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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年05月25日

演劇企画「怪童堂」プロデュース『ドレッサー』03/24-31中野ザ・ポケット

 演劇企画「怪童堂」は俳優の堂下勝気さんが主宰する劇団です。
 シェイクスピアを上演しながら世界(地方)を巡る劇団の舞台裏。年老いた俳優とその付き人(=ドレッサー)のお話でした。芝居もののお芝居はすごく苦手なはずの私ですが、そういう意味でつらくなるところはなかったです。

 年寄りのワンマンな座長(二瓶鮫一)が病に倒れた。座長を16年間支え続けているドレッサー(堂下勝気)が、なだめたり叱ったり激励したり、さまざまな手練手管で座長を舞台に上げることが出来たのだが・・・。

 まず幕が開くまでまでのしっちゃかめっちゃかが存分に描かれます。やっと幕が開きますが『リア王』のお話が続く中、座長のわがままとそれに振り回される人々の、またもやしっちゃかめっちゃか。
 旅をして興業を続ける劇団の大変さがストレートに伝わってきて、なんだか身につまされるんですよね(苦笑)。そういうのが苦手だから芝居モノは観ないようにしているのですが、この脚本は登場人物一人ひとりの心情について深く書かれていたので、そのドラマが楽しめました。
 気に入ったセリフ→「人生で一番幸せなことは、思い出してもらうことだ。」

 座長役の二瓶さんがドーランでメイクをしたり、それをメイク落としで拭き取ったり何度も繰り返されるのですが、あまり美しくなかったですね。仕方がないとはいえ汗と油でギトギトして・・・目に優しくなかったです。リアリティーの意味では必要だったのかもしれませんが。

 美術(V・銀太)がとても良かったです。劇中劇が面白かったのは装置の力に因っているところが大きいと思います。全体的に柱だけで壁がない型式で、空白が多い美術でした。正面に座長の楽屋、上手と下手の奥が女子&男子の楽屋で、舞台は座長楽屋の奥で、女子&男子楽屋の間、つまりど真ん中の一段上にあります。そこがステージになったり廊下や道路になったりします。

 劇中劇で使用される音響装置が良かった!!『リア王』の嵐のシーンの雷や風などの自然現象の音を、その時代の楽器(?)で鳴らすんです。鉄板をぼよんぼよんとしならせて雷の音、布と木をこすらせて風の音、たくさんの石を筒に入れて上から下へと転がして雨の音、など。

 衣裳(蟹江 杏)は、劇中劇の舞台衣装と日常着の2パターンでたくさん作られていました。レトロな感覚のお洋服がとってもかわいかったです。特に町田カナさんがお召しになっていたグリーンのファー付きコートが好き。

 町田カナさん(reset-N)。新人女優の役。体の線が空気に沿うようになめらかで美しいです。声もキャラクターも完璧に作られているから目が離せません。座長(二瓶鮫一)とのラブ・シーンは緊迫感があって色気があって、シーンとして、ものすごくかっこ良かったです。

 客席が豪華でした。ベニサン・ピットの方(お名前はわからないのですがおそらく支配人クラスの方)や演劇評論家の扇田昭彦さん、流山児祥さん等がいらっしゃいました。

キャスト:二瓶鮫一 伊東由美子(劇団離風霊船) 大草理乙子(ラッパ屋) 三井善忠 松木良方 町田カナ(reset-N) 堂下勝気 柳東史 神田剛 金子森 池谷なぎさ(グローシャ) 笹崎志保
作:ロナルド・ハーウッド 訳:松岡和子  演出・美術:V・銀太 照明:吉本昇 音響:井出比呂之 衣裳:蟹江杏 ヘアメイク:内田桃子 演出助手:本間美奈子 舞台監督:村岡晋 舞台監督助手:岸京子 宣伝美術:高橋雅之(タカハシデザイン室) 宣伝写真:山下裕之 制作:美田健次 正木弘美 主催:演劇企画「怪童堂」
演劇企画「怪童堂」 : http://www5f.biglobe.ne.jp/~kaidodo

Posted by shinobu at 2004年05月25日 17:59