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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2012年06月21日

タカハ劇団『ネジ工場』06/20-24駅前劇場

 タカハ劇団は高羽彩さんが作・演出されるプロデュース形式の演劇ユニットです。初日に伺いました。今週末、日曜日が千秋楽で、いつもより公演期間が短いですね。上演時間は約1時間50分。

 以下、ツイッターCoRich舞台芸術!に投稿した短い感想です。
 一見、ザ・昭和な具象美術の温かい人情劇だが、時間軸にも時代にも一捻りあり。昔懐かしい平穏な生活を望む姿は愛らしいが、それ自体が今の私たちいは風刺に映る。その狙いがいい。現代日本への痛烈な批判も込めたファンタジー。

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 ≪あらすじ≫
 両親を亡くした3兄弟が経営するネジ工場。ばたばたと死者が出るさびれた町で、今日もいつも通りの平穏な一日を過ごすはずだった。
 ≪ここまで≫

 3兄弟(有川マコト、夏目慎也、山口森広)のケンカやじゃれあいに、いわゆる“家族の幸せ”が見て取れます。でもそれがあからさまにレトロに(昭和風に)描かれていることに、作者の意図を感じました。いつまでも震災以前の、いえ、「誰でもがんばれば幸せなれる」と信じられた高度成長期のように、無邪気(イノセント)なままでいる大人たちへの批判だと思います。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 「父の時代には、俺たちが作ったナットが使われている宇宙ステーションを、みんなで見上げて手を振った(空を飛ぶ宇宙ステーションを目視できた)」らしいので、かなり未来の話だろうと受け取りました。

 喪服を片付ける間もないほど、次々に人が死んでいきます。不穏なサイレンの音が鳴る度に「ああ、また誰か死んだな」とつぶやく。それがほぼ当たり前になっている日本。
 補償金申請の書類の項目がてんででたらめ(「死んだ夫と最初にデートした時に食べたのは何?」「なまこアイスか、くらげアイスか」)で、でもしっかりコツを押さえて空欄を埋めて提出さえすれば、補償金はもらえる(かもしれない)とのこと。被災状況報告書を連想させます。

 ネジ工場の土地の権利書を持って夜逃げした司法浪人生(大佐藤崇)が、血まみれになって引き戻されてきて、言います。「とにかく怖い。早くこの国から逃げ出したい。」「お前らが作ってるネジが何に使われてるか考えろ(軍事利用だぞ)」と。知識人だけが事実を知っていて、金持ちだけが逃げ切れる世の中。無垢でいることの罪にも言及しています。

 ガチャ好きの次男が、突然現れた妹をなぐさめるために「ガチャいる?」と言ったのが可笑しかったです。

第8回公演
出演:有川マコト(絶対王様) 板倉チヒロ(クロムモリブデン) かんのひとみ(劇団道学先生) 大佐藤崇 夏目慎也(東京デスロック) 水谷妃里 山口森広(ONEOR8) 春日由輝(劇団プレステージ)
脚本・演出:高羽彩 舞台監督:藤田有紀彦 舞台監督補佐:陶山浩乃 舞台美術:稲田美智子 照明:吉村愛子(Fantasista?ish.) 音響:角張正雄 宣伝美術・宣伝写真:羽尾万里子 舞台写真:林亮太 制作:feblabo 制作協力:嶌津信勝(krei inc.) 制作補佐:丸山緑(劇団霞座) プロデューサー:池田智哉(feblabo)
一般前売り開始 2012年5月26日(土)10:00~ 予約・当日共 3600円 ★=初日・平日昼割引 3300円 学生割引 2000円(要予約・要学生証提示) ペアチケット(2枚一組)6600円(要予約) 全席指定席
http://takaha-gekidan.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年06月21日 15:22 | TrackBack (0)