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しのぶの演劇レビュー
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2011年11月15日

新国立劇場演劇『天守物語』11/05-20新国立劇場中劇場

  新国立劇場の【美×劇】(ビ・カケル・ゲキ)シリーズ3作の最後は、中劇場で上演される『天守物語』。泉鏡花による1917年に発表された戯曲を、「和もの古典は初めて」という白井晃さんが演出されます。⇒制作発表会写真レポート

 奥行きとセリ(床が上下する装置)を存分に使った豪華な舞台で、きらびやかな衣装の俳優が舞い、戦います。約100年前の美意識を私たちが受け継ぎ、伝えていきますという新国立劇場の意思表示と受け取りました。上演時間は約1時間50分。⇒舞台写真

 ⇒『天守物語』は青空文庫に全文掲載されています。
 ⇒CoRich舞台芸術!『天守物語

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 武田播磨守の居城、白鷺城の天守閣。巨大な獅子頭がすえてある最上階には、魔界の者たちが住んでいる。今宵は天守夫人・富姫の親しい友・亀姫がやってくるというので、腰元たちは歓待の準備に大わらわ。
 亀姫の一行が到着し、楽しいひと時を過ごす魔物たち。亀姫は手土産の男の生首を披露する。それはこの白鷺城の城主・播磨守の兄弟で、猪苗代亀ヶ城の城主・武田門之介の首だった。亀姫がそろそろ帰ろうとするところへ、城主・播磨守が鷹狩りから戻ってくる。播磨守自慢の白鷹をすっかり気に入った亀姫。富姫は白鷺に化けて羽ばたいてみせ、それに釣られて飛んで来た白鷹を捕らえて亀姫に進呈する。
 日はとっぷりと暮れ、富姫が一人獅子頭の前に佇んでいると、灯りを手にもった一人の若者が現れる。その若者は播磨守の鷹匠・姫川図書之助(ずしょのすけ)と名乗り、白鷹を逃がしたために切腹させられるところ、だれも恐れて登ろうとしない天守に白鷹の行方を捜しにいけば一命を助けようといわれたと語る。
 富姫は心がまっすぐで凛々しい図書之助を一目で気に入ったが、天守へ登ってくる者は生きて返さない掟なので、二度とここへ来てはいけないと諭して帰す。しかし雪洞の灯りを大蝙蝠に消されてしまった図書之助が火をわけてほしいと戻ってくる。
 もはや図書之助を愛おしく思う富姫は、彼を帰したくないと告げるが、図書之助は迷いつつも地上に戻ることを選ぶ。富姫は自分に出会った証拠として、さきほどの播磨守秘蔵の兜を渡す。
 しかし図書之助は、兜を盗んだという疑いをかけられ三度、天守にのぼってくる。無実の罪で殺されるくらいなら、天守に登った罪で姫の手にかかって死にたいと。
 追手に囲まれる富姫と図書之助。二人は獅子頭の中へと逃げ込むのだが……。
 ≪ここまで≫

 富姫の「今度来ると帰しません」というセリフが胸に刺さり、じわじわと浸透して、今も私を支えてくれています。自分の信念を曲げず、相手を尊重し思いやり、恋こがれる気持ちも伝えています。篠井英介さんの演技のおかげだと思います。

 亀姫役の奥山佳恵さんは妖怪であることに納得の怪しさと恐ろしさ。きびきび、ぱっきりと動く所作も美しく、ぎらぎらとした笑顔に不気味さも漂いました。

 ここからネタバレします。

 富姫が図書之助に一目ぼれする瞬間、素敵だった~~~♪彼の美貌だけでなく、やはり生き方を見込んだからですよね。図書之助が三度目に戻ってきた時に、ようやく相思相愛を確認するのは「三顧の礼」なのかな。奥ゆかしい。
 「今度来ると帰しません」は、「人間は生きて天守から戻れない(あなたを殺します)」「愛しているから帰さない(あなたを私のものにする)」という意味であり、「これが今生の別れです」というお別れの言葉でもあります。この瞬間があるだけで、いい。満足です。

 オープニングは3人の現代服の男性(篠井英介、平岡祐太、小林勝也)が舞台上に居ました。白いシャツに白いズボンの篠井さんは死んでいるかのように、ほぼうつぶせで床に横たわっています。それを小林さん(だったか平岡さんだったか)が起こして、生き返らせて、3人一緒に舞台から去りました。その後、赤い着物の小さな少女たちが登場して『天守物語』が始まります。今はもうなくなってしまった美意識を「横たわる富姫(篠井)」で表現したのだと思います。

 富姫(篠井)と恋に落ち、汚い人間の世界に別れを告げた図書之助(平岡)ですが、武士たちに襲われて富姫ともども失明してしまいます。そこに突然、翁(小林)が現れ、あっという間に魔法で2人の目を治しました。とても唐突であっけないハッピーエンドなのですが、白い照明が明るく、神々しく舞台を丸裸にするように3人を照らす、ダイナミックで力強い演出が施されていました。

 現代の若者(平岡)が100年前の日本人の美意識を体現した富姫(篠井)を愛し、ともに戦い、敗れた。そして彼らを現代の老人(小林)がよみがえらせた。すなわち私たち現代日本人(若者から老人まで)は、先祖の遺志を汲み取って、再現し、これからも受け継いで生きていきますと表明したのだと思います。

 ≪終演後のトーク≫
 出演:白井晃 篠井英介 平岡祐太 宮田慶子 司会:中井美穂

 衣装について篠井さんが「今まで私が着たどんな衣装よりも重いです」とおっしゃいました。・・・なんと!そ、それは・・・重たそうだ・・・。
 そういえば女中たちと朱の盤坊(坂元健児)のダンス場面を長く感じたり、ところどころ所作のキレがにぶいように見えたのは、衣装が重たいせいなのかしらと思いました。

【美×劇】─滅びゆくものに託した美意識─Ⅲ『天守物語』
出演:篠井英介 平岡祐太 奥村佳恵 村岡希美 関秀人 関戸将志 坂元健児 小林勝也 田根楽子 江波杏子 粟田麗 鳴海由子 小見美幸 岡野真那美 冠野智美 淺場万矢 飛鳥井みや 津村雅之 今國雅彦 稲葉俊一 早川友博 関佑太 遠藤広太 平良あきら
作:泉鏡花 演出:白井晃 音楽:三宅純 美術:小竹信節 照明:齋藤茂男 音響:井上正弘 衣裳:太田雅公 ヘアメイク:川端富生 振付:康本雅子 殺陣:渥美博 演出助手:河合範子 舞台監督:藤崎遊
一般発売日:2011年9月11日(日) S席7,350円 A席5,250円 B席3,150円 Z席1,500円 三作品特別割引通し券16,600円(正価18,900円)
http://www.nntt.jac.go.jp/play/tenshu/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年11月15日 11:42 | TrackBack (0)