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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年01月02日

演劇実験室◎万有引力『奴婢訓』12/25-28新国立劇場 中劇場

 作:寺山修司 (原作:ジョナサン・スウィフト『Directions to Servants』)
 演出・音楽:J・A・シーザー

 『奴婢訓』は「ぬひくん」と読みます。寺山修司さん率いる演劇実験室◎天井桟敷によって1978年に初演。1982年までに世界31都市で計119回上演された作品です。その後1989年から1991年まで演劇実験室◎万有引力が37回上演しています。

 主人不在の屋敷で召使いたちが順番に主人の役を演じているという設定は絶品ですね。奴婢っていうとつまり奴隷のことです。そのタイトルから、背筋にビビッと来るぐらい強烈な禁断のSM系エロティシズムを期待していたのですが、残念ながらそこまでは味わえませんでしたね。

 全身剃毛をして全裸で出てくる役者さんが男優と女優と一人ずついたのは強烈です。寺山さんのお芝居じゃないと成立しない厳かさと猥雑さの共存を感じました。
 SM器具まがいの装置が面白かったです。尻たたき機とか最高。主従入れ替わりシーソーも素敵。
 万有引力のいつものマッチの演出が大好きなんですが、今回はなぜかちょっとパワー不足でした。『さよならの城』の方が良かった。

 新国立劇場の中劇場というと目立つのはあの巨大な奥行きですが、もう私は観慣れているのでよっぽど良い演出でないと魅了はされません。そういう意味で観ると今回のは特別に効果的ではなかったです。また、端の方の席が本当に観づらいという点でも中劇場は有名です。真ん中ブロックに座っていたならもっと面白いし見所もあっただろうと確信できるような演出だったのがとても残念。長いと感じたのも非常に残念でした。「もう終わるかな?もう終わるよね?・・・ええ!まだ続くの!?」って。

 寺山さんの素敵なセリフを1つ。財産目録を読み上げるところで出てきました。
 「意志のない過去。過去のない意志。」

演劇実験室◎万有引力 : http://www.banyu-inryoku.com/
メジャーリーグ : http://www.majorleague.co.jp/

Posted by shinobu at 2004年01月02日 16:46