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2015年09月03日

【写真レポート】新国立劇場演劇研修所修了生企画「小川絵梨子ワークショップ」06/22-24東高円寺K's Studio

 ⇒新サイトに同内容を転載しています。

 新国立劇場演劇研修所の修了生が演出家・翻訳家の小川絵梨子さんを招いて3日間のワークショップを実施しました。私は企画段階からかかわっておりまして、ワークショップにも俳優の1人として全日参加しました。小川さんのワークショップに参加するのは2度目です(⇒小川絵梨子シーンスタディ[2014年])。

 今年3月に修了した8期生を含めると、修了生の人数は約100人にのぼります。今回の参加人数は約30人でした。「俳優が演出家から指導を受ける」というものではなく、小川さんも含め、立場は全員平等というスタイルです。

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 1日目は昼から夜まで話し合い、2日目、3日目はゲームをして終了…なんと、台本もあってチーム分けも済んでいたのに、演技の稽古はほぼゼロ!驚きました…「せっかく小川さんがいるのに、なぜ演技の稽古をしないの?!」と。でも小川さんとのワークも、この企画自体も初めてのことなので、まずは皆がともに自由になることを目指したようです。結果的には、次へとつながる豊かな時間になりました。

 【1日目】
 自己紹介はせず、車座になって演劇界の現状についてざっくばらんに、率直に、話し合う5~6時間。今、何を求めているのか、この機会に何をするのか等を共有しました。1日目は話し合いのみで終了。濃い内容でした。

 【2日目】
 稽古場は12時集合、21時終了という予定でしたが、小川さんのご提案で「お昼頃、好きな時に来て、好きな時に帰る」ことに。最初から居たのは24人。後から少しずつ増えて29人になりました。ゆるくて自由で、いい感じにリラックスした空気だったように思います。
 まず始めに小川さんが持参した3つの戯曲の紹介があり、コンビニに行って台本のコピーをしてくる人を決めるために、ゲームを開始。負けた人2名がコピー係です。※ゲームの内容については去年のレポートに一部解説あり。

 ・チーム対抗ジェスチャーゲーム(お題:漫画、有名戯曲)
 ・ウィンクキラー
 ・ドーン!じゃんけんぽん!(2チーム対抗で相手側の壁に手を着いたら勝ち)
 ・演劇的な絵をつくる勝負(2チーム対抗で5段階評価。小道具を使う・小道具をシャッフル)
 ・主犯共犯(帝国VSジェダイ)
 ・チームに分かれて戯曲を読む(数回読み合せる間に小川さんのアドバイスあり)

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 小川:まずやってみることが大切。「わかったら、できる」わけじゃない。「やったから、わかる」。わかることばかり求めていたら、優等生ぶったまま終わってしまう。稽古場では、ただ、やること。

 小川:相手を感じること。相手のエネルギーを共有し、感じるようにする。自分がどういう状態なのかを感じるのは止める。キュー(きっかけ)は自分から来てるのではない。自分を感じずに、相手を感じるようにする。

 小川:自分のことは放っておいて相手を感じること。相手とやることは、本当に難しい。ちゃんと感じるところが大切。でも、相手をじーっと、不必要なほどに見つめると、目玉が逆に(自分の意識の方に)向いてしまうから要注意。相手を深く見つめるのではなく、ただ、見ること。

 小川:会話はキャッチボールではなく、ラリー。大切なのはラリー。共通の話題はスピードが速い。自分の心の中は一切見ないで、意識を外に持って行く。


 【3日目】
 2日目に続き、お昼頃に集合。稽古場の都合で夕方解散。
 ・ウィンクキラー
 ・人狼ゲーム(「村に人の皮をかぶった狼がやってきた」という設定で2チーム対抗で行う)
  ※「人狼」を繰り返し、シーンスタディの時間がなくなって、終了。俳優って「人狼」好き過ぎでしょっ!!(笑)

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【しのぶの感想】
 小川さんのワークショップに参加するのは2度目です。足手まといにならないよう、1週間前から軽いジョギングなどをして、にわかに体力づくりをして臨みましたが、2日目から筋肉痛炸裂でした(苦笑)。
 ゲームは点数を競うこともあり、想像以上に白熱!「まさか、そこまでやるか!?」と何度も驚かされたり、呆れたり(笑)。性格がモロバレしますね。「主犯共犯」と「人狼」は嘘をつきまくる心理戦、頭脳戦なので、人間を信じられなくなります…(笑)。「嘘をついているかどうかは、その人の目を見ればわかる」といった言い回しがありますが、俳優には通用しないことがわかりました。皆…嘘がうますぎるよ!
 集団創作はまず会って話すこと、そして互いに全力で交流することが大切です。演劇の場合は、戯曲を手にしたら、座組み全体で配役や解釈などに取り組みたいものですが、その前にしなければならないことが山盛り!演劇は虚構ですから現実とは違います。まず現実のタガを外し、無限の想像力の世界に飛び込んで、皆でその前提を作って共有しなければ、豊かな創造はできません。読み合わせが始まると、相手との深いところでのコミュニケーションも必要になります。俳優は(もちろん演出家も)、つくづく人間力の要る職業だと思いました。
 新国立劇場演劇研修所の修了生による企画は次々に産声を上げているようです。小川絵梨子ワークショップも次回がありそうですので、楽しみに待ちたいと思います。

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【参加者の感想】

・自由に存在していられるオアシスのような空間でした。この場を求めてまた集まりたいです。

・研修所にいる頃から研修生、修了生だからといって似てるわけではないと思っていたけど、今回話し合ってみて、共通するところはやっぱりあるんだと思った。

・修了生たちが、50年後、100年後という、すごく先のことを考えてるんだと知って、感動しました。

・このワークショップを通して、他の期の無邪気な表情が沢山観れたことが貴重でした。ゲームを沢山することにより、皆の素に近い飾らない姿が知れる!それがまた魅力的で、自分も子供の様に素直になれる。短い時間で距離が縮まるなって思いました。研修所時代のただ毎日がむしゃらだった頃の自分を思い出す感覚もありました。
 修了して何年か経つと、私の場合、同じ研修所を出た修了生に対しては、ライバルというより、同志として見始めました。皆に何とかお芝居を続けて欲しいと思うし、やはり一緒にお芝居がしたい!!と強く思いました。私は自分の創作作品や自主企画にもっと修了生を巻き込んでいきたいと、このワークショップを通して思いました。小川さんの話も良かった。彼女の正直さがとても良かった。

・今回WSに参加したのは小川さんがなさっていた9期生の授業にほんのすこしだけ参加したことがあり、小川さんの佇まいを直感で好きって思ったことが一番の理由です。是非またお会いしたいと思っていました。

・3日間経って思うことは、修了生に対して自身が狭く考えていたということです。想像よりも色んなカラーの方がいるなと思いました。期待以上に沢山の刺激をもらいました。数年後はあんなふうになりたい、あっちの方向は違うかな、私も後輩にはあんなふうに接したい、など、自身の方向が前よりもほんの少し具体的になったように思います。今回のWSで同期以外の方と出会えたことは本当にいい栄養になりました。
 「また会いたい、また集まって何かしたい」。ものをつくる私達がそう思っていることは、実は一番重要だと思います。だけど案外難しいのも体験してます。。。悲しいことに、いつの間にか「今日も稽古か…」と半ば義務化されて稽古場に行くことになってしまったり……しかし公演にもって行くまでのプロセスが、公演の出来を左右させると思います。その点でいいスタートがきれたWSだったと思いました。

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・「人狼」では最後にはじめて役職についたので、グループでの立ち位置がはっきりしていて、大変その場に居やすかったです。目的もはっきりしていてエネルギーも高かった。楽しかったです。振り返るとあの局面ではああいう発言をしたかったなど、とめどなく溢れます。今後は役職につかなくとも、自分はどう居たいか、輪郭をはっきりさせたいです。次の機会を楽しみにしています。

・短い時間とはいえ、テキストをやってみたときの手応えがあったので、シーンを立ち上げるということにもっとチャレンジしたかった。演技を通しても他の人たちがどんな俳優なのか見れると思う。それでも、ゲームを通じて交流できたのはよかった。よく知ってる同期でもその人の面白さを再発見することもあった。小川さんを中心にして、皆どういう問題意識があるか話し合って共有できたのもそれぞれのプラスになったはず。僕は、多くはないけれど「この人は信頼できる」という演劇人を見つけて勝手に仲間と思ってきた。そんな存在が未来へのモチベーションにもなっている。今回の企画のなかでもそんな仲間と作品を作りたい。

・ディスカッションと遊んだだけだったけども、とっても楽しかったです!気持ちのいい時間をいただきました。みんな同じ悩みがあるんだなあ、と思って、わたしも救われた気持ちです。のんびりみんなで種まきができたらいいですねえ。気楽にまた次をやりましょう~!本当にありがとう!


【参加者のツイート(見つけたものをまとめました)】


新国立劇場演劇研修所修了生企画「小川絵梨子ワークショップ」
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Posted by shinobu at 2015年09月03日 09:22 | TrackBack (0)