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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年10月18日

サッカリン・サーカス『オクスリオペラ』10/16-10/19ザムザ阿佐ヶ谷

 正式なタイトルは『公団住宅一幕劇 +オクスリオペラ+ ~健康になるためなら死んでもよくってよ、私。~』。
 TANIさんの書き込みを読んで興味が湧いたので、観に行ってきました。
 
 ※「しのぶの観劇掲示板」だった時の、お返事の形式になっています。

> チラシのビジュアルを見て引かない人にはお薦めできます。
 そう。チラシがね。私はかなり苦手です。作品はチラシのイメージとは随分ちがう内容でしたよね?投げっぱなしの毒々しいパフォーマンス芝居のように想像していたのですが、しっかり主張のあるストーリーものでした。歌って踊っての万人向けエンターテイメントだったし。チラシでかなり損してると思うんですが・・・・それがポリシーかもしれないしねー。難しいところです。

 TANIさんのおっしゃるとおり、ストーリーが二転三転しましたね~。ミュージカル風ドタバタ・コメディーかと思いきや、突然ブラックユーモア満載のアングラ風になり、最後にはウェルメイドのドラマにまで発展しました。よくもここまで書き込んだ!って言いたくなる脚本です。まさかあんな展開になるとは、意外や意外。てゆーか意外すぎ(笑)。

 ブラックな設定だけど子供向け演劇のようなまっとうさがある、独特の空間だったと思います。例えば、踊りと歌があくまでも楽しくPOPに挿入されることや、衣裳が派手でちょっと下品な感じが大衆向けです。主人公の明子が観客に向かって語りかける形式には驚き。古いスタイルですが、かなりわかりやすいです。

 装置のバランスが良かったですね。ザムザ阿佐ヶ谷のムードにぴったりでした。あそこは公団住宅、あそこはお金持ちの豪邸、という風に舞台がパート分けされていてその境界をぴょんと飛び越える事にちゃんと意味を持たせていのは、しっかりした演出だなーと思いました。

 ただ、2時間強は長かった~。もっとスリムにできたんじゃないかな~。富山の薬売りから、健康のためのサプリメント類を大量に、定期的に買っている健康オタク家族。父親は無職。母親は元ホステス。長男は引きこもり。末娘はまだ何もわからないガキんちょ。長女の明子だけがまともで、貧しいながらも必死で勉学にいそしむ高校生。塾講師のエリートの彼氏がいて・・・という設定だけで1時間は割いていたと思います。私はそれが本筋だと思っていましたが、そうじゃなかったんです。本題はその後、しかも1つじゃなくて、2つありました。(末娘の復活とその後始末&母親と長男の罪の自白)

 チラシにちゃんと「末娘が倒れてから事態は急変する」と書いてありましたからああいう展開になることは最初から決まっていて、後からエピソードを付け足していったのではないはずです。だったら、もっと前半はあっさり進む方が良かったんじゃないかしら。ラストにみんなで合唱していた歌の歌詞がちょっと説教くさい内容だったのですが、それも、より素直に伝わるようになると思います。

 宇田川千珠子さん。ヒロイン。女子高生の明子。ちょっとハスキーな声がすごく良いです。客に向かって話しかけるのが自然。かなり気に入ってしまいました。怒鳴っても困っても、ある一線できちんと止めてくれるのは非常に品があると思います。
 堀口茉純さん。末娘役。倒れるまでのお子様演技が上手いと思いました。もしかすると素キャラかもしれないので、次回公演で確認したいです。
 松下哲さん。越中富山の薬売り役。まあまあ、でしたね。そつがないというか。固定キャラですね。松下さんが出演するのをHPで発見したのも、このお芝居を観ると決めた理由のひとつでした。「走れ!ばばあの群れ」「踊る大仏どきっ(だっけ?)」時代のご活躍をいまだ忘れられないんです。

> 早稲田大学が母体の小劇場劇団。
> 演出家の伊地知ナナコ(未だに読めない)はどっかで演出賞をもらったばかり。
何をもらわれたのでしょう?
第6回沖縄市戯曲大賞受賞のこと?なんか沖縄でお芝居やるみたいですね。
 →HPによると 第6回沖縄市戯曲賞大賞受賞、2002年度日本演出者協会若手演出家優秀賞受賞

> 毎度、かなり頻繁に挿入されるオリジナルの歌とダンスが見物の一つ。
> ビジュアル的にはポップでキッチュ、ギャグはくだらなくて馬鹿馬鹿しく、それでいて物語は結構ブラック。
> ユーモアがブラックなだけじゃなくて、人間の見たくない一面をさり気なく話に絡めて来る。
> 妙なテイストと勢いのある劇団です。
 作品のイメージについてはTANIさんの説明だけで完璧!私もおっしゃるとおりだと感じました。

> 末娘・イソ子が家族をつないでいるという設定の割にイソ子の台詞と出番が軽く、
> 今一つ彼女を囲む家庭の画が見えなかった点や、
 これまたほぼ同じ感想です。末娘のイソ子があんなに重要な人物になるとは全く想像できませんでした。というか「私達は偽物の家族だ」というセリフは軽すぎるんじゃないかな。そこは甘いなーと思います。

> どん底な気分を味わわせてくれた後にハッピー・エンドで締め括る、よくできた芝居でした。
 ハッピー・エンドにしていることは、とても勇気があると思います。ああいうのは不幸にしてしまう方が簡単に終われますからね。そこが作・演出の伊地知(いぢち)ナナコさんの魅力なのかもしれませんね。

 ところで『公団住宅一幕劇』っていうけど、余裕で3幕あったよね??

サッカリンサーカス : http://www.h3.dion.ne.jp/~saccarin/

Posted by shinobu at 17:40

P.T.i.『あしたの情~基本的に、スーパースター~』10/17-18北沢タウンホール

 P.T.i.(ピー・ティー・アイ)は安元P遊香(Saliva)の”P”と今奈良孝行(エッへ)の”T(Takayuki)”と石原正一(石原正一ショー)の”i(sho-ichi)”をあわせた団体名のようです。

 ストーリーは少年ジャンプによくあるツワモノ対決もの。題材は創作プロレス。「ドラゴンボール」「聖闘士星矢」「あしたのジョー(これは少年マガジンですね)」などがモチーフでセリフにも音楽にも漫画のパロディー続出。世代的には団塊の世代ジュニア向け(27歳~35歳ぐらい?)です。
 まあ、とにかくリングの上でプロレスみたいに格闘技で対決するんですよ。血気盛んな若者たちが。それだけです。そこに主役とライバルの恋愛が挟まります。遊香さんと伊達さんと恋に落ちるっていう設定はよくわからなかったけど(笑)何につけても恋愛は不可欠ですからOK!

 舞台は北沢タウンホールを段差なしでそのまま使って、中央にプロレス・リング。まわりにマットレス。それだけ。
 そこで繰り広げられる体を張った勝負。本気でした。本当に叩いていました。投げ飛ばされてました。けが人も出たんです!まぶたから血が!!
 でも、しのびゅはそういう段取り(脚本)なんだと思っていました。「テクニカルファール!」とか言ってたし。カーテンコールで今奈良さんが怪我をした役者さんのことを言い出すまで全く気が付かなかった。あの時、舞台にいたのは役者さんたちほぼ全員ですから、皆さんのアドリブのフォローがめちゃくちゃ上手かったってことです。

 とにかく衝撃を受けたのは役者さんがうまいこと。
 うまいって言うと語弊があるかな~。心意気、かな。態度。覚悟。生き方。役者って、こういうことを引き受けなきゃだめな職業なんだってあらためて思いました。

 HPの稽古場リポートを見ればわかりますが、稽古時間も相当短いです。リングは本番の時しか借りていないわけだから、お互いイメージだけでお稽古しているんですよね。それにノリウチ(小屋入りした日に初日の幕が開く)なんですよ。7時開演だけど6時半までゲネプロをやっていたそうです。ほとんど2連続公演だったと思うと、そのスタミナにも感動。

 キャストは小劇場的に超豪華です。下記、気になった方々について。
 今奈良孝行さん(EHHE)。一番体を張ってました。かっこ良かった。カーテンコールでの男っぷりもほれぼれでした。
 安元P遊香さん(Saliva)。きつくてイイ女のイメージだったんですが、柔らかいし可愛いし。力持ち!
 伊達暁さん(阿佐ヶ谷スパイダース)。かっこ良かったですが、恐すぎました。狂っちゃうところはもっと楽にやってもらえた方が良かったかな。

 永野宗典さん(ヨーロッパ企画) 清涼剤でした。空気が好き。
 野村朋子さん(主婦・元ハイレグ)。熱さと真剣さに打たれました。女から見てかっこいい。
 Dr.エクアドルさん(ゴキブリコンビナート)。誰だか全然わからなかった。浮いていた気がする。
 エル・ニンジャさん(無所属)。プロレスラーさんですよね?技を見せて頂きました。ありがとうございました。
 土屋雄さん(innerchild)。怪我、大丈夫でしょうか。ジャンプ力すごいですねー。
 日高勝郎さん。おっちゃんキャラでしたね。牛乳屋『Earth, Love, Travel』を思い出しました。
 隠れゲストさん。もしかして、ほんとに?え??だとしたらスゴイ。でもオーラはなかったな~。
 ※後から出演者の方に確認したところ、本当に中村獅堂さんでした。

 えっと、しのびゅは知ってる役者さん(もしくは、何度か拝見している方々)ばかりだったので楽しめましたが全くの演劇素人の人が観たらどうかというと・・・たぶん面白くなかっただろうと思います。ひいちゃうばかりでしょう(笑)。

 P.T.i.(ピー・ティー・アイ)公式webサイト : http://pti200310.tripod.co.jp/

Posted by shinobu at 17:30