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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2012年12月28日

クロムモリブデン『節電ボーダートルネード』12/20-30赤坂RED/THEATER

 青木秀樹さんが作・演出される劇団クロムモリブデンの新作。今年の震災および原発事故で露わになった日本の腐敗した政治、経済の実態を、ブラックユーモアを大量に散りばめて描く娯楽作でした。
 “フィクションを超えた現実”を生きることになった私たちに、フィクションの力でその現実からの再生を示してくれました。あまりに感動したのでロビーで公演Tシャツを購入!上演時間は約1時間35分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『節電ボーダートルネード
 ※レビューは2012年6月27日にアップしました。

 ≪あらすじ・作品解説≫ CoRich舞台芸術!より。
 巨大竜巻に襲われた地区の隣街では倒壊した刑務所から凶悪凶暴犯罪ボーダーたちが脱走してくるのではないかとの噂が噂を呼ぶ。
 受験生が受刑者と間違われ、狡賢い人が偽善者と間違われ、模範囚がギタリストに間違われる。
偽ミュージシャンが横行し、銀行は襲われ、お札は救われ、女性たちは怯え、海は荒れ果て、猫はビョーと鳴き、ウミネコが空から降り注ぐ!
 そんなダイナモ切ない帯電男が粋な看守の計らいで、トルネードあふるるトレモノ女に風力の歌を聴けとばかりに無理強い迫りくる
 直流交流ツイスト&ツイスター!ディザスター!
 ≪ここまで≫ 

 腰の高さまでありそうな四角い台が2つ、舞台上に置かれています。その台の真ん中には穴があいていて、そこから人が飛び出たり沈み込んだり。舞台の床下に秘密の通路があるんじゃないかと想像させ(実際はないのに)、異次元への通路のような役割を果たしていました。

 不謹慎とも受け取れる妄想世界がノリノリに実体化されます。爆音の音楽が気持ちいい!私の中の暴力的な何かが目覚めるような、興奮と快感がありました。うーん、恐ろしいね私!

 役者さんはそれぞれに個性をはっきりと出して、媚びずに堂々と存在。鬱の女性(幸田尚子)と躁の女性(七味まゆ味さん)の精神病患者コンビの早口演技合戦は圧巻!看守(?)役の森下亮さんのドS(エス)ッぷりに、またもやゾッコンでした。

 ここからネタバレします。

 全体が、幼い女の子に性的いたずらをして牢屋に入っていた精神科医(板倉チヒロ)と、その被害者女性(幸田尚子)の妄想だった…とも受け取れる構造でした。“加害者”を一方的に責めて、吊るしあげるのではなく、彼もまた人間であると描いていたように思いました。

 被害者女性(幸田尚子)がスーツ姿で左の穴から飛び出した時、「あぁ、彼女は治ったんだ」と思いました。それは夢だし、希望です。彼女に次いでどんどん出てきた働く現代人たちは、妄想世界の住人たちでもあり、私でもあります。夢だと思いたくなるほどおぞましい現実を、きちんととらえた上でブラックな笑いへと変換して、「それでも生きる私たち(キャストも観客も含む)」を肯定し、勇気づけてくださいました。

≪大阪、東京≫
出演:森下亮・金沢涼恵・板倉チヒロ・奥田ワレタ・久保貫太郎・渡邉とかげ・幸田尚子・小林義典・武子太郎・花戸祐介・七味まゆ味(柿喰う客)
【脚本・演出】青木秀樹【音響効果】 笠木健司 【照明】 床田光世 【美術】 ステファニー(劇光族) 【舞台監督】 塚本修 今井康平(CQ) 【衣装協力】 浅利ねこ 【美粧】 中西瑞美(ひなぎく) 【演出部】 入倉麻美 伊豫田一成 松岡眞吾 【宣伝写真】 安藤青太 【宣伝美術】 原田康徳 【Web】 小林タクシー(ZOKKY) 【制作】 床田光世 野崎恵 安井和恵 新谷純 【企画・製作】 office crome
【発売日】2011/10/30 <一般>前売3500円、当日3800円 <学生>前売2500円、当日3500円 *要学生証・所属証明証:大学・大学院生以下、専門学校、劇団付属研究所も含む、当日受付にていずれかの証明証をご提示頂けなければ、一般料金とさせて頂きます。  <リピーター割引あり>  詳細は公演中、劇場にてご確認下さい。
http://crome.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年12月28日 23:50 | TrackBack (0)