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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年03月05日

ホリプロ『奇跡の人』03/02-04/05シアターコクーン

 『奇跡の人』は乳児期の大病が原因で盲・聾・唖の三重苦となった女性ヘレン・ケラーとその家庭教師アニー・サリヴァンという実在の人物を題材にしたウィリアム・ギブソンの傑作戯曲です。みなさんご存知ですよね。
 去年は大竹しのぶさんがサリヴァン先生、ヘレンを官野美穂さんが演じられて大好評でした。私は残念ながら拝見していませんが。今回キャストはほとんど一新、ヘレンを鈴木杏さんが演じました。

 はらほろ~・・・泣かされました~・・・・会場中、涙ぼろぼろですよ。なんて素晴らしい戯曲なんでしょう。原作本を買ってしまいました。言葉こそ人間が人間である理由なんです。そう、それだけ。なんて潔くて雄弁なんでしょう。

 非常に観客の年齢層が広いです。お年寄りから子供まで楽しめます。すごいことだと思います。鈴木裕美さんの演出は本当にわかりやすく、しかもハイセンス。子供には笑えるよう、大人には考えられるよう、細かいところまで心が行き届いています。

 舞台装置が良かった~。一見、手抜きに見えたのですが全くの間違いでした。ものすごく計算されています。どんなに暴れても大丈夫なように頑丈な作りで、すばやく場面転換ができて、シンプルゆえに人物のドラマに注目が集まりやすい。唸りました。

 大竹しのぶさん。こういうパワフルな頑張りやさんでコメディー・タッチな役は抜群ですね。確実な演技でした。
 鈴木杏さん。本当にヘレンに見えました。ごく自然にヘレンである彼女。全く無理がない。キャラがどうとか、そういう視点が必要ないんです。噂どおり天才かも。
 
 キムラ緑子さん。ヘレンの母親役。いつも最初の瞬間キムラさんだと気づかないんです。それぐらい化けてらっしゃる。今回は最高にエレガントでしたね。「返して!」のセリフが素晴らしかった。温和で冷静な母親が娘を愛するあまり、我慢ならずに吐露してしまった激しい思い。絞り出されるようなセリフでした。
 長塚圭史さん。ヘレンの腹違いの兄役。なんとも優しくて弱くて、だから強がって憎まれ口ばかりたたく人間らしいダメ男でした。愛さずにはいられないです。一番の決め台詞も笑いに持っていくしたたかさ。歌も最高。なんか衣装とかヘアメイクなど全体的に羽場裕一さんに似てたな~。緊張してらっしゃる感じがありましたが、初日ですし、これからどんどん目立っていかれると思います。

 演劇をご覧になったことのない方にも安心してお薦めできる作品です。小学校高学年から十分楽しめます。ご家族でもカップルでもお友達とでも誰とでも、ぜひ。

文化村 : http://www.bunkamura.co.jp/

Posted by shinobu at 2003年03月05日 23:17 | TrackBack (0)