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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年03月03日

範宙遊泳『労働です』03/02-09 STスポット

 範宙遊泳(はんちゅうゆうえい)は山本卓卓(やまもと・すぐる)さんが作・演出される桜美林大学出身の劇団です。今年6月に開催される芸劇eyes番外編への参加が決まってます。前回公演が面白かったのでうかがいました。

 「スーパー自由席」ということで、観客は劇場入り口で上着や荷物を預ける形式。壁際の席以外は、すべて床にざぶとんを敷いて座ることになります。席を選びたい方はどうぞお早めに劇場へ。上演時間は約2時間。

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 ≪あらすじ≫
 工場労働者たちの日常。彼らの仕事は「ひっぱること」と「くるむこと」。
 ≪ここまで≫

 前回同様、STスポット全体がアクティングスペース。作業服を着た威勢のいい若者たちが、黙々と手作業をしています。でも見るからに不毛っぽい・・・。

 範宙遊泳版『わが町』だったのかなと思います。一見、悪ふざけのようでいて、実は社会をシニカルに見つめる冷静な視点を保ち続けます。わいわいとお祭り騒ぎのようになる場面でも、ちゃんとそれを相対化する演出が用意されていて、巧みに笑いを生み出していました。私も何度も吹き出し笑いや失笑(笑)をいたしました。
 ただ前回のような、観客にお面をかぶらせて公演自体に批評性を持たせるような大胆さや、ビビっとしみてくる毒は少なかったですね。全般的に楽しかったけど物足りなかったな~。

 私は壁際の席だったのでイスはありましたが、2時間座ってるのは厳しい環境でした。床席の人はもっとつらかったことと思います。あれだけ遊びを入れちゃうのなら、観客を巻き込んで何度か席替えタイムとかしちゃっても良かったんじゃないかなと思いました。

 ここからネタバレします。

 自転が止まってしまった地球を動かすために、労働者が「アースコア」をひもでひっぱって動かしています。本社は自動化してるのに、なぜか横浜支社は手動。つまり彼等の仕事そのものが無駄ってことなんですね。無駄と知りながら、もしくはその事実に目をつぶったまま、労働者たちは悲喜こもごもの日常をさらします。

 その工場は範宙遊泳『労働です』というバラエティー番組の収録現場でもありました。司会(福原冠)は『わが町』でいうところの進行役だったのでしょうね。インタビュアーの心無い発言や、どうでもいいことを異様に盛り上げる愚かしさ、匿名なら何でもOKといわんばかりの悪口の応酬は、今のテレビそのもの。

 じゃんけん対決や恋の質問コーナーはアドリブだったのかな~。何が起こるかわからない(ように見せる?)緊張感が良かったです。
 アナウンサー役の女優さんが、横浜駅で一般の方に労働についてのインタビューをしてまわり、それを劇場で生中継していました。劇場の天井に小さなテレビがいくつも設置されていて、生中継だけでなくオリジナルCGアニメも流していました(工場で製造される商品の説明映像として)。今の若い人たちは高度なことをサラっとやってしまうんですよね~。あ、高度だと思ってるのは私だけなのかも(汗)。
 ※山本卓卓さんは現在23歳だそうです!

出演:熊川ふみ 埜本幸良 浅川千絵 大石憲 大柿友哉(害獣芝居) 川口聡 大森美里(劇団大森美里) 加藤サイセイ 丸石彩乃 斉藤マッチュ(劇団銀石) 田中美希恵(贅沢な妥協策) 福原冠 緑茶麻悠 高木健(タイタニックゴジラ)
『作・演出』山本卓卓『演出助手』菅原和恵+戸谷絵里『舞台美術+宣伝美術』たかくらかずき『照明』山内裕太『音響』高橋真衣『楽曲提供』三船雅也(ROTH BART BARON)『振付』北尾亘(Baobab)『衣裳』天神綾子『制作』萩谷早枝子 舞台監督:木村光晴 舞台監督助手:久保田智也 山本恵理
【発売日】2011/01/09 前売2300円、当日2500円 高校生以下1000円 
※3月5日(土)18:00の回は毎度お馴染みサタデーナイト割引 前売・当日共に2000円
http://www.hanchu-yuei.com/
http://www.hanchu-yuei.com/p/blog-page_8287.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年03月03日 11:18 | TrackBack (0)