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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年02月15日

ブラジル『バレンタインデー・キス』02/11-16王子小劇場

 ブラジリィー・アン・山田さんが作・演出をする演劇ユニットのブラジル。所属役者さんは辰巳智秋さんお一人で、毎回他劇団から役者さんを集めるプロデュース形式です。

 今回も確実に“苦笑系”演劇でした。いっぱい笑ってとっても面白かった上に、なんと、涙が出てしまいました。

 女子高生がバレンタインチョコを渡そうと意中の彼を倉庫に呼び出したが、なんとその倉庫は銀行強盗たちの集合場所でもあった。何もかもが上手くいかず、予定外の鉢合わせとドタバタの連続。
 
 犯罪ものを本筋に、青春ラブ・コメディー路線とアンダーグラウンドな設定を盛り込んだ、先のわからないエキサイティングな展開。芸達者な役者さんの個々のファインプレイが生々しさをさらに盛り上げます。破廉恥なセリフや演技(そしてあの小道具)も、こっ恥ずかしさを感じつつ苦笑させていただきました。

 とにかく役者さんが体を張っています。ダンボール箱が所狭しと転がる舞台で、トラブルが常に起こっているような状態。段取り通りの演技をすることがまず困難です。プロデュース公演にありがちなキャラクター勝負に陥ることを防ぎ、一人一人の個性は生かしながらも一体感のある作品に仕上がっているのは、脚本と演出のしたたかな狙いだと思います。

 なぜ涙が出ちゃったのか自分でも理解不可能でした。今考えると映画『ラストサムライ』と同じものを感じたような気がします。暴力、暴力、暴力、その空しさ。どうでもいいことに必死になる人間の滑稽さと悲しさ。舞台上の役者さんたちの生の熱さがそれを本物として伝えてくれたのではないでしょうか。

 王子小劇場の個性をうまく利用した美術ですね。お値段も安く抑えてらっしゃるのでしょう。だけど臨場感ばっちり。
 ラストに流れる音楽「守ってあげたい」が効果的。
 前述のとおりトラブル続出で段取り通りにいかないことが多かったからか、途中で不自然に止まっているようなこともありましたが、それは気になりませんでした。

 辰巳智秋さん。チョコを渡したい女子高生役。おデブ体型のキュートなセーラー服姿で、反射神経と柔軟な演技と爆発力がすごいです。

作・演出:ブラジリィー・アン・山田
出演:辰巳智秋 佐藤亜紀(bound) 岩渕敏司(くろいぬパレード) 近藤美月(bird's-eye view) 伊藤伸太朗(チャリT企画) 内山奈々(チャリT企画) 武藤心平(クロム舎) 日栄洋祐 安元遊香(Saliva) ハセガワアユム(caprico)佐藤春平(少年社中) 白坂英晃(はらぺこペンギン) 近藤英輝(双数姉妹) 中谷真由美(シアトル劇団子) 小田さやか 久保貫太郎(演劇弁当猫ニャー) 石川ユリコ(拙者ムニエル)
音響:島貫聡 照明:シバタユキエ 舞台監督:鈴木たろう 衣装製作:太田家世(自由創作師) 宣伝美術:川本裕之 宣伝写真:岩崎詩子 チラシモデル:佐藤亜紀 演出助手:恒川稔英 制作:吉野礼・ブラジル事務局

ブラジル : http://www.medianetjapan.com/10/drama_art/brazil/

Posted by shinobu at 2004年02月15日 19:43