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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年01月06日

サラ・ケイン何かがはじまる『4時48分サイコシス』1/6-8こまばアゴラ劇場

 28歳で鬱病で自殺したイギリスの女流作家サラ・ケインが死ぬ直前に書いた作品だそうです。出演者の方から丁寧な自筆のDMをいただいたので嬉しく思い、伺いました。

 モノローグ(独白)の連続のような作風でした。出演者は5名の女性。友人同士で対話をしている風な設定もありましたが、総じてサラ・ケインさんの個人的なつぶやきのように受け取りました。
 絶対的に孤独な人間が、自分は孤独ではないんだと感じることをゴールとするならば、そこへの道は決して1つではなく無数にあると思います。サラ・ケインさんにとっては死ぬことがそのたった1つの方法だったのではないかと思います。
 目の前に居る人を敵だと思うことが、得体の知れない恐怖の始まりなのではないかと私は最近感じています。サラさんのモノローグにはそういう言葉が多かったです。

 演出は久保亜紀子さん。女性ならではの手法だと感じました。私は女性の方が男性よりも、何かを捨て去ったり、ガラっと変身したりしやすい性質なのではないかと感じています。この作品に身を投げ出して挑んでいる女優さん達を見つめて、女性のスゴさを実感しました。
 終盤あたりで「私はあなたが好き」「あなたが私を救ってくれなかったら良かったのに(というような意味。セリフは正確ではありません)」という言葉が出てきた時、出演者の人達が色っぽく見えました。それまでは、なんだか強面(こわもて)な感じで存在が遠かったです。言葉がちゃんと届かない女優さんがしゃべっている時はかなり眠かったし。

 当日パンフレットの久保さんの文章に「この作品を観た後、『ああ、あそこにも私がいる』と、そしてこれらの問題を抱えているのは私だけではないのだ、と感じていただけることを私は望んでいる。そこには希望があるからだ。」とありましたが、それは観客が自然に感じられるんじゃないかな。パンフレットで手助けしたり誘導したりすると、かえってそれに反発してしまう観客も多い気がします。
 また、パンフレットに出演者の名前しか載っていなかったので、誰がどの役だったのかがわかりませんでした。「お客様には作品を観てもらいたいのであって、役者を見てもらいたいわけではない」という主張を感じます。それは私にとってはとても残念なことです。
 
 お芝居が始まって終わるまでの全般に渡って、作品に関わっている方々のこの作品に対する強い気負いを感じました。ただの観客としての私には、そういうのはちょっと重荷でした。

 → PLAYNOTE.NETの記事

Link 「サラ・ケイン何かがはじまる」プロジェクト :http://www1.odn.ne.jp/sarah_kyoto/
   こまばアゴラ劇場「冬のサミット2003」 : http://www.agora-summit.com/

Posted by shinobu at 2004年01月06日 22:44 | TrackBack (0)