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REVIEW

2014年01月20日

Ring-Bong『しろたへの春 契りきな』01/18-26サイスタジオコモネAスタジオ

 文学座の女優でもある山谷典子さんの脚本を上演するRing-Bongの新作は、日帝時代のソウルと現代日本を行き来するお芝居でした。上演時間は約1時間55分。

 そういえば昨年の読売演劇大賞作品賞で5作品に選ばれた風琴工房『国語の時間』も、韓国・東亜演劇賞の主要三部門を受賞した『가모메 カルメギ』も、日本の支配下にあった朝鮮を舞台にしていました。

 山谷さんの戯曲『あとにさきだつうたかたの』は3月に加藤健一事務所で上演されます。

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 ≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より
 1942年、ソウル。京城と呼ばれ日本の支配下にあった時代。
 小さな写真館を経営する日本人が反日活動の受刑者たちの写真を撮影することになった。
 それは受刑者に管理番号をつけて写す、まぎれもないただの「記録」。

 「いつかまた本当の写真を」
 父の思いは娘に受け継がれ、やがて舞台は現代の東京へ。

 ファインダーを通して見えてくる二つの時代とは…。
 ≪ここまで≫

 日本人が朝鮮人の言葉も名前も奪って、差別して支配していた史実だけでなく、1945年の日本敗戦後のソウルも描いています。日韓の歴史にとどまらず、国と市井の人々という大きなテーマへと広がりました。

 歌が上手な俳優さんが多くて、ピアノ演奏と歌を披露するシーンに説得力がありました。演技は説明的で残念。私はこういう↓演技が好きなんですよね。

 ここからネタバレします。

 京城と呼ばれたソウルで生まれ育った日本人女性(主人公)と、5歳の時から日本人の家に奉公して大学まで出してもらったため、朝鮮語が話せない朝鮮人男性が登場し、お互いに慕っています。主人公の父親は写真技師で、使用人の朝鮮人女性と相思相愛でした(主人公はこの2人の間に生まれたと後でわかります)。でも2つの恋は日本敗戦を機に引き裂かれてしまいます。
 人は時代に翻弄されるものだけれど、その実、個人レベルの人間同士の交流には、国や国籍なんて関係ないということが、力強く示されました。「日本のために、国家のために」と朗々と謳い上げる政治家は信用するに足りないことがよくわかります。
 
 日本に帰国しようとする写真技師に、朝鮮人が護身用の銃を渡すのですが、彼は受け取らずに返します。「銃を持ったら自分が何をしでかすかわからない」といった意味のセリフがありました。身の程を知る、分相応に生きるというフレーズはマイナスの意味に捉えられることが多い気もしますが、私は黒田育世さんのこの記事を思い出し、「踏みとどまる」勇気について考えます。

出演:山口雅義、高野絹也、辻輝猛、長瀬良嗣、田中宏樹、松山尚子、村松えり、小野文子、松垣陽子、山谷典子
脚本:山谷典子 演出:小笠原響 照明:小沢淳 音響:山崎哲也  衣裳:友好まり子 美術:乗峯雅寛 舞台監督:坂野早織 制作:華のん企画 
【発売日】2013/11/11(前売り・当日とも)一般 3,500円 学生 2,500円
http://ameblo.jp/ringbong/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2014年01月20日 19:10 | TrackBack (0)