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2011年11月25日

本多一夫/本多劇場グループ『うお傳説~立教大助教授教え子殺人事件~』11/19-28ザ・スズナリ

 下北沢にある劇場ザ・スズナリの30周年記念公演です。こけら落とし公演で上演された山崎哲さんの戯曲『うお傳説』を、三条会の関美能留さんが演出されます。有名劇場の記念公演ならではのキャスティングにもうなります。

 上演時間は約2時間45分(途中1回の休憩含む)と長い目ですが、私はそれほど長さを感じませんでしたね。いろいろビックリさせられて(笑)、悶々としつつも、楽しく考えをめぐらせながら拝見しました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『うお傳説

 ≪あらすじ≫
 病院。入院中の妻を見舞う夫。風変わりな入院患者たちの中に、夫の知り合いだという若い女性がおり・・・。
 ≪ここまで≫

 まちまちの長さの丸太が10~20本ぐらい、床からそそり立つように建てられています。役者さんは公園の遊具のように、木の切り株の上を歩きます。見ていて「危ないな~」とハラハラするぐらいの高さがあるので、役者さんにかかる負荷は大きいと思います。そんな不安定さがライブ感と緊張感を高めていました。

 60~70年代のアングラ演劇の色が濃い物語や言葉は、決して得意ではないのですが(前半はメゲかけましたが)、驚きが連続する演出と役者さんの堂々とした力強い演技のおかげで、集中して観ることができました。
 関さんの選曲はいつもながら面白くて、鳴ったとたんに吹き出し笑いをしそうになることもありました。

 入院中の妻役の占部房子さんが素晴らしかった!切り替えが早くて、爆発力があって、か細い体なのに魔女のようにも見えました(笑)。ボーイッシュな役も演じられる女優さんですが、今回はすごくセクシーでした。

 ここからネタバレします。

 オープニングでいきなり初音ミク(笑)。何でも来い!!って気持ちになりました。妻(占部房子)のテーマ曲なんですね。ボーカロイドはソフトウェアですから実在の人物ではないのですが、もはやアイドルのような存在感です。それが「居るのか居ないのかわからない妻」と被るのかしら。

 入院患者の男性2人をノゾエ征爾さんと森下真紀さんが演じますが、森下さんは女性ですからとても不思議。どうやらお2人は夫婦の子供たちのようです。床穴からツルリとすべるように登場・退場するので魚のようだったり。
 夫の愛人役の中島愛子さんもかっこ良かったな~。車椅子に座ってパソコンを触っている演技は、現代の若者を表しているように思えました。
 看護士(榊原毅)が出来事を俯瞰する立場で長く舞台上に居てくれるのが、私の支えになりました。入り込むにはちょっと難しい、唐突で、不思議なお話なので。

 色んな想像がふくらむ美術でした。ゴムひもを何本も貼りめぐらした四角い木枠が、床から徐々に上に上がって行き、水面が上昇するのをあらわしていました。丸太が池に生えている古木にも見えることもあり。

 最後の演出が凄かった!スモーク(水けむり?)がプシューーーーーー!!!と噴射され、舞台をもっくもくの白い世界に変え、そこにシャボン玉も大量に発生!・・・海になった!!泡になった人魚姫のことをすぐに想像しました。
 床穴(奈落)から風が吹き込んでいるので、次第に煙が天井方向へと上がっていきます。舞台の丸太が見えてくると、そこにはもう誰も居ませんでした。人々は消えてしまった・・・。

 エンディングに「スタンド・バイ・ミー」が流れて、またもや驚きましたが、そういえば父、母、娘、息子でちょうど4人ですよね(映画「スタンド・バイ・ミー」は4人の少年のお話でした)。「お願いだからそばにいて」ってことなのでしょう。は~面白い。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 パネリスト:戌井昭人(鉄割アルバトロスケット) 関美能留(三条会) 司会:徳永京子(演劇ジャーナリスト)

 戌井昭人さんと関美能留さんは同じ世代で、同じ時期に劇団を旗揚げされたというつながりがあるそうです。
 関「一家心中の際、先に子供たちを海に落とす。その後で夫婦が身を投げるまでの数分間の話、かもしれない(それを2時間45分で見せた)。」

出演:谷川昭一朗 (劇団東京乾電池) 占部房子 ノゾエ征爾 (はえぎわ) 榊原毅 (三条会) 渡部友一郎 (三条会) 森下真樹 中島愛子
脚本:山崎哲(新転位・21) 演出:関美能留(三条会) 舞台監督:森下紀彦 照明:杉本公亮 音響:島猛(ステージオフィス) 舞台美術:石原敬(有限会社宮本宣子ワークショップ) 宣伝美術:斉藤いづみ(rhyme inc.) 演出助手:山田真実(ttu) 演出部:神永結花 西村耕之 企画・製作:本多一夫 本多劇場グループ
指定/一般前売 ¥3,500 当日 ¥3,800 自由/一般前売 ¥3,200 当日 ¥3,500
学生前売 ¥2,000 当日¥2,300(当日要学生証提示)
http://www.honda-geki.com/suzunari/koen/uodensetsu.html
http://www.honda-geki.com/suzunari/30HP/top3.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年11月25日 11:02 | TrackBack (0)