2001年07月28日
ク・ナウカ『天守物語』07/26-31都立潮風公園・噴水広場
ク・ナウカの一番の特徴は、「語る」俳優(speaker)と「動く」俳優(mover)が分かれていて、主な登場人物はすべて、二人一役で演じられる点です(公式サイトより一部抜粋)。
「天守物語」は泉鏡花の原作をク・ナウカ主宰の宮城聰(みやぎ・さとし)さんが台本・演出されたもので、日本では何度も再演されています。初演は1996年@利賀村野外劇場。これまでにインド、中国、パキスタン、エジプトでの海外公演も行われています。
今回の場所はチラシの文言を引用いたしますと
『お台場、鏡花、ク・ナウカ座。妖しの噴水(いずみ)、背には海。』
ゆりかもめ線の「船の科学館」駅から「水と緑のプロムナード」をまっすぐ進むと徒歩5分。そこは潮風がそよぐ海辺の噴水広場でした。あーーー・・・・・・・・ここに、ク・ナウカが居るんだーーー・・・・。あー・・・あっ宮城さんだっっ・・・・髪切ったんだーーっ・・・痩せてるなー・・・。
私の中で時間が完全に止まっていました。最近すっかり忘れてしまっていた豊かな時間を夜の海辺で味わいました。
潮風に大きくなびく、こいのぼりを使ったカラフルな衣装。時折その鮮やかな色使いに秘められた性欲と殺意まで感じるほど。座ったまま動かないspeaker(スピーカー)の踊るように響く声。人形のように淡々と無表情で、しかしその動きに情熱を込めて舞うmover(ムーバー)。パーカッションの生演奏にあわせて私の心拍数も上がります。そのストイックな組み合わせに、いかんともし難い、何とも言い表し難い衝動を感じるんですよね。グっとしびれて息も詰まりそうになるような・・・。
「お名を知りたい・・・。」という天守夫人富姫のセリフ。そうなんですよね。「名前」なんですよね。恋しい愛しいその人の名前を知りたい。実はその名前こそその人の全て。その愛の全てなんですね。あらためて「名前」というものの意味を体で感じることが出来ました。
・・・んんんもぉぉぉぉおおっ、デートにぴったり!語らうにぴったり!これぞ打ってつけです!!確かに潮風にずーっとあたるのはつらいですが、上演時間がほぼ1時間ですから大丈夫!学校帰りにでも会社帰りにでも、どうぞどうぞ足をお運びください!
特定非営利活動法人ク・ナウカ シアターカンパニー:http://www.kunauka.or.jp/
シアター21『おやすみ、こどもたち』パルコ劇場07/27-08/05
それぞれの戦争を経験した三姉妹と、最後に疎開地から帰ってきた末っ子の弟。そして彼らの恋人達。戦後すぐのロンドンを舞台とした、ある家族のお話でした。
ジャズ・ピアニストの小曽根真さんが音楽担当ということで、まずは素晴らしいピアノ演奏で幕が開きました。しかもそれが彼が舞台上に居て実際に弾いてくれているように感じたからまた格別だったんです(詳細はネタバレあり感想をお読みください)。
でも、そのピアノへのスポットライトが薄暗くなり、舞台上がじわじわと明るくなってきて役者さんたちの動く姿が見え始めると・・・・「・・・え?」「あれ?」「う・・・ぅーーー・・・・・む?」迫って来ないんです。ピアノばかりが耳に心に残っていて、お話も登場人物も全くこっちへ来てくれない。結局、はじめのトキメキだけが残って、後は気まずい時間が過ぎていくだけになってしまいました。原因は何だったんでしょうか・・・。
イギリスの子供達の戦争体験。子供達の心に残った致命的なトラウマ。その過去の傷を持ったまま生きていくその子供達の現在、そして未来。戦争、家族、恋愛などの人類に共通のテーマを扱っているとはいえ、日本人とイギリス人では文化が全く違うわけですよね。言うまでもない当然のことなのですが。しっかりとその意味を理解し、租借するのを怠ったのではないかしら・・・。えらそうですみません。このお芝居の伝えんとするところが一体何なのかをわからないまま、形だけ出来てしまった・・・という印象です。
特に性についての認識や常識って全然違うと思うんですよね。今回はその点について、演出も演技も統一されていなかったように思いました。本当に残念です。
弟ピーター役(主役)の内田滋啓(うちだ・しげひろ)さん、あのしゃべり方って演技なのでしょうか?カツゼツが悪い、とかのレベルを超える聞きづらさでした。何かあったのかしら?
妊婦アン役の神野三鈴(かんの・みすず)さん、美しかった。水色のローブが本当によくお似合いで。でもちょっと演技が一辺倒だったような・・・・。いえ、これは役者さんのせいじゃないんですよね。演出の意図だったのでしょう。
RUP:http://www.rup.co.jp/04_backnumber/old_log/oyasumi/index.html
(2005/07/14にURLを更新)
《ネタバレあり感想》
さて、オープニングのピアノ演奏なんですが、実はアップライト・ピアノの自動演奏だったんです。小曽根さんの演奏をそのままデータにして、コンピュータ制御されたピアノにそのデータを入れると勝手に演奏される仕組みなんじゃないかな。黒けんと白けんが鍵盤の音とともに勝手に降りるのが見えて・・・まるで透明人間になった小曽根さんが目の前で実際にピアノを弾いているみたい!そりゃー嬉しかったです。私は小曽根さん目当てでもあったので♪
でもね・・・『有名なピアニストの小曽根真さん』だったから、付け足した演出だったと思うんです。だって、お芝居自体にピアノはあまり関係なかったんですから。生ピアノの自動演奏および無人のピアノへのスポットライト、なんてね。もしかするとお芝居全体においては余計な演出だったと言えるかもしれないと思いました。
出演=内田滋啓 神野三鈴 谷川清美 田中由美子 目黒未奈 簗正昭 有川博
作:リチャード・ネルソン 翻訳:小田島恒志 演出:岸田良二 音楽:小曽根真 美術:島次郎 照明:森脇清治 音響:高橋巖 衣裳:前田文子 ヘアメイク:林裕子 宣伝美術:坂本拓也 演出補:山下悟 舞台監督:加藤高 制作:大金ふみよ プロデューサー:中谷友和 芸術監督:山崎正和 企画: シアター21制作実行委員会 後援: フジテレビジョン(東京)関西テレビ放送(大阪) 提携: 近鉄小劇場(大阪)
制作: R・U・P、博報堂 製作: ネオテック・エンタープライズ