REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2012年09月02日

劇団オルケーニ『ジャンク・オペラ「ショックヘッド・ピーター ~よいこのえほん~」』09/01-09東京芸術劇場シアターイースト

 9月1日に東京芸術劇場がリニューアルオープンしました!⇒記者発表会・内覧会の写真レポート シアターイーストで一番初めに開幕したのはハンガリーからやってきた劇団オルケーニの親子向け音楽劇です。上演時間は約1時間40分(途中休憩を含む)。ハンガリー語上演・日本語字幕つき。

 舞台写真がかなり刺激的なので覚悟はしてましたが(笑)、やはり実際に観るとキョーレツ!幕開けからガツンとブラック!!でもユーモラスで愛らしいので、お子様も大丈夫です(ただし親御さんの付き添いは必要かと)。役者さんも上手いし、舞台下のピットで生演奏もあってとても贅沢でした。赤い緞帳もあるので『チェーホフ?!』を思い出しました。

 ※開演前に『ひつじ』が無料で観られます!ぜひ合わせてどうぞ♪

【舞台写真 photos by Eszter Gordon】
20120901_SHP1.jpg

 ⇒公式サイトに舞台動画・解説あり
 ⇒ぴあ「大人も子供も喜ぶ怖くて愉快な音楽劇『ショックヘッド・ピーター』ハンガリー版が来日
 ⇒CoRich舞台芸術!『ジャンク・オペラ「ショックヘッド・ピーター ~よいこのえほん~」

 原作は1845年に書かれたドイツの絵本で、1998年にミュージカルになってロンドンで初演されました。2009年にハンガリーの劇団オルケーニが翻案・演出した新バージョンが、今回の来日作品です。演出はアシェル・タマーシュさん。

 ロポス博士(ガールフィ・ラースロー)なる人物が、「純真そうでいて本当は必ず悪心を持っている子供という生き物」について、解説をしていきます。悪ガキの自業自得による最期、親による虐待死など、子供1人ずつのエピソード紹介をするごとに、赤い幕が閉じるオムニバス形式。ロポス博士役のガールフィさんはほぼ出ずっぱりで、細かいしぐさなども作り込んでらして素晴らしかったです。

 スプラッターホラーなストーリーなのに、あっけらかんと音楽に合わせて歌って踊るのがシュール。メイクは皆がゾンビのようにグロテスクなんだけど、メルヘンな可愛らしさがハマります。少年を女性が、少女を男性が演じ、性を入れ替えることで虚構性が増し、舞台上で起こる事件から距離を置いて観られたのも良かったです。「絵本」であることが舞台から感じ取れました。

 最初に残酷な表現があった時、後ろの席から「もう帰る~… (´;ω;`)」というお子様の声が聴こえたのですが、結局はご両親と一緒に最後までご覧になってました。慣れてくると、あまりに露骨で笑えてくるんですよね(笑)。大人の私は最初っから爆笑でした。だってひどいよ、ひどすぎるっ!(笑)
 でも過激でシュールな笑いばかりが目立つわけではなく、色んな教訓が読みとれるお話でした。説教くさくないからいいですね。

 初めて知ったのですが、ハンガリーでは氏名が日本と同様の並びだそうです。苗字の次が名前なんですね。ハンガリー人はアジアからヨーロッパに移動してきて、9世紀ごろから現在のカルパチアに定住をした民族だそうです(当日配布パンフレットより)。

【舞台写真 photos by Eszter Gordon】
20120901_SHP2.jpg

 ここからネタバレします。

 マッチで火遊びして自分を燃やした女の子とか、犬に乱暴して逆に咬みつかれて死んだ男の子とか、ゆびしゃぶりする赤ちゃんが指を全部切られて出血多量で死ぬとか…死にすぎ!(笑) 自分の不注意で溺死したり、空を飛んでそのまま帰ってこない子供たちもいました。親の虐待がひどかったですね。最初に父親が「この鼻は俺のものだ!」と言って息子の鼻をもぎ取ったら、次は母親が「このおでこは私に似てる!」とか言って息子のおでこを剥いでしまうのが強烈だったな~(笑)。
 
 前半は物語の進め方や、壁にたくさんドアがついた舞台美術と組み合わせたステージングなど、目新しくて工夫が凝らされた演出、演技に引き込まれたのですが、後半は遠くから眺めるような心地になり、ちょっとさびしかったですね。なぜかはわからないのですが、私個人としては、観客の方まで迫ってくるような熱量があまり感じ取れなかったせいかな~と思います。

東京芸術劇場リニューアル記念 TACT/FESTIVAL 2012 "Shockheaded Peter Good Children's Picture Book"
出演(※以外は劇団オルケーニ所属):ガールフィ・ラースロー(ロボズ博士)※ マーテー・ジョルト(コール博士) ジャブロンガ・ヨージェフ(ママ)※ チュヤ・イムレ(パパ) ビーロー・クリスタ(ピーター) フュル・アニコー(夢見がちなジョニー) サントネル・アンナ(空飛ぶロバート) ケレケシュ・エーヴァ(いじわるなフレデリック) ポガーニ・ユディット(指しゃぶりコンラッド) タカーチ・ノーラ・ディアーナ(落ち着きのないメガネのフィリップ) デブレツェニ・チャバ(拒食症のアウグスタ) フィツァ・イシュトヴァーン(マッチ好きのハリエット) 音楽監督:ダルヴァシュ・フェレンツ※
作:ジュリアン・クラウチ/フィリム・マクダーモット/タイガー・リリーズ(音楽) ハンガリー語版翻案:パルティ・ナジュ・ラヨシュ ハンガリー語版演出:アシェル・タマーシュ 劇団オルケーニ芸術監督:マーチャイ・パール 共同制作:パレス・オブ・アーツ 主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
【休演日】9月3日(月)【発売日】2012/06/09 一般:4,000円 / こども(高校生以下):1,000円 / 親子セット券:4,500円(高校生以下対象) / 65歳以上:3,000円 / 25歳以下:2,500円
※65歳以上及び25歳以下割引チケットは、東京芸術劇場ボックスオフィスHPにて、前売のみ取扱い。※こども券でご入場の際に年齢の確認ができる身分証のご提示をお願いする場合がございます。※一般、こども、親子セット券は当日券を販売予定。(一般・親子セット券は前売料金に500円プラス)
※劇中に小さなお子様にとってやや怖く感じる場面がございます。就学年齢以上のお子様との同伴鑑賞をおすすめいたします。
http://www.geigeki.jp/theater/004/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2012年09月02日 21:26 | TrackBack (0)