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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年02月20日

シベリア少女鉄道『遥か遠く同じ空の下で君に贈る声援』01/24-02/02王子小劇場

 シベリア少女鉄道はインターネット演劇界では非常に人気の劇団です。とにかく脚本のアイデアがすごいです。非常に計算高くて緻密。そしてそれをやりきる演出もすごい。公演が終わっているのでネタばれしちゃいます。

 今回は「競馬」でした。

 ある、ちょっぴりさびれた喫茶店が舞台。へなちょこ・ほんわかな装置が適度にフレンドリーな雰囲気をかもし出します。登場人物はマスター、ウェイトレス、常連客のおじさん、別れそうな(?)カップルとその友人、その他もろもろ。

 登場人物の一人一人がおのおの決めゼリフを持っていて、何かあるごとにそのセリフを言います。「ぜんぜんわかんない」「いらっしゃいませ」「まじかよ、おい」みたいな簡単な言葉を振付つきで連呼。客は何のことだかよくわかんないまま物語は進みます。

 「彼氏が実は浮気をしていて、その浮気相手がこの喫茶店のウェイトレス!?」というどたばたが佳境になってくる頃に「あ、虹が出てるわ」と、突然、舞台奥の上部に虹のパネルが出現。赤、だいだい、黄、緑・・・と縦に並ぶストライプの右端には馬のぬいぐるみが並んで張り付いています。そう・・・それは競馬場・・・・!

 登場人物それぞれが1匹の馬。決めゼリフが馬の名前。「ナンテコトデショウ」とか。(言葉は確かではないです)そしてその名前を呼ばれる度にゴールに向かって1コマずつ進むというルールだったんです!「ぜんぜんわかんない!」ぬいぐるみが1コマ進む。「ぜんぜん・・・わかんない?」さらに1コマ進む、というように。
 名前の他にも競馬の実況アナウンスなどの競馬関連のワードを絶妙にとりまぜて、どたばたラブコメディーと競馬のレースを完全同時進行させます。あぁー・・・・ヤラれた。競馬用語の独特さと日本語の柔軟さを堪能。言葉についての知的好奇心が満腹。

 当日パンフが6種類あって勝ち馬投票券になっているとか、細かい技がまた憎い!『遥か遠く同じ空の下で君に贈る声援』というタイトルもわかってから読むと味わい深いですよね。実はチラシのキャッチコピーにもちゃんとネタが仕込まれていて見れば見るほど楽しめます。綿密なんですよね。

 あと、シベリア少女鉄道について声を大にして言いたい・・・女優さんが可愛いぞ!!
 渋谷景子さん。「ウレシインザスカイ!」の振付をまっすぐにやり続ける姿には女の私でも胸きゅんです。
 秋澤弥里さん。ウェイトレス姿で甘えられるとどんな男性でも参っちゃいますよ。
 土屋亮一さん。作・演出・出演。「いらっしゃいませ」のタイミングが絶妙。彼独特の憎めないふてぶてしさは貴重だと思います。

 今は小劇場で小劇場的に観るしかない(快適な客席ではない)のですが、やっぱり観たいと思わせる劇団ですね。

シベリア少女鉄道HP : http://www.siberia.jp/

Posted by shinobu at 2003年02月20日 22:19 | TrackBack (0)