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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年07月25日

みかん・夏『mellow・・・涙いろ』07/23-25中野スタジオあくとれ

 bird's-eye viewの女優、近藤美月さんが作・演出する“みかん”。公演は4度目だそうです。
 個性派女優として色んな劇団でご活躍の美月さんの独特の世界が、溢れて、こぼれて、溺れそうになるほどに満ち満ちて、光を撒き散らしていました。

 開演の一番初めの音楽(Mゼロ)は男闘呼組の“TIME ZONE”。心が病んでいると思われる女の子とその彼氏との少し困っちゃう今ドキの若者の怖いやりとりの後、照明が一瞬だけ華やかPOPに舞台を輝かせます。オレンジ、ピンク、黄色などのほんのりメローな暖色系の丸いスポットがパラパラと壁を照らし、イメージとしてはミラーボールが回っている様。うわ、可愛い!と思ったらすかさず暗転して、ユーミンの“中央フリーウェイ”が絶妙のタイミングで入りました。
 ・・・私の“女心”はわしづかみにされました。涙がしぼり出されてきて、次のシーンが始まっても体の振るえが止まらなかったんです。一瞬のその光の中に、恥ずかしくて普段は口に出せない女の子の本当の望みが、瞬(またた)いたように感じられたからです。

 同棲しているカップルの破綻、煮え切らない彼氏に不満気味の女の子が他の男との間で揺れ動くこっけいな様、モテていないであろうポッチャリ体系の女の子の哀しい本音トークなど、独立した場面が少しずつつながっていく構成でした。

 男女平等と謳われて、キャリアウーマンが当たり前になって、離婚率が上がって、しかしながら結婚・出産していない30代後半以上の女性を「負け犬」と呼ぶような流行語が生まれたりしている現代の日本。「本当の私」「私らしい私」を表に出したら笑いものにされ、「女だから」と慎んでいてもバカにされて利用される。現代の女の子たちは“自由な世の中”という名の中途半端な地獄に放り出されたといっても過言ではないと思います。その世界の中での女の子の心、美月さんのプライベートな感情、デリカシーをダイレクトに受け取って、私は共感して泣きました。

 地球儀柄のボールがちょこんと舞台中央に置かれて、舞台奥の壁にさまざまな国名が文字映像で映し出されます。アメリカ合衆国、ロシア連邦、カナダ、日本国、アラブ首長国連邦・・・最後に大日本帝国。そして「自由」「平等」「博愛」と大きな文字が写されて、暗転。ちっぽけな地球の中の全ての国の“女”、そしてその中の“私(=女)”という視点(スケール)が表されていたと思います。
 この文字映像のシーンでエンディングだったら良かったんじゃないかな~と思いました。最後のあたりは長かったし、意味もシチュエーションも重複していたように感じましたので。セリフも痛いのが多かったし。

 音楽が最高に良かったです。選曲という意味でも、シーンに意味をつけるという点でも。サントラが欲しい!!

 脚本とその意図がすごく個性的で、狙っている的が小さいので、役者さんは演じるのが大変だと思います。男優さんは少しおぼつかない感じでした。力のある役者さんが揃えられれば、すごい世界が出来上がったことと思います。最近、こういうこと多いな~・・・。
 
 佐藤亜紀さん。同棲カップルの南実役。めちゃくちゃ可愛らしかったです。こういう女の子が演劇界にいて嬉しい。
 吉田久代さん(ククルカン)。2人の男の間で揺れるじゅん子役。覚悟があって女っぷりがいいんですよね~。だいぶんファンになりました。ナーバスめの演技がちょっと多すぎたかも。

作・演出:近藤美月
出演:佐藤亜紀 吉田久代(ククルカン) 碓井将仁(レトロモラパッド) 足利彩(Orange PunPKing) 宇原智茂(Orange PunPKing) 真阪愉志 安田早苗
音響:佐藤春平(SoundCube) 照明:池田沙織 舞台監督:坂野早織 演出助手:奥村亜紀 衣裳:川上麻里恵 宣伝美術:中村公平 舞台美術:樅ノ木団栗 制作助手:蓮華薔薇子 風きらら 制作:保田佳織(G-up) 映像:大塩哲史
お問い合わせ:080-5085-6810(みかん) 090-4242-8776(制作) rummy_1192@hotmail.com

Posted by shinobu at 2004年07月25日 17:52 | TrackBack (0)