司 占部房子 三浦孝太 藤井由紀 丸尾聡 中山マリ 円城寺あや 根岸季衣 酒向芳 西山水木
脚本:相馬杜宇(あいばもりたか) 構成・演出:楢原拓 総合プロデュース:渡辺えり 美術:加藤ちか 照明:伊藤孝(ART CORE design) 音響:佐藤春平 舞台監督:金安凌平 演出補:丸尾聡 宣伝デザイン:石原燃 制作:篠原久美子、松岡正勝 協力:ポスターハリス・カンパニー 主催:非戦を選ぶ演劇人の会 特別協賛:全労済ホール/スペース・ゼロ
【発売日】2010/06/19 入場料金(全席指定):一般1500円、中高生1000円、小学生以下500円
http://hisen-engeki.com/information.htm

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年07月30日 16:45 | TrackBack (0)