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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年04月06日

tpt『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』03/21-04/13ベニサン・ピット

 『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』はアメリカ人戯曲作家、エドワード・オルビーの作品です。ピュリッツァー賞を2度受賞されています。最近は『動物園物語』がよく上演されていますよね。

 ある大学助教授の家。彼の妻は学長の娘。そこに尋ねてくる若い新任助教授とその新妻。4人芝居です。

 汚い、醜い、人間の愚かさの大展覧会でした。皮肉、暴力、脅し、狂気、不実、偽善、嘘、裏切り・・・。その醜悪さは、悲痛な心の叫びとなって観客の胸に届き、最後にはささやかな愛が与えられます。逃げ場のない、自ら滅びゆくダメ人間達への、優しいまなざしを感じられる脚本でした。

 しっかし苦しかった・・・。役者さんの演技がナーバス過ぎました。見ていられなくてうつむく事もしばしば。疲れた。もっとコメディーとして作って欲しかったです。
 最悪の事態を笑いで軽快に乗せていき、役者も観客もだんだんとその惨事の連発に麻痺していくようにして、最後の最後にどん底に持ち込んでから、暗闇に一筋に光るような、指先に小さく灯る愛を見せれば、泣ける芝居になるはずだと思いました(勝手ながら)。そうすれば登場人物の尋常じゃない汚さも、自分に身近なものに感じることができるはず。あれだと異常者の集まるランチキパーティーを覗いているだけになっちゃう。もっと感情移入して、彼らの味方の側に立って観たいです。

 この『ヴァージニア・・・』というタイトルはディズニーのアニメ『三匹のこぶた』に出てくる歌の”オオカミなんかこわくない(Who's afraid of the Big Bad Wolf?)”から来ているそうです。ヴァージニア・ウルフというのはイギリスの女流作家でアカデミズムの権化的存在だとか。そういう細かいところにインテリ向け楽しさに、私はゾクっとします。深いところまでわかったら楽しいですよね。エリザベス・テーラー主演の映画もあるんですね。観たい。

 tptのパンフレットは毎回必ず買うのですが、スタッフのページが写真入りだったのがすごく嬉しいです。tptは舞台芸術の総合プロデュースをされているんですから、役者や演出家だけでなく美術、照明、音響、衣装、ヘアメイク、舞台監督、そして脚本、翻訳、通訳・・・など、作品に直接関わった人たちの顔が見えることって大切だと思います。というか、観客として単純に嬉しい♪

 舞台美術がすごく良かったです。照明も好き。音響は抑え気味で、だけどメリハリがありました。役者さんだと植野葉子さん(新妻役)がきれいでした。一番素直に役柄に入っていけてるように思いました。無理がない。

tpt : http://www.tpt.co.jp

Posted by shinobu at 2003年04月06日 01:14 | TrackBack (0)