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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年05月11日

シス・カンパニー『ダム・ウェイター Bヴァージョン』05/10-06/06シアタートラム

 ハロルド・ピンターの不条理短編劇を2種類の演出家・キャストで上演するシス・カンパニーの企画公演。男2人芝居です。
 Bヴァージョンは演出:鈴木勝秀 出演:高橋克実・浅野和之 です。やっぱりクールなsuzukatz.(スズカツ:鈴木勝秀さんの愛称)ワールドでした。

 2人の殺し屋が狭い部屋で“仕事”の合図を待っている。お互いにとりとめもない話をしたりしながら時間をつぶしていると、突然に部屋に取り付けられていたダム・ウェイター(料理を上下の階に運ぶエレベーター式の装置)が動き出して・・・。

 客入れ音楽はたしか先日も『LYNKS』@青山円形劇場でも流れていたロック・ミュージックでした。残念ながら誰のどの曲かは私にはわかりませんが、軽快だけど骨太な感じでカッコいいです。↓ネタバレします。

 突然ガガーン!と爆発音か雷か、と思うようなすごい音が響いたかと思ったら、舞台中央の四角くて大きな穴から鉄の柱のようなものがゴゴゴゴーっとそそり出てきました。なるほどあれがダム・ウェイターですね。そのまま待っていると、男2人が横になったベッドを載せた床が登ってきて、ガッシャーン!と舞台と同レベルで止まりました。ロボットアニメで胴体と下半身が合体するかのようでした。

 シアタートラムの石の壁をそのまま使っていて舞台全体のイメージは重金属の黒。メタリック&クールな抽象です。ど真ん中に大胆に生えているダム・ウェイターと同じく、ドアを表す2本の柱やベッドは鉄で出来ています。ベッドの上に敷かれた毛布とシーツが透明や薄水色のビニールなのが、すごく面白い。タバコも透明のアクリルの箱で、ピストルは蛍光色のプラスティック水鉄砲。浅野和之さんが読んでいる新聞も透明のプラスティックで、めくるとカシャカシャ音が鳴ります。

 衣裳は2人とも上質の真っ白のシャツに黒いパンツ。ウールの生地質がすごく良いんです。そしてまっさらの黒い革靴が渋い!カッコいいです。

 特筆すべき特徴がもう一つ。音がすごかったんです。体中にビンビン響く重低音が、いやおうなしに恐怖を誘いました。よく見ると巨大なスピーカーがダム・ウェイターの真後ろ、舞台中央の奥に設置されていたんです。

 作品としては、いわゆる不条理劇のスタイルに仕上がっていました。舞台上に居る役者さんが何かを意図して演じている様子ではなく、登場人物というよりは高橋克実さんと浅野和之さんご自身がそのまま居るような印象です。観客はもちろん訳がわからないまま彼らを眺めるだけの状態で、そして突然、何の説明もなく、全てを投げたまま終わります。

 あえてストーリーがあるとして考えると、高橋克実さんだけが何も知らされていなくて、そのまま罠にはめられたというような筋書きになるでしょうか。でも、この演出は筋書き(ストーリー)なんてどうでもいいんだろうと思います。「息苦しいほどの閉塞感」「得体の知れないモノ・コトに追い詰められている」「最期(死)に向かって突き進んでいる」「決して逃れることができない運命」などの感覚さえあればいいんじゃないかな。

 ダム・ウェイターの仕組み、一体どうなっていたんだろう・・・。私は中央辺りで2段階に分かれていて、後ろに人が一人居たと思うのですが、皆様はいかがですか?(笑)

Aヴァージョン 演出:鈴木裕美 出演:堤 真一・村上 淳
Bヴァージョン 演出:鈴木勝秀 出演:高橋克実・浅野和之
作:ハロルド・ピンター
翻訳:常田景子/美術:松井るみ/照明:笠原俊幸/衣装:伊賀大介 音響:井上正弘/舞台監督:二瓶剛雄/プロデューサー:北村明子
シス・カンパニー:http://www.siscompany.com/

Posted by shinobu at 2004年05月11日 23:39