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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2013年06月15日

ブルーノプロデュース『My Favorite Phantom』04/26-29吉祥寺シアター

 ブルーノプロデュースは橋本清さんが構成・演出される演劇ユニットです。橋本さんは急な坂スタジオの「坂あがりスカラシップ」対象者に選ばれています。東京デスロックの演出部にも所属されていましたが、最近退団されました。独立されたということですね。

 「CoRich舞台芸術まつり!2013春」審査員として拝見しました(⇒99本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。下記にも転載します。

 ⇒CoRich舞台芸術!『My Favorite Phantom

■我が道を進み極める

 シェイクスピアの戯曲『ハムレット』を題材にしたパフォーマンスでした。日本で『ハムレット』といえば、上演されない年はないと言えるぐらいの有名古典戯曲です。多くの人が知っている作品をどう上演するのかを観たかったので、出演者が『ハムレット』とどんなきっかけで出合ったのかを言葉で説明されても、興味をそそられませんでした。たとえば「この公演に出ることになって初めて『ハムレット』を読んだ」など。
 『ハムレット』を等身大の自分たちに引き寄せて、自分たちにとっての『ハムレット』を見せたのかもしれませんが、残念ながらシェイクスピアの『ハムレット』の方がずっと面白いと思いました。

 終演後のトークには構成・演出の橋本清さんと出演者全員が登壇し、全員の自己紹介がありました。予想通り、自己紹介だけでトークの時間が終わってしまいました。質疑応答時に橋本さんが答えられたことを、最初からお話しされた方が良かったと思います。出演者全員の自己紹介が行われたのは、「せっかくなので」という理由でした。橋本さんは、ある状態や自分の気持ちに正直に向き合って、その場に居合わせた人々とありのままを共有することを、第一義とされているのではないかと考えました。もしそうならば、観客の気持ち(主に欲望)も想像してみて、それも「ありのままの状態」に一部だけでも組み入れてみてはどうかと思いました。

 ここからネタバレします。
 
 若い俳優が『ハムレット』の登場人物として、現代口語の若者言葉で話します。実生活の言葉づかいでいかにも自然体でいるかのように振舞っていましたが、「そんな時にそんなことは言わないよ!」とつっこまざるを得ないセリフばかりで信憑性がありませんでした。明らかに嘘とわかる演技を、俳優が自然にやってる体(てい)に見せるのが不快でした。魅力的な役者さんがそろっていたので本当に残念。

 客席通路やロフトなど吉祥寺シアター内全体を演技スペースにされていました。客席通路では必ずと言っていいほど出演者が待機していたり、セリフをしゃべっていたりするので、出たくても出られなかったです(最終選考作品なので私には退出の選択肢はありませんでしたが)。

 オリジナル音楽がかっこ良かったです。銀吹雪が舞う瞬間もきれいでした。あそこで終わって良かったと思います。

 私は基本的に、他人に迷惑をかけても自分がやりたいことはやってみればいいと思っています(迷惑をかけた責任は自分に返ってきますけど)。橋本さんはやりたいことを実現する勇気も力もお持ちだと思います。終演後のロビーで観客との対話の時間を設けていることから、賛辞も批判も堂々と受けとめる、誠意ある方だとお見受けしました。今後の挑戦に期待します。


 【観劇途中で席を立つことについて】 ※ブログにのみ掲載。
 野田秀樹さんが、イギリス留学から帰国された頃のインタビューで、
 「日本の観客はつまらなくても最後まで観て拍手までしちゃう。それが日本の演劇が育たない理由(のひとつ)だ。イギリスの観客はつまらなかったら途中で帰るよ。」
 という意味のことをおっしゃっていました(どこかの雑誌で読んだおぼえがあります)。
 それまで私は「どんな作品も最後まで観るのが礼儀だ」と思っていたのですが、野田さんの言葉に衝撃を受け、自分の考えを改め、イギリスの観客のようになろうと決めました。


出演:味戸龍之介、井上みなみ(青年団)、岩佐みちる(演劇活性化団体uni)、片倉裕介、加藤サイセイ(再生倶楽部)、金谷奈緒(青山ねりもの協会)、阪口美由紀(楽塾)、世古シュンスケ、武田実生、立本夏山(重力/Note)、南波早(なんばしすたーず)、堀内萌、間野律子(東京デスロック)、吉川綾美、李そじん、竜史(20歳の国)
構成・演出:橋本清 音楽:涌井智仁 原作:ウィリアム・シェイクスピア『ハムレット』 舞台監督:土居歩 照明:板谷悠希子 音響:池田野歩 衣装:椙山K子 演出助手:森田百合花 宣伝美術:原麻理子 WEB:平舘宏大 制作:スズキヨウヘイ 主催:ブルーノプロデュース 共催:(公財)武蔵野文化事業団 協力:坂あがりスカラシップ
【発売日】2013/02/02(全席自由) 前売り 一般 2500円/高校生以下 1500円 当日券 一般 2800円/高校生以下 1500円
【プレイベントチケット】一般・高校生共通 1000円(前売・当日ともに) 
☆セット券(公演チケット+プレイベントチケット) 3000円
※プレイベントチケット・セット券はメール(info@brunoproduce)または電話(080‐4344‐4968)のみにて受付いたします。
http://brunoproduce.net

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2013年06月15日 15:28 | TrackBack (0)