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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年05月24日

燐光群アトリエの会『犀(さい)』05/10-23梅が丘BOX

 『犀』は動物のサイです。不条理演劇の作家として歴史上に名高いイヨネスコー(1912-1994)の作品。
 大河内なおこさんの初演出作品だそうです。蜷川幸雄さんや坂手洋二さんの演出助手をされていた方で、当日パンフレットに両演出家からの寄稿がありました。
 思いっきりSFでしたね。ハリウッド映画のようにエキサイティング&スリリングでした。

 今回の梅が丘BOXは客席およそ70席で、真ん中に舞台を挟む形でした。そんなものすごく小さな空間で熱く繰り広げられる「まわりの人間がどんどんサイに変身していって、残っているのは自分だけ?!」という恐怖におののき狂っていくお話なんです。ものすごい緊張と躍動でした。

 前半はちょっと形式ばっていて眠くなってしまったのですが、後半はいわゆる絶体絶命状態が続いて、一体何が正しいのか何が真実なのか、全くわからなくなってきて目が離せませんでした。

 ただ、この作品を語るには疲れすぎたかも・・・。同じ言語を話していても絶望的なほど通じ合えないこと、多数派に抱き込まれていく弱い人間、死を目前にして初めて実感する生、極限状態の人間の愛、“私”とは一体何なのか、果たして人間とはこの世に存在しても良いものなのか・・・等など、さまざまなことが表されていたと思うのですが、お芝居が終わる頃にはほとほと疲れてしまっていました。今もちょっと書きづらいほど。ふ~。

 緑色の照明が床から差してきてロスコーの煙を照らすのが、すごくおどろおどろしいんです。役者さんの演技も激しく生々しくて映画のようでした。しかも肌ががさがさになって角が生えてサイに変身するんですから本当のホラーです。『エイリアン』とか『遊星から来た物体X』とかを思い出します(古いですが)。坂手さんもジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ映画三部作のことをパンフレットで触れられていました。

 向井孝成さん。最後に残る男ジェー役。トボけたり狂ったり、大変な役ですね。声が枯れていてかわいそうでした。
 宮島千栄さん。最後に残る女デジ役。セクシー。ビューティフル。抱き合って確かめ合う二人のシーンがすごく良かったです。そう、ハリウッド映画のゴージャスなラブシーンでした。

燐光群+グッドフェローズ プロデュース 燐光群アトリエの会
作=ウージェーヌ・イヨネスコ 訳=加藤新吉 上演台本:坂手洋二 演出=大河内なおこ
出演:内海常葉 宮島千栄 下総源太朗 猪熊恒和 鴨川てんし 向井孝成 樋尾麻衣子 江口敦子
美術=斉藤紀子 大島広子 松井るみ 小道具美術=福田秋雄(ゼペット) 照明=武藤聡 音響=友部秋一(オフィス新音) 衣裳=大野典子 舞台監督=吉田智久 文芸助手=久保志乃ぶ 圓岡めぐみ イラスト=加藤也子 宣伝意匠=高崎勝也 Company staff=中山マリ・川中健次郎・大西孝洋・瀧口修央・裴優宇 著作権代理=(株)フランス著作権事務所 協力=(株)センターラインアソシエイツ 制作=古元道広・川崎百世・国光千世 芸術監督=坂手洋二
燐光群:http://www.alles.or.jp/~rinkogun/

Posted by shinobu at 2004年05月24日 23:17