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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年02月10日

ITPoT.C『フルチンチン2004』02/05-15下北沢「劇」小劇場

 ITPoT.Cは"in the presence of theater company"の略。インプレと呼ばれているようです。いわゆる即興演劇メソッドから作品を作り上げていくとか。

 去年好評だった『フルチンチン』の再演ですが、内容は全く違いましたね。同じ作品の再演だと思われそうなチラシ・ビジュアルでしたが、全くの新作だと言っていいと思います。

 お目当てのストリッパーを追いかけて熊本から東京に出てきた男、海で行方不明になった妻を捜しながらストリップ小屋で働く男、「男性ストリッパー募集」のチラシで訪れた性同一障害の男など、どこかしら屈折した面を持った登場人物たちの、リアルで真面目なやりとり。合間に素朴な笑いや明るいダンスが入ったりしながら、一人ひとりのドラマを描いていきます。

 男性ストリップをやることになる男たちそれぞれの感情が伝わってきて、何度か泣けました。ただ、ラストの肝心の男性ストリップ・ショーで盛り上がれなかったんですよね。深刻なドラマを長く丁寧に描かれていて、ちょっとくどいかな、と思うくらいでしたからね。突然ストリップショーになるのではなく、ストリップをすることに至る最後の瞬間を描いてそれをクライマックスへの助走にすれば、前回同様に客席からも拍手や声援があったのではないかなと思いました。

 熊本から出てきた男の子が、ドリカムの“LOVE LOVE LOVE”の歌詞「ねえどうして すごくすごく好きなこと ただ伝えたいだけなのに るるるるるー 涙が出ちゃうんだろう」をサラっと歌って、自分がそういう気持ちだと言うのがとても良かった。歌で聞くよりも心にずしりと伝わってきました。暖かい熊本弁(博多弁?)だから、より良かったのかもしれません。

 選曲に演出家さんのお好みがくっきり出ていました。ヴォーカルのある音楽が多かったですね。キャロル・キング、ジャニス・ジョップリン、ビギン(沖縄)等。歌詞とストーリーがぴったり一致していたり、歌が主役っていう感じの演出もチラホラ。映画『フルモンティ』の音楽はやっぱりいいですね。私の好みと被っているので嬉しいことは嬉しいのですが、歌ばかりに集中してしまってストーリーから完全に頭が離れたりしてしまいました。ちょっと音楽に個性がありすぎかも?

 前回と比べて美術がグレードアップしていて嬉しかったな~。でも、ストリップ小屋とライブハウスの区別がつきづらかったので、わかりやすく照明を工夫しても良かったのではないでしょうか。

 ストリッパー役の白須陽子さんのダンス(ストリッパーの、それです)がめちゃくちゃ美しかった!女の私も見とれました。スタイルもいいし可愛いし、こりゃ追っかけファンにもなるよねって納得です。

 私がインプレを観ると必ず出演していらした荘司優希さんが出てなくて驚きました。チラシにも当日パンフレットにも名前が載っているのに。「何かトラブルがあったのかしら」とか余計な想像が膨らんでしまったので、出演しない理由を何らかの形で知らせていただけたら良かったと思います。(どこかにそういう告知があったのならごめんなさい。私は見つけられませんでした。) 
 コンドーム付きの当日パンフにも驚きました。募金もしました。あまりの勢いに押されて・・・。

出演 米川さち 甲斐純一郎 佐藤顕紀 福本亜紀 坂下恵 安井治次郎 菊川仁史
スタッフ 照明:若林恒美 音響:土屋由紀 美術デザイン:吉野章弘 舞台美術:作手皆舞台 舞台監督:川村彰 宣伝デザイン:tansu inc. 
Music:原崎忠雄 
Written & Directed:塚越由矩典 

in the presence of theater company(インプレ): http://www.inpre.net/

Posted by shinobu at 2004年02月10日 18:42