2001年07月28日
シアター21『おやすみ、こどもたち』パルコ劇場07/27-08/05
それぞれの戦争を経験した三姉妹と、最後に疎開地から帰ってきた末っ子の弟。そして彼らの恋人達。戦後すぐのロンドンを舞台とした、ある家族のお話でした。
ジャズ・ピアニストの小曽根真さんが音楽担当ということで、まずは素晴らしいピアノ演奏で幕が開きました。しかもそれが彼が舞台上に居て実際に弾いてくれているように感じたからまた格別だったんです(詳細はネタバレあり感想をお読みください)。
でも、そのピアノへのスポットライトが薄暗くなり、舞台上がじわじわと明るくなってきて役者さんたちの動く姿が見え始めると・・・・「・・・え?」「あれ?」「う・・・ぅーーー・・・・・む?」迫って来ないんです。ピアノばかりが耳に心に残っていて、お話も登場人物も全くこっちへ来てくれない。結局、はじめのトキメキだけが残って、後は気まずい時間が過ぎていくだけになってしまいました。原因は何だったんでしょうか・・・。
イギリスの子供達の戦争体験。子供達の心に残った致命的なトラウマ。その過去の傷を持ったまま生きていくその子供達の現在、そして未来。戦争、家族、恋愛などの人類に共通のテーマを扱っているとはいえ、日本人とイギリス人では文化が全く違うわけですよね。言うまでもない当然のことなのですが。しっかりとその意味を理解し、租借するのを怠ったのではないかしら・・・。えらそうですみません。このお芝居の伝えんとするところが一体何なのかをわからないまま、形だけ出来てしまった・・・という印象です。
特に性についての認識や常識って全然違うと思うんですよね。今回はその点について、演出も演技も統一されていなかったように思いました。本当に残念です。
弟ピーター役(主役)の内田滋啓(うちだ・しげひろ)さん、あのしゃべり方って演技なのでしょうか?カツゼツが悪い、とかのレベルを超える聞きづらさでした。何かあったのかしら?
妊婦アン役の神野三鈴(かんの・みすず)さん、美しかった。水色のローブが本当によくお似合いで。でもちょっと演技が一辺倒だったような・・・・。いえ、これは役者さんのせいじゃないんですよね。演出の意図だったのでしょう。
RUP:http://www.rup.co.jp/04_backnumber/old_log/oyasumi/index.html
(2005/07/14にURLを更新)
《ネタバレあり感想》
さて、オープニングのピアノ演奏なんですが、実はアップライト・ピアノの自動演奏だったんです。小曽根さんの演奏をそのままデータにして、コンピュータ制御されたピアノにそのデータを入れると勝手に演奏される仕組みなんじゃないかな。黒けんと白けんが鍵盤の音とともに勝手に降りるのが見えて・・・まるで透明人間になった小曽根さんが目の前で実際にピアノを弾いているみたい!そりゃー嬉しかったです。私は小曽根さん目当てでもあったので♪
でもね・・・『有名なピアニストの小曽根真さん』だったから、付け足した演出だったと思うんです。だって、お芝居自体にピアノはあまり関係なかったんですから。生ピアノの自動演奏および無人のピアノへのスポットライト、なんてね。もしかするとお芝居全体においては余計な演出だったと言えるかもしれないと思いました。
出演=内田滋啓 神野三鈴 谷川清美 田中由美子 目黒未奈 簗正昭 有川博
作:リチャード・ネルソン 翻訳:小田島恒志 演出:岸田良二 音楽:小曽根真 美術:島次郎 照明:森脇清治 音響:高橋巖 衣裳:前田文子 ヘアメイク:林裕子 宣伝美術:坂本拓也 演出補:山下悟 舞台監督:加藤高 制作:大金ふみよ プロデューサー:中谷友和 芸術監督:山崎正和 企画: シアター21制作実行委員会 後援: フジテレビジョン(東京)関西テレビ放送(大阪) 提携: 近鉄小劇場(大阪)
制作: R・U・P、博報堂 製作: ネオテック・エンタープライズ
2001年07月20日
Bunkamura『音楽劇 三文オペラ』シアターコクーン07/09-27
『三文オペラ』という作品、私は初見です。名作でした・・・・。
『三文オペラ』はベルトルト・ブレヒト作、クルト・ワイル作曲の音楽劇で1928年ベルリン初演です。そういえば、新国立劇場演劇『夢の裂け目』(井上ひさし・作)はこの『三文オペラ』の音楽にオリジナルの日本語の歌詞をつけていました。
主要な役は、加賀丈史さん、村井国夫さん、瑳川(さがわ)哲朗さん、大浦みずきさん、重森あゆみさん、森川美穂さん、キム・ヨンジャさんという豪華キャスト。その他、脇役もかなり有名な方がいらっしゃいました。私の大好きな大森博さんとか。さすが蜷川幸雄さんの作品です。キャスティングなんて自由自在ですね。
相変わらずの蜷川さん独特の演出もやっぱり顕在で、ちょっと首を傾げたくなる部分もありましたが、装置と衣装の豪華さは息を呑むほどでした。あの色彩感覚は素晴らしい。それにしても豪華でしたねー・・・・全てが。
蜷川さんのお芝居が始まると、いつも思わせられていたんです、「帰りたい・・・」と。でもこのお芝居は『三文オペラ』。初めてだし勉強のためには最後まで見なきゃ!と覚悟を決めました。すると、1時間半ぐらい経ったあたりからだんだんとその味というか、色がこなれてきて、面白くなってきました。休憩15分を含む3時間強のお芝居なので、中ほどから盛り上がってもまあ及第点か、と。
ラストがとにかく良かった。『三文オペラ』というお芝居のラストが良い、というのはもちろんなのですが、演出がねー・・・・私が苦手だったはずの部分が、くるっとひっくり返って、効果的で粋な演出に変わっていました。やられた・・・!
元・歌のおねえさんの茂森あゆみさん、歌うまい!声きれい!
キム・ヨンジャさんの魂のこもった歌に感動。
ここからネタバレあり。
『三文オペラ』のラストは、主人公の大悪党メッキーが絞首刑になる直前、彼の一番の敵である義理の父親が客席に向かって「最後はハッピーエンドにしなきゃ!」という意味のセリフを言うやいなや突然、女王から恩赦が出て助かり、1000万ポンドの年金と貴族の位まで得てしまう、という大どんでん返し。すると敵も味方もみんな「良かった良かった」と大はしゃぎのお祭り騒ぎとなり、歌って踊って大団円・・・というめちゃくちゃな終わり方です。今までの3時間ものストーリーをひっくり返しちゃうの。
それが爽快なんです。痛快なんです。人間ってそういう奇跡を求めているんだと思うんです。嘘でもそんな奇跡を目撃したら、何もかもがパーッと明るくなって全てを信じられるようになるような・・・。
『夢の裂け目』のラストシーンもこれに似ていた気がしました。つかこうへい作『蒲田行進曲』(演劇)もそうですよね。テリー・ギリアム監督の映画『フィッシャー・キング』も、ペドロ・アルモドヴァル監督の映画『神経衰弱ギリギリの女達』も、アキ・カウリスマキ監督の映画『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』も・・・。あ、スタンリー・キューブリック監督の映画『時計仕掛けのオレンジ』も、言わばそうじゃないですか?違ってたらごめんなさい。でも、私はそういうのが好きなんですねー。
文化村HP : http://www.bunkamura.co.jp/
2001年07月18日
グローブ座カンパニー『リチャード二世』東京グローブ座(2001年7月)
グローブ座カンパニーはシェイクスピアの作品を独自に構成・演出して上演しています。
東京グローブ座が座付きシェイクスピア劇団を抱えているんですね。・・・素晴らしいです。劇場たるものかくあるべき!と思います。
そして面白い!毎回面白いです!!
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの『リチャード二世』を観ましたが、全然違いました。こっちの方がずーっと楽しいし、シェイクスピアの伝えんとするところがよくわかった気がしました。シェイクスピアだからって脚本通りにする義務はないんですよね。「日本人によるシェイクスピア」として世界に誇ることができると思います。
「子供のためのシェイクスピア」と銘打っていることからもわかりますが、本当に物語をわかりやすく、面白く変えています。子供が退屈しないようにするって難しいですよね。客席には親子連れがいっぱい。だいたい小学校高学年ぐらいかな。終演後、皆すごく満足そうに客席を後にしていました。
山崎清介さんが声色を使ってシェイクスピアの顔をした人形を操るのですが、その人形が何役も演じます。たいしたことのない脇役をまとめて演じていたりするのが効果的です。また、毎回同じスタイルの演出を残していて、それもこのシリーズの特徴です。黒いマントを被って手拍子で息を合わせて・・・等。
今回よく繰り返されたのはこの台詞↓。
「真実の悪い知らせよりたちが悪いのは、嘘の良い知らせ」
以下、パンフレットより部分抜粋します。
『構成:田中浩司、演出:山崎清介の二人は「子供は本物がわかる」というコンセプトのもと、《子供だまし》や《子供に媚びる》ことはせず、演技も大人の芝居を作るときとまったく変わりません。また、シェイクスピアの長い台詞を整理し、作品のメッセージやテーマを絞ることに十分な時間をかけて作品を作り上げています。』
毎年1本新作ペースのようですね。私は去年の再演2作を観ました。2002年は「ヴェニスの商人」だそうです。
東京グローブ座HP : http://www.tglobe.net/
子供のためのシェイクスピアカンパニー:http://homepage1.nifty.com/j-ishikawa/c-ro.html
(子供のための・・・のURLは2004年に付け加えました)
2001年07月14日
サードステージ・Showcase『ペーパーマリッジ』紀伊国屋ホール07/12-18
Showcaseシリーズ3作目ということで、中谷まゆみさんの脚本を楽しみに劇場へと向かいました。「パ・ド・ドゥ」も「ビューティフル・サンデイ」もとても良かったので。
パン屋を経営する夫婦とその妻の母親と妹の4人の登場人物が繰り広げるシチュエーション・コメディ。前半まではなんだかつまんないなーと思っていたのですが、後半ガガンと盛り上がり、最後は白熱しました。
中谷さんの脚本って何でもない舞台設定から始まって、だんだんと登場人物たちの過去や秘密について言及していき、最後にはそれがぶつかり合う・・・という感じ。観客はすっかりハメられちゃいますね。残念ながら悔しながら嬉しながら。トピックはかなり過激でした。結婚、セックス、離婚、養子、少子化、出会いサイト・・・等。
木野花(きの・はな)さん、良かったです。最初はあまりにテンションの高さに引きかけましたがだんだん慣れてきて、後になっていくほど説得力のある言葉と表情、動きに呑まれてしまいました。
木野花さんの娘の2人姉妹のうちの姉の方を演じられた長野里美さん。彼女が主役だったようですが親に対してエラそうに振る舞い、説教する姿にかなり不快感を感じました。つまり説得力が無かったと思います。
おっぱい女の旗島伸子さん、妹役、ちゃーんと可愛いかった。でもちょっとありきたりの演技が多かったかも。
姉の夫役の浅野和之さん、しっかり○○に見えました!ものすごく自然に!それだけで満足です。
色々文句をいいましたが、ちゃーんと泣かされてしまいましたし、自分の人生についても考えちゃった。ま、私は大体「親」の味方をしちゃうんですけどね(笑)。
作:中谷まゆみ 演出:板垣恭一
サードステージHP : http://www.thirdstage.com