2010年03月27日
ハイリンド『泣き虫なまいき石川啄木』03/27-31赤坂RED/THEATER
俳優集団ハイリンドが第9回公演にして井上ひさし戯曲に挑戦。上演時間は約2時間15分(休憩なし)。赤坂RED/THEATERという小空間で、6人の役者さんが真摯に、思いっきり熱を込めて明治を生きた日本の庶民を演じます。
カーテンコールで6人が並んだ時、「あぁこんなに小人数だったのか、もっともっと沢山の人物がいたように思っていたのに」と目が覚めたような気持ちになりました。この驚きが、いいお芝居を見た時の私のバロメーターです。
⇒CoRich舞台芸術!『泣き虫なまいき石川啄木』
≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
啄木が残した15冊の日記。
「焼き捨てろ」と遺言された妻が、今読みはじめる。
啄木の死後、妻はそこに何をみたか。
東京本郷の床屋の二階を舞台に、
啄木、そして彼の家族と友人とが入り乱れ
織りなされるは
借金漬け、質屋通い、嫁姑のいざこざ。
「実人生の白兵戦」を身をもって体感する啄木。
事実より真実を求めた井上ひさし氏の手により、
啄木の最後の三年間が紐とかれる。
ハイリンドは
ただじっと手をみる。
≪ここまで≫
井上ひさし作品はこまつ座で木村光一さん、栗山民也さん、鵜山仁さんらの演出で拝見してきました。今回、小劇場劇団の自主公演で拝見して、井上戯曲を上演するのは難しいんだろうなと思いました。説明ゼリフが多いし登場人物はとても饒舌です。史実にもとづいた作品だから調査も大変でしょうが、フィクション性も高いのでただ真面目にやればいいわけではありません。笑いを生む会話が隙あらばと散りばめられていて、瞬時に気持ちを切り替えて濃いドラマを成立させる必要があります。
そんなハードルの高い作品に挑戦して、見事に目指した世界を成立させていたのではないかと思います。美術、衣裳、音響も上質さにこだわった、3500円の6人芝居。満足させていただきました。
石川啄木役の多根周作さんの演技の密度の濃さ、啄木の妻を演じた枝元萌さんの役柄に入り込んだような感情の激しさが、特に印象に残りました。
ここからネタバレします。
啄木の妻が過去を回想する形で幕が開きます。装置が大きく動いて、啄木の家族が暮らしていた2階のたたみの部屋が出来あがったのが素晴らしかったです。レッドシアターでここまで見せてくれるんだなと嬉しくなりました。
貧しかった石川一家。どんなにがんばっても暮らしは楽にならない、それどころか借金は増えるばかり。それは自分たちのせいじゃなくて、社会のシステムのせいではないかと気づくところに、今の日本と通じるものを感じ、切なくなりました。
【出演】石川一(石川啄木):多根周作 石川節子:枝元萌 石川一禎/カルバン博士:外波山文明(椿組) 石川カツ/片山カノ:はざまみゆき 石川光子/マッキントッシュ:温井摩耶(演劇集団キャラメルボックス) 金田一京助/金本:伊原農 石川京子(声):野々花
[作]井上ひさし [演出]水下きよし(花組芝居) [舞台監督]井関景太(るうと工房) [照明]石島奈津子(東京舞台照明) [照明操作]原雅(東京舞台照明) [音響]高橋秀雄{有限会社アラベスク} [音響操作]美月さやこ [舞台美術]爽井登子 [衣裳]阿部美千代(MIHYプロデュース) [方言指導]詩森ろば(風琴工房) [宣伝美術1西山昭彦 [スチール]夏生かれん [撮影ヘアメイク]田沢麻利子 [Webデザイン]藪地健司・藪地夏子 [ハイ友]杉森佑樹・鈴木貴雄 [小道具協力]高津映画装飾(株) 京阪商会 藤浪小道具(株) 椿組 [企画・製作]ハイリンド゙ [制作]石川はるか [制作協力]山本亜希 [協賛]イースターエッグ
【発売日】2010/02/14 前売/当日3500円 賛助会全ステージ2500円 ① 高校生以下割2500円 ②平日マチネ割3000円 (29日(月)/31日(水)14時の回のみ) ※①②は劇団扱いのみ
http://www.hylind.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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劇団俳小『ゴルゴダ・メール』03/25-29シアターグリーン BOX in BOX THEATER
リーディング公演も拝見していた『ゴルゴダ・メール』(脚本:篠原久美子)。本公演を楽しみにしていました。上演時間は約2時間5分。
いいお話だな、とても勉強になるな、と思いましたが、演出や演技には疑問が多かったです。でも家に帰ってから家族と情報共有できました。劇作家の篠原久美子さん、ありがとうございました。
⇒CoRich舞台芸術!『ゴルゴダ・メール』
≪あらすじ≫
自閉症の若者が集まるグループ「くじらっこクラブ」と一般市民が合同で、プロの演出家・スタッフのもと演劇を創作をする公共ホールの稽古場。
≪ここまで≫
アスペルガー症候群についての劇中劇および稽古場を見せることで、実例を挙げながらその症状や健常者との間に起こる問題を知ることができるのがとても良かったです。帰宅してから家族に劇の内容を話しました。
ただ、役者さんの演技や全体の演出については頭をかしげたくなる場面が多く、新劇の老舗劇団らしい“古き良き演劇”的な風合いを再確認することに。
リーディング公演のレビューを読んでみるに、あの時の方が私は色々考えることができたようです。「本公演よりもリーディングの方が良かった」なんて、ひとことで言えることではないですが、これは残念。
でも私が一番好きだった場面は今回もとても良かったです。タイトルである「ゴルゴダ・メール」をやりとりするところ。
ここからネタバレします。
劇中に登場したアスペルガー症候群の若者は;
雨が体に当たると針で刺されるように痛い。体をいきなり触られると痛いし怖い(やさしく抱かれる場合も同じ)、テストは満点だけれど、学校の友達にも家があり家族があるということは想像できない(他の生徒は学校の備品だと思っていた)など。
そしてモーツァルト、エジソン、アインシュタインもそうだったのではないか等。
アスピー(アスペルガー症候群の人の劇中での呼称)の高校生・順平役の山本悠生さんの存在が自然で、ショートカット茶髪のアスピー・未歩を演じた舞山裕子さんのテキパキとした話しぶりが良かったです。2人とも客演の役者さんですね。
演出家と演出助手(?)が同棲している恋人同士には全く見えませんでした。外見から見てとれる役者さんの年齢や持ち味から考えると、役柄にふさわしい配役とは思えず。長年続いている新劇劇団っぽいなぁと思ったり。
平成21年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業)
出演:山本悠生(俳協) 舞山裕子(劇団昴) 井田紀子 大川原直太 大久保たーマン 今井鞠子 吉田恭子 大多和芳恵 手塚耕一 村松立寛 大庭光皓 岡田萌
脚本:篠原久美子 演出:河田園子&松本永実子 装置:内山勉 照明:古宮俊昭 音響:射場重明 音楽:平岩佐和子 衣裳:五十嵐博子 演出助手:駒形亘昭 舞台監督:勝山かつお 制作:いがりたかし 主催:劇団俳小
【発売日】2009/12/10 前売・当日とも3,500円 期間中有効、全席自由
http://haishou.co.jp/backnumber/golgotha/index.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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