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2011年04月16日

【写真レポート】わらび座『ミュージカル「おもひでぽろぽろ」』初日前日メインキャスト・インタビュー

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ポスター

 スタジオジブリのアニメーションが初めて舞台化されました(⇒製作発表)。『ミュージカル おもひでぽろぽろ』は山形県の農家を舞台にした純和製ミュージカルです。

 初日前日の記者向けのゲネプロ(本番同様に行うリハーサル)に合わせて、主演の朝海ひかるさんと三重野葵さんが、この震災のもとでの稽古の様子や公演への意気込みを語られました。

 ●わらび座ミュージカル『おもひでぽろぽろ』公式サイト
  期間:2011年4月16日(土)~29日(金・祝)
  会場:天王洲銀河劇場
  チケット:全席指定8,500円(税込)
  上演時間は約2時間20分(途中休憩20分を含む)。
  ※秋田わらび劇場公演など全国ツアーあり。
  ⇒CoRich舞台芸術!『ミュージカル「おもひでぽろぽろ」

 【写真左から:朝海ひかるさん&三重野葵さん】
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 ●名作アニメの舞台化への意気込み

 朝海「ジブリ作品はとても大好きな世界で、『風の谷のナウシカ』からの大ファンなので(笑)、出演が決まった時は信じられないぐらい嬉しかったです。光栄だとも思いました。その世界を表現するために、さらに自分を解放していきたい。今までなかなか行きつくことができなかったことなので、今回はそれを目指してがんばりたいです。」

 三重野「僕もジブリの作品が大好きなので、この舞台に立てることを幸せに感じています。映像をどう舞台にするかについても楽しみが多い作品で、稽古も毎日が楽しかったです。自然と一緒に生きていく人物を描くということは、舞台に立つ自分も自然でいなければいけません。人間の豊かな感情や、ひとつひとつの言葉の力とか、自然からもらった人間のエネルギーを出せたら。稽古の中で初めての体験がたくさんあったので、それを少しずつでも見せられたらと思います。」

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朝海ひかるさん

 ●大地震の直後からの稽古開始

 朝海「3月15日から稽古が始まりましたので、14日から秋田に入りました。震災に遭われた方よりもずっと恵まれた環境でした。東京にいるよりも落ち着いて稽古ができました。秋田で、東京では会えないようなすごく地に根付いた人たちと稽古をさせていただいて、あらためて人間の強さを感じたんですね。周りの環境も違うので、いつもどおりとは違うんですが、とにかく集中して稽古に臨むことができました。自分も地に足をつけて生きていきたいなと思いました。」

 三重野「頻繁な余震で稽古を中断することはありましたが、そんなことにはまどわされずに。僕らにできることは舞台を誠実に作ることです。その思いが美術や衣裳、舞台に立ってる人間一人ひとりの中に垣間見みえたらと思って、毎日稽古をしていました。」

 朝海「わらび座は秋田の劇団で、私も杜けあきさんも仙台出身ということで、座組みには東北出身者が多いんです。東北を舞台にした公演が、くしくもこの時期になってしまったということで。でも特にメッセージ性が強い作品というわけではないので、自然に感じていただけたら。観終わった後に、皆さん個人個人で気持ちを感じ取っていただけたらいいなと思います。」

 ●原作との違い・みどころ

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三重野葵さん

 朝海「原作では、主人公のタエ子と小学5年生のタエ子ちゃんは別々に出てくるんですが、舞台では一緒に会話をする場面があります。」

 三重野「映像では自然を絵画であらわしますが、舞台では人間が木になり水になり、花になり小鳥になり。自然を人間が表現することによって、人間が感じる空気感、世界観を出して行く作品になっています。舞台ならではだと思います。」

 朝海「人間の本質というほど堅苦しいものじゃないですけど、『私たち、昔こんなだったな・・・』と感じていただけたら嬉しいです。演じてみてわかるんですけれども、今ではなくなってしまったものがこの作品にはいっぱいあるんです。たとえば家族や兄弟のけんか、家族団らんとか。人間が土とともに人間として生きてきた頃の、普通のことを思い起こさせてくれると思います。」

 三重野「この作品が公開された時代と今とでは意味合いが変わるでしょうし、ご覧になる方も違います。とらえ方は人それぞれですが、人間が自然と切っても切れない関係にあることは、これからも人間が大事にしていきたいテーマだと思います。それを僕たちが受け継いで、次につないでいけたら。」

 ■インタビューの後にゲネプロ(↓舞台写真)を拝見いたしました。原作に沿いつつ舞台ならではの表現がふんだんにあり、特に人間が自然を表現する場面の美しさは格別で、木々の香りや森の湿度を肌で感じるほどでした。タイトルにある“おもひで”が、個々人の記憶としてだけでなく人類の歴史として描かれ、重層的に広がる世界は圧巻です。

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 杜けあきさんは体調が万全ではないということで、インタビューには出席されませんでした。でもゲネプロでは元気な姿で登場されました!杜さんからのメッセージを頂戴しましたので、掲載させていただきます。

 『稽古開始の3日前に私の出身である仙台を含めた広範囲の地域で大震災が起きました。実際に実家の家族は当日の夜遅くに運良くメールが繋がりました。短く「無事」と。それと親戚は三陸海岸に多く、最終的に全員無事と分かったのは秋田の稽古に来て4日たってからでした。
 秋田に入るまでは「こんなことをしていていいのか。稽古をしていいのか。ボランティアとか行って助けるとか…」という気持ちにすごくなりました。ただこのミュージカルにもある東北という大地、自然の尊さに改めて触れ、被災地に何かを届けることが出来ればという思いで、集中できたのかもしれません。
 もちろんスタジオジブリ作品初のミュージカル化に参加できたことは光栄です。東北が舞台の作品で、今回は東京に住む主人公の「お母さん」、山形に住む「ばっちゃ」という二役を演じます。原作よりも深く描かれている「ばっちゃ」もそうですが、東北人の持つ明るさと強さとエネルギーあふれる部分も伝えていければと思います。
 そしてこの度の東日本大震災に被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。』(杜けあき)

 【写真左から:朝海ひかるさん&三重野葵さん】
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 朝海さんが幼いころを過ごされた故郷が、この度の震災で大きな被害を受けたそうです。「(故郷の)友達とはあえて連絡をまだとっていません」という朝海さんの言葉に、プロの俳優の覚悟を見たように思いました。どんな時も初日の幕は開く。それを死守しようとする舞台関係者の方々の覚悟に触れ、いま上演されている公演、これから幕を開ける予定にある公演の貴重さに、あらためて気づかされました。皆さん、本当にありがとうございます。

【出演】タエ子:朝海ひかる タエ子の母/山形のばっちゃ (2役):杜けあき トシオ:三重野葵 タエ子の父:渡辺哲 ナナ子:高橋磨美 ヤエ子:碓井涼子 カズオ:平野進一 キヨ子:丸山有子 ナオ:鈴木潤子 トノムラ:椿康寛 シロー:北村嘉基 あべ君:森下彰夫 小タエ [こたえ](小5のタエ子):石丸椎菜 アイコ:中里裕美 トコ:志賀ひかる リエ:奥泉まきは アンサンブル:権田いなほ 神谷あすみ 小林すず 伊藤幸世 ※キャストは変更になることがあります。あらかじめご了承ください。
原作:アニメーション映画「おもひでぽろぽろ」 (脚本・監督/高畑勲 原作/岡本螢・刀根夕子) 台本・作詞:齋藤雅文 演出: 栗山民也 作曲:甲斐正人 振付:田井中智子 美術:松井るみ 照明:勝柴次朗 音響:小寺仁 衣裳:樋口藍 ヘアメイク:鎌田直樹 小道具:平野忍 歌唱指導:山口正義 舞台監督:佐久間勝徳 企画制作:わらび座 協力:スタジオジブリ 東京公演主催:日本テレビ・わらび座・銀河劇場
12月4日(土)発売  全席指定 8,500円(税込)
http://www.warabi.jp/omoide/
インタビュー、ゲネプロ舞台写真:mao

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年04月16日 12:05 | TrackBack (0)