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2011年01月07日

【写真レポート】NODA・MAP「『南へ』制作発表記者会見」01/06マンダリンオリエンタル東京3階グランドボールルーム

 野田秀樹さんが作・演出・出演されるNODA・MAP第16回公演『南へ』の制作発表記者会見に伺いました。妻夫木聡さんと蒼井優さんという超人気俳優が舞台初共演を果たします。お2人以外も演劇ファンにはおなじみの豪華キャスト!

 「今の日本の芝居では観られないような骨太な建造物にしたい」と語る野田さんの新作は、火山を舞台にした“嘘”にまつわる物語です。

 ■NODA・MAP第16回公演『南へ』 ⇒公演公式サイト
  日程:2011年2月10日(木)~3月31日(木)
  会場:東京芸術劇場中ホール
  一般発売日:1月8日(土)10:00~ ★明日です!
  チケット:S席9500円 A席7500円 サイドシート5500円(25歳以下3000円)
   ※高校生割引チケット1,000円は抽選受付:1/11(火)~16(日)
  ⇒CoRich舞台芸術!『南へ

【写真↓妻夫木聡さんと蒼井優さん】
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 ≪あらすじ≫ 配布資料より
 火の山が大好きな男(妻夫木聡)が火山観測所に赴任する。その赴任先で待っているのは、虚言癖の女(蒼井優)。やがて、大噴火の噂が流れる。流れるのは噂だけか。それとも、本当に溶岩が流れ出すのか…。不確かな情報、予知、夢、噂、群がるマスコミ…「信」じられないものばかりで織りなされる、まことしやかな火の山の物語。
 ≪ここまで≫

 ■まずは作・演出・出演の野田秀樹さん、主演の妻夫木聡さんと蒼井優さんからお話をされました。司会は舞台にとてもお詳しいアナウンサーの中井美穂さん。登壇者のお人柄や稽古場の熱が伝わる、生の発言を次々と引き出してくださいました。

【野田秀樹さん/VIPという役】

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 野田「ご覧の通り素晴らしい俳優陣で、スタッフさんも日本が誇るべき方々ばかりなので、あとは台本と演出で出来が決まると思っています。メインキャストの他に25人ぐらい出演します。手前味噌な話ですが、ただダンスするだけではない、かなり質の高いアンサンブルです。
 現在稽古中で、いい感じで進んではいますが、新作なので毎日不安をかかえながらも、今の日本の芝居では観られないような骨太な建造物にしたいと考えています。これだけの役者さんとスタッフさんがいれば表面的に面白いものはできると思うんです。でも志の高いものを作りたいというのが一番です。」

 ―ストーリーについて
 野田「火山の近く、つまり火口のすぐそばにある火山観測所が舞台です。だから必然的によく揺れます。そこに新任の観測所員(妻夫木聡)、嘘つきの女(蒼井優)が現れて展開していきます。火山は“ブジザン”という極めて富士山に似た名前で、この300年間噴火していないという設定。実は富士山は300年前の宝永の世に噴火してまして、その時代の話をからめながら芝居は進行していきます。
 去年は新作を3本書きました。『ザ・キャラクター』と『表に出ろいっ!』の2本は信じ込みすぎる人たちの話。『南へ』はその真逆で“嘘”を書いています。」

 ―タイトル『南へ』ついて
 野田「・・・いま調査中(笑)。観る前にお客さんの方で色々想像してもらって、本番で感じとっていただけたら。意外にくだらない感じで出てくるんですが。」

 ―動画のキャッチコピー『心にマグマを抱えた女』『心に洞窟を抱えた男』について
 野田「マグマとは次から次に嘘をつくこと。嘘をつき続けないと自分の正体がばれるので。洞窟とは、本人が気づかず持っているもの。自分の正体を知りながらわからないようにしてる女と、自分の正体を知らない(いずれ気づく)男、ということです。」


【妻夫木聡さん/観測所に赴任してくる火山を愛する男役】

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 妻夫木「『キル』以来、舞台出演は2度目で、またNODA・MAPに出演させていただくことになりました。『キル』は再々演で台本も最初からあったので修正作業が多かったと思うんですが、今回は新作なので1からスタートです。野田作品は2度目だけれど初めての体験が多くて、いつも新鮮な気持ちでやらせていただいています。ワークショップから出たアイデアを野田さん使ってくれることもあり、一人ひとりがアイデアを出し、力を合わせながら、牛歩ではありますが進んでる感じがします。
 “自分の正体がわからない男”ということで、それはとても難しいし、答えがない世界ですから、探り探りやりながら見つけていこうと思っています。」

 野田「妻夫木とは『キル』が終わった日に、またすぐやろうなって話をしてまして。そしたら彼が大河ドラマに出たので期間が空いちゃったんです。『キル』は再演でしたが、今回は彼を念頭にして役を書きました。」


【蒼井優さん/虚言癖のある女役】

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 蒼井「私は登場して早々に嘘をつき始め、延々と嘘をつき、嘘というマグマの中に飲みこまれたり出てきたり、そういったことを繰り返す役です。自分が真実だと思って言ってことが嘘になるのか、嘘だとわかっていて人を騙すのかは、今のところ探りさぐりやってる段階ですが、どっちにしても嘘を楽しんでいる女性であることは間違いないと思うので、役と同様、楽しんでいきたいと思います。」

 中井「野田作品初出演の蒼さんは、ワークショップも全く初めてということで。ワークショップでは具体的にどんなことを?」
 蒼井「ワークショップは異様な空気感ですね(笑)。みんなでスローモーションで歩くのは想像できてたんですけど、野田さんに『土の気持ちになって歩いて』と言われて。私は土が歩くとは思えないから全く想像できなかったんです。でも他の方がやるのを見ると、本当にみんなが土みたいになっていくので、人間の身体ってなんて無限なんだろうと思いました。私の考えの小ささも痛感しながら、そういうワークショップをみんなで一緒にやっています。」

 中井「野田さんからお手紙をいただいたそうですね。」
 蒼井「私が出演した舞台『楽屋』を野田さんが観にいらして、私がビールの瓶で殴られて倒れるシーンがすごく印象的だったというお手紙をいただきました。」
 中井「野田さんはよくお手紙を書かれるんですか?」
 野田「私の手口ではありませんよ(笑)。ちょうど『ザ・キャラクター』で手書きの話を書いてたので、手紙を書いてみようと思って。女優さんに書いたのは初めてです。直感なんですけど、私はいい女優さんとかなり仕事してきまして、(蒼井)優ちゃんもおそらくそんな女優さんに匹敵するような舞台での素養があると感じたので、一緒に仕事をしたいと思いました。稽古をしていて、その直感は間違ってなかったと思っています。」

 ■その他の登壇者のコメントです。※話された順

【太田緑ロランスさん/火山の麓にある旅館の女将の妹役】
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 太田「NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』で宝物のような経験をさせていただきました。今回は大人数で作る楽しさと難しさを感じています。共演者があこがれの方ばかりなので、色んな事を吸収して自分もアウトプットをしていきたいです。
 私は高田聖子さんの妹役です。聖子さんはものすごく引き出しが多くて、それが本当に素晴らしいんです。ついていくので必死です。がんばります。」


【山崎清介さん/火山観測所の観測員】
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 山崎「30年近く前から野田さんの舞台を拝見させていただいていて、今回初めて出演させていただくことになりました。野田さんが役者として稽古をされる姿を初めて拝見し、壮大な脚本もさることながら、ものすごく自由でとんでもない人だなと実感する毎日で、楽しいです。」


【藤木孝さん/尊い役どころ役】
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 藤木「わくわくどきどきしております。なけなしの想像力と直感をなんとか総動員して、『南へ』という芝居の一員として存在できたらと思っております。野田さんとは15年前に東宝公演『虎』、その2~3年前の『夏の夜の夢』でご一緒させていただきました。でもなにせ15年振りですので(笑)、皆さんのパワーに負けないようがんばりたいと思っております。」


【銀粉蝶さん/尊い役どころ役】
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 銀粉蝶「大変タフな台本で、これをやるにはこちらも相当タフにならないと無理なので、今は五里霧中というのが正直なところです(笑)。稽古場でどんなことでもやってみよう、考えてみようと実践するのは大変ですが、その時間が楽しいです。観たことのない舞台になるといいなという気持ちを、一縷(いちる)の希望にして頑張りたいと思います。
 『ザ・キャラクター』に続いての出演になりますが、“わけのわかなさ”という点では、今回の『南へ』の方が私はわけがわからないです(笑)。『ザ・キャラクター』はすごくわかりました。でも今回は本当にわからない。だからすごく楽しいです。」


【黒木華さん/虚言癖のある女の分身役】
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 黒木「『ザ・キャラクター』『表に出ろいっ!』に引き続き出演させていただきます。周りの役者さんをよく見て、色んな事を吸収したいと思っています。」
 中井「黒木さんは蒼井さん演じる“虚言癖のある女”の分身役ですね。蒼井さんの印象は?」
 黒木「優さんはすごく色んな事を考えていらっしゃったり、本当に元気ではきはきとしてらっしゃって、見てるだけでこっちまで元気になります。一生懸命見て学んでいきたいと思います。」


【チョウソンハさん/火山観測所の観測員】
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 チョウソンハ「『ザ・キャラクター』から続いて二度目のNODA・MAP出演になります。野田さんの稽古場は、何かを決めて積み上げていくにも、生き物のようにずーっと変わり続けていくので、“今、いい状態になれたら”とずっと考えている次第です。野田さんは何でもやらせてくださいます。
 僕はいま29歳で、同世代で演劇をやってる友人も多いんですが、今回のアンサンブルにも若い方が多いです。野田さんは今、若い方とオープンに接していて、若い人間が何を考えていて、どういうことに悩んでいるのかを聴こうと、拾おうとしてくれている。本当にありがたいです。」


【高田聖子さん/火山の麓にある旅館の女将役】
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 高田「女将の高田聖子です。(太田緑)ロランスちゃんのような美しい妹が持てて幸せです。野田さんのお芝居に出させていただくのは(妻夫木)聡くんとの『キル』と、藤木さんとの『虎』に続いて3回目なんですが、本を読ませていただいてもいつも全くわからなくて。『頭悪いな~私』って思ってたんですが、野田さんが稽古初日に『安いことをして、志は高く』とおっしゃっのが励みになっております(笑)。よくわからない大きな塊の外側を、安いことをして、ペタペタといっぱい触っていこう、安い引き出しをいっぱい開いていこうと思います(笑)。」


【渡辺いっけいさん/火山観測所の所長役】

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 渡辺「台本を読ませていただいて、自分があぐらをかいていた部分の扉をあけられたような感じがしました。僕は役者として、野田さんの舞台を観るよりも野田さんと一緒にやる方が好きなので、非常に幸せに感じております。個人的なことですが、共演者にはご一緒したことのある方が多くて、それも安心できるところです。立ち稽古が始まってちょっと経ったんですが、妻夫木くんと(蒼井)優ちゃんが、すごく動くようになったのが楽しいです。早く稽古場に行きたいなと思っています。
 例えば15年前の『虎』の時など、野田さんはアンサンブルに体の利く人か踊れる人をチョイスしていた気がするんです。でも今回のアンサンブルは『ザ・キャラクター』に出ていた方々なので、そういうタイプではない人も多くて。昔の野田さんを知っていた者としては、なぜなんだろうと最初は思ったんですが、一緒に芝居をしていて腑に落ちてきました。面白いんです。すごく新鮮なんです。逆に、そういう子たちと仲良くなっていく自分もいて。さっきも話題に出ましたが、『今の若い子たちをちゃんと見ていこう』という感覚を、野田さんもお持ちなんじゃないかと。面白くなると思います。ぜひご覧になってください。」


 ■妻夫木さんと蒼井さんがお互いの印象などを語ってくださいました。

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 妻夫木「優ちゃんとはだいぶ昔からよく会ってはいたんですが、舞台共演は初めてです。一緒に稽古をしていて、とにかくフィーリングは合うと思います。特に『こうしようね、ああしようね』と打ち合わせをしなくても、なんとなく居場所があるというか。変な気を使わなくても一緒にやれて、すごく気持ちいいなと思っています。
 本当に気さくで、どんな方に対しても同じ目線で話すところは人として尊敬できるし、心がきれいな人なんだろなと思いました。明るい女の子ですよ。」

 蒼井「妻夫木さんとは共通の友人が多くて、その方たちの舞台を観た後に楽屋でお会いするぐらいでした。妻夫木さんは、すごく真っすぐなんだけど、あまり真面目になり過ぎなくて、人がやろうとしていることを受けとめる大きな器のある方。私はその中で伸び伸びとやらせていただいて、一緒にお芝居をしていて肩身が狭くないし、すごくやりやすいです。これから1ヵ月の稽古、2ヵ月の本番があるので、妻夫木さんをはじめ共演者の皆さんと、もっともっと信頼関係を築いて行けたらと思っています。」

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 ※公演特設サイトで出演者の動画インタビューが見られます(現時点では3名)。作品にかける意気込みが生々しく伝わってきます。銀粉蝶さんの言葉にグっと来ました。ぜひご覧下さい!

出演:妻夫木聡、蒼井優、渡辺いっけい、高田聖子、チョウソンハ、黒木華、太田緑ロランス、銀粉蝶、山崎清介、藤木孝、野田秀樹
作・演出:野田秀樹 美術:堀尾幸男 照明:小川幾雄 衣裳:ひびのこづえ 選曲・効果:高都幸男 振付:黒田育世 映像:奥秀太郎 ヘアメイク:宮森隆行 主催・企画・製作:NODA・MAP 提携:東京芸術劇場(公益だ財団法人東京都歴史文化財団)
一般発売日:1月8日(土)10:00~ S席9500円 A席7500円 サイドシート5500円(25歳以下3000円)※高校生割引チケット1,000円は抽選受付:1/11(火)~16(日)※未就学児童の入場不可。
http://www.geigeki.jp/saiji/030/index.html
http://www.nodamap.com/productions/toSouth/


※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年01月07日 16:38 | TrackBack (0)