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Shinobu's theatre review
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REVIEW

2010年10月02日

ワタナベエンターテインメント『D-BOYS STAGE 2010 trial-3「アメリカ」』09/29-10/03本多劇場

 D-BOYS(ディー・ボーイズ)はワタナベエンターテインメント所属のイケメン俳優集団。THE SHAMPOO HATの赤堀雅秋さんを作・演出に迎えて、赤堀さんの人気戯曲『アメリカ』に挑戦します。

 『アメリカ』は初演を観て感動し、私にとってはTHE SHAMPOO HATおよび赤堀さんと出会ったきっかけでもあるので、個人的に思い入れのある作品です。大企業売り出し中のさわやかな男の子たちが、一体どうやってあの、じめじめした行き場のない空間を作るのかしら・・・と期待半分、心配半分、興味津々で伺いました。

 本多劇場での公演は10/3までですが、名古屋、大阪、新潟公演を経て、紀伊國屋ホールで凱旋公演(11/03-07)があります。

 ⇒CoRich舞台芸術!『D-BOYS STAGE 2010 trial-3「アメリカ」

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。★ネタバレ含む。
 築三十年ほどのボロアパートの一室を舞台にした、過去と現在の物語。
 劇団の公演を目前に控えた弟(柳下大)の部屋には、いつものように仲間が集まっていた。
 台本の執筆は一向に進まず、息詰まる空気を打ち破る事ができない。
 一方現在、兄(荒木宏文)は弟が姿を消したその部屋に、遺品整理のために訪れていた――。
 兄と弟…隔てられた2人の気持ちが交差することはあるのだろうか?
 ≪ここまで≫

 構造はほぼ同じとはいえ、登場人物が増えて印象はガラリと違う戯曲になっていました。弟の部屋にやってくる他人(異邦人のような)が増えて、世界が具体的に外へと広がったんでしょうね。弟の同居人がいることで、兄弟の故郷のイメージも膨らみました。

 客席はファンであろう女の子たちでいっぱい。何かあるごとに笑いが起こる、いわゆる“ホーム”感でにぎやかでしたが、最後はじわっと、一人一人が自分の中で気持ちを味わう空気が生まれていたように思います。私も最後はやはりホロリとさせられました。

 ただ、私が初演ファンであるせいもあり、期待していたものからは少々遠かったという印象は否めません。追い詰められても遊び呆けて、気を逸らして逃げようとする、でも行き止まりの息苦しさがが常にある。そういう空気がプツプツと途切れてしまっていたように感じたのが残念。私が拝見したのは初日でしたので、今後きっと変わっていくことと思います。

 公演パンフレットによると、D-BOYSの方々は本当にこういう演劇は初めてのようで、ずいぶん戸惑いもあったことだろうと思います。企画自体が『D-BOYS STAGE 2010 trial』ですものね。トライアル(挑戦)公演で多地域5か所ツアーなんて凄い。人気者は大変ですが、今後も演劇を続けて行っていただけたらと思います。あと、パンフレットの対談を読み、赤堀さんの優しさにジーンと来ました。
 今回出演のD-BOYSの中だと、兄(荒木宏文)の後輩を演じた山田悠介さんが、気持ちも表情も柔らかくて良かったなぁと思いました。バイトを休んだ八田役の加治将樹さんのがんばりにも好感。

 ここからネタバレします。

 脚本が書けない劇団座付き作家の部屋に劇団員が集まる「過去」と、公演終了後に作家がアメリカで死んでしまい、その遺品整理のために作家の兄や劇団員らが集まる「未来」とが、交互に描かれます。お弁当の輪ゴムがポイント。

 具体的には、女性2人(長田奈麻&滝沢恵)が新興宗教の勧誘に来て、お隣さん(廣川三憲)もそれに関わってるというエピソードが増えていました。あとは劇団員も1人増えてたのかしら(怒って退団する池田役:鈴木裕樹)。脚本、演出、演技のどれも初演とは変わってますので、何が原因なのかはわかりませんが、最後に兄と弟とのエピソードに集約されることにちょっぴり違和感がありました。世界が外に広がったので、故郷の家族や全く知らない誰かと誰かなど、最後にもっともっと広がりが欲しいと思ったからかもしれません。

 弟と同居する幼なじみ(黒田大輔)は部屋に集まる劇団員のことが大好き。彼らは何年間も、いつもあの部屋に集まってたんですよね。手を怪我した森(植松俊介)は、弟が死んだ後にその部屋を借りるほどに愛していました。そういう、場所への愛着や執着といったものが匂い立つような、目には見えない何か(つまり一番大事なもの)を感じ取りづらかった。劇団員を演じた方々は、あの装置の中にへばりついて取れないぐらい、居心地が良さそうにしてもいいんじゃないかしら。と同時に、はらはらイライラしてないとダメなんですけど。難しいですね。

 実は超恥ずかしいことに初演のレビューが残っています(汗)。そうか「シチュエーション・コメディー」と思ったのかアタイ・・・「シチュエーション・コメディー」という言葉の意味を間違ってる気がするゼ!(大汗)。でもコメディーだと思ったのには違いないですよね。それぐらい笑わせてもらったんでしょうね。

≪東京、名古屋、大阪、新潟、東京≫
出演:柳下大 加治将樹 鈴木裕樹 植松俊介(シャカ) 山田悠介 黒田大輔(THE SHAMPOO HAT) 長田奈麻(ナイロン100℃) 滝沢恵(THE SHAMPOO HAT) ブー藤原(超新塾) 廣川三憲(ナイロン100℃) 荒木宏文
作・演出:赤堀雅秋 美術:袴田長武(ハカマ団) 照明:杉本公亮 音響:田上篤志(atSound) 衣裳:佐藤明子 ヘアメイク :武井優子 演出助手: 相田剛志 舞台監督:高橋大輔/伊東龍彦 大道具制作:ステージファクトリー田村圭司 小道具:高津映画装飾/池上三喜 運送:マイド 森浩 宣伝:大澤剛 票券:高橋由美(ネルケプランニング) 制作:水島智代 山口由佳子 行元綾紗美 プロデューサー:渡部隆 総合プロデューサー:渡辺ミキ 制作協力:ネルケプランニング 企画・製作:ワタナベエンターテインメント
【前売開始】2010年8月21日(土)全席指定/前売・当日共¥6,000 ※未就学児童入場不可
http://www.d-boys.com/d-boysstage2010/trial-3/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年10月02日 11:26 | TrackBack (0)