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REVIEW

2012年08月11日

ロロ『父母姉僕弟君』08/05-14王子小劇場

 三浦直之さんが作・演出される劇団ロロの新作は、佐藤佐吉演劇祭2012参加作品。上演時間は約2時間。8月13日(月)14:00に追加公演があります。
 
 ロロは来月の東京芸術劇場リニューアル記念『東京福袋』の9月6日(木)19:00に出場。次回は10月に京都のKYOTO EXPERIMENT 2012・フリンジ"PLAYdom↗"に参加されます。東京の小劇場劇団が首都圏以外の地域でツアー公演を行うことが増えていますね。

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 ≪あらすじ≫
 妻とドライブ。彼女はもうすぐ死ぬんだ。
 ≪ここまで≫

 王子小劇場の劇場入り口側が舞台。ベニヤ板の表面がそのままむき出しで使われた抽象美術です。シンプルなようでいて実は仕掛けがあって、毎度のことながら、ライブの舞台ならではのサービス精神に富んでいて嬉しいです。
 ほぼ何もない空間でイスを移動させるだけで場面転換するのが、安易には映らず、絵的に美しかったのが良かったです。三浦さんの演出のセンスはどんどん洗練されてきているように思います。

 ストーリーに理路整然とした筋道はない、脈絡など重要ではないのだと気づいてから、何のためにこのような表現をしているのかと探りながら観ることになりました。
 家族は集団演技の賜物で、疑似家族の営みは、まるで野球のチームのようにポジションが決まっていてルールも明確。家族(チーム)を構成する人々のそれぞれの理想がぶつかって、すれ違って破たんします。過去、現在、未来を同時に起こし、生前、死後を現世と混在させる試みが成功していたと思います。

 脚本については、なぜここでその話題になるのか、なぜこの言葉を交わすのかという必然性があまり感じられないことがあって、2時間という上演時間は私には長かったです。いわゆるポピュラーなテレビドラマや楽曲、もしかしたら漫画や小説などから多数引用されていたようですが、残念ながら私にはわからないことが多かったです。

 役者さんでは柿喰う客の葉丸あすかさんの存在がヴィヴィッドでした。

 ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。

 土に埋まっている死者も、天に昇った死者も、まだ生まれていない赤ん坊も、同じ場所に。

 死んだ妻は夫に「憶えていて」「忘れないで」と言い続けます。それに対して夫が「思い出せる限りの全てを、できる限り細かく、記述する」と答えたのには納得でした。私たちはどうしたって何でも忘れます。だから、主観が入ってしまうとはいえ、記述することが大事なんですよね。自分が死んだ後も誰かが読んで伝えてくれるかもしれない。8月なので、ちょうどこんな記事↓も。
 ⇒被爆の記憶、あなたに託す 次世代の語り部、養成中(朝日新聞)

 ペット猫になった父につけた名前が「パブリックビューイング」ってのが可笑しかった。
 "We are the world"のトボけた茶番風の合唱の中、「なんでやねん!」とつっこみ続けるが良かったです。

 終盤のクライマックスで、上下(かみしも)に設置された2つのベニヤの壁が開いて、互いに中央に向かって迫っていき、客席からすごく近い位置でぴったりと閉じて巨大な壁になりました。主人公である夫(亀島一徳)が野球用バットで板を叩き破り、死んだ妻がいる“大きな木の下”に行きます。木の根元には妻の他に数人が寝そべっていました。黄泉の国だし天国だし夢の中だし。木の前で話す男女に日本神話のイザナミとイザナギも連想。
 そういえば夫は最初から1つの場所(妻との思い出の地)を目指していました。「人は場所に染み付いている」ものなのだと思います。

佐藤佐吉演劇祭2012参加作品 vol.8
出演:亀島一徳、篠崎大悟、望月綾乃、内海正考、小橋れな、島田桃子、多賀麻美、田中佑弥(中野成樹+フランケンズ)、葉丸あすか(柿喰う客)、山田拓実
脚本・演出/三浦直之 美術/松本謙一郎 照明/工藤雅弘(Fantasista?ish.) 音響/池田野歩 衣裳/森本華 舞台監督/鳥養友美 演出助手/中村未希 宣伝美術/玉利樹貴 制作助手/鈴木猛丸・横井貴子 制作/坂本もも 企画製作/ロロ
【休演日】なし 一般:2800円 学生:2500(要・学生証提示) 当日:300円増し 高校生以下:1000円(要・学生証提示、一律) 平日お昼の回割り引き:各料金より300円引き リピーター割引き:1000円(要・予約、一律)
http://llo88oll.com

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年08月11日 13:21 | TrackBack (0)