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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2014年03月25日

On7『痒み』03/25-30シアター711

 On7(オンナナ)は新劇の老舗劇団に所属する若い女優さんたちが結成した、女優ばかりの劇団です。今回が旗揚げ公演(第0回公演は実施済み)で、『痒み』は作・演出に大阪在住の劇作家・演出家のサリngROCKさんを迎えた新作です。上演時間は約1時間30分弱。全席自由ですので、劇場にはお早めにどうぞ。

 「CoRich舞台芸術まつり!2014春」審査員として拝見しました(⇒92本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。下記にも転載します。 

 ⇒zakzak「新劇の女優が演劇界に新風 アラサー女優7人「On7(オンナナ)」結成
 ⇒CoRich舞台芸術!『痒み』※こりっちでカンタン予約!

 ≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より
 郊外にある、超普通大学の写真サークルに所属する女子7人。
 3月。彼女たちは卒業記念展覧会の準備に力を注いでいた。
 いよいよ開催3日後に迫ったある日、メンバーの1人が姿を消した。
 残された6人は普通に1人を探し、普通に探すのを諦め、普通に卒業し、
 普通にそれぞれの道を歩んだ。
 卒業してから、6人は普通の食事会を開いた。
 それぞれの近況を報告したり、笑ったり、陰口を言ったり、噂話をしたりする、
 普通の食事会。
 それからも6人は、年に一度、普通の食事会を開いた。

 そして、10年後。
 10回目の普通の食事会に、いなくなったはずの7人目が現れた。
 彼女の出現で、6人は普通じゃない環境に放り出される事になる。
 見渡す限りの砂漠、生い茂るジャングル、森の奥の住人たち、そして真っ赤な湖と崖。

 そこでも、彼女たちの人生は、続いていく。
 ≪あらすじ≫

 ■叫んでも暴れても可愛い!若手新劇女優の底力

 白い布や石膏のような素材でできた、砂漠、宇宙、銀世界などを想像させる白い抽象舞台。床の中央に空いた丸くて大きい黒い穴が、かなりのインパクトです。白い空間なので照明が映えました。舞台全体を照らす映像演出も時々ありましたが、これ見よがしでないのが良かったです。

 大学の同窓生たちがある事故(?)をきっかけに異空間に転送されてしまう荒唐無稽な設定で、現実を軽々と飛躍する短いエピソードが連なっていきます。登場人物のキャラクターがそれぞれに濃くて、女優さんたちは戯画的な役作りをされており、「あんなに可愛いコがこんなことまで!?」という、意外性のある体を張った演技もされます。

 私の個人的感覚ですが、こういう作品は雑な印象を与えたり、過剰に下品になって見苦しくなる傾向があると思うんです。でもこの作品では、そういうことは全くありませんでした。とにかく若い女優さんが可愛い!崩れても品がある!そしてセリフが明晰!歴史ある劇団に所属してある程度の年数を経た方々は一味違うなぁと、素直に感心してしまいました。

 このお芝居に登場する32歳前後の女性たちは、過酷かつ悲惨な状況に置かれているはずなのですが、場の空気は基本的に明るくコミカル。たまに挿入される心の闇の部分の描写も効果的で、一本調子にならない演出にとても好感を持ちました。ミソジ女性の本音がよどみなく垂れ流されるセリフは、皮肉が利いていて痛快です。でも深刻にはなりすぎず、女性らしい可愛げもありました。選曲も筋が通っていていいムードだったと思います。

 豪華な当日パンフレットが無料で配布されました。色んな企業の広告が載っていて、ちょっと驚きました。あれだけ集めた営業努力も凄いと思います。広告を入れることをなるべく避ける団体もありますよね。いわゆる小劇場劇団とは文化が違うのだろうなと思いました。

 ここからネタバレします。

 10年ぶりに再会した大学時代の同窓生アイとともに南国旅行に出かけた7人は、飛行機事故に遭って無人島に墜落。なぜか生き残ってしまった女性たちは、発見したシェルターで延命したり、原住民と家庭を持ったり、砂漠に順応して進化を遂げたりして、それぞれの道を進み、やがて自分が最も望むものとは、本当にやりたいことは何なのかと突き詰めていくことになります。

 ごく平凡な日常と、突然訪れた事故。生死の間にある時空が南国での日々だったのでしょうか。無人島で3日、3か月、3年と時が経っていき、とうとう老女になって全員集合する時が訪れました。やはり老いは外せないテーマですよね。青春の日々もひどいケンカも何もかも、良い思い出か笑い話になっていきます。それぞれに濃いキャラクターを演じてきた7人が皆老いて、ひたすら笑顔を浮かべるのを眺めながら、私もいつかああなるのだろう、ああなれればいいなと思いました。ただ、最後はちょっとあっけなかったですね。あっけないという後味は悪くないと思うのですが、ストンと落ちるような何かが欲しかったです。

 感情面で振り切れる瞬間があったり、たとえば人間ではないものを演じたり、7人とも自分を晒して貪欲にチャレンジされているのが素敵でした。それぞれに魅力的だったのですが特に印象に残ったのは、潔癖症だったのに虫を入れる料理を作るようになり、なんと毛むくじゃらの動物を出産したモモ役の小暮智美さん。冒頭の場面の鼻につくセレブ気取りの道化的な演技と、南国の先住民族風の衣裳に着替えてからの荒々しい演技とのギャップが良かったです。野性的な肉体美にも惹かれました。


第一回公演
出演:小暮智美(青年座):潔癖症だったのに獣の子を産む、尾身美詞(青年座):写真部で一番のおバカさん・お腹に虫が卵を産む、安藤瞳(青年座):小学4年の子供がいる真面目な母親・ブログで発散、渋谷はるか(文学座):皮のライダージャケットのカメラマン、吉田久美(演劇集団円):原住民と結婚したが流産・昔の恋人トモ君が忘れられない、保亜美(俳優座):タイで夫と学校を建設・一番才能がある、宮山知衣(テアトル・エコー放送映画部):原住民との家庭に満足して日本に帰りたくない
脚本・演出:サリngROCK(突劇金魚) 舞台監督:今村智宏(青年座) 舞台美術:根来美咲(青年座) 照明:鷲崎淳一郎(ライティングユニオン) 音響:児島塁(Quantum Leap*) 宣伝写真:美島菊名 宣伝デザイン:武内雄介 宣伝衣装:高木渚 宣伝ヘアスタイリング:松尾由紀子(brisa) 宣伝メイク:KOTOMI WEB:木下奈緒、西嶋裕之 サポート:安藤優 制作:高橋ゆうき 宣伝撮影協力:等々力スタジオ 企画・制作:On7
【発売日】2014/02/01 前売・当日3500円 初日割引 3000円
http://onnana.com/arc_1.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2014年03月25日 23:49 | TrackBack (0)