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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年08月02日

劇団BISHOP『時空寺』07/22-28ザムザ阿佐ヶ谷

 学生劇団時代に2000人を動員した劇団BISHOP(ビショップ)の8年ぶりの新作です。私は昔、役者として所属していました。あぁ懐かしい。
 2時間で56億年余を旅する壮大な世界観でした。

 天狗の力を借りて室町時代から約1000年後にタイムトリップした僧正の恵教(えきょう:山田伊久磨)と僧兵の常陸房(ひたちぼう:田中聡元)のお話。
 
 脚本が非常に面白かったです。仏教についての深い知識を語ってくださっていました。「すべてはフロイト、新約聖書に書いてある」というのには驚き。私はこの作品の意味を完全に理解できたわけではありませんが、世界は同じであり、人・生命はみな同じであること、そして全世界(全宇宙)への広い愛を伝えようとしているように感じました。

 当日パンフレットに掲載されていた作・演出の栗原さんの文章を抜粋・引用します。 
 「冷戦も終わりを告げ、ようやくひとつになった世界が、今後何にときめき、何を目指し、何を知り、何を知らずに生きていくのか、私たちは歴史の大きな転換点に立たされているように思います。自己と他者の文化をより深々と掘り下げ、今まで隔てられてた人々と巡り会えるように、そんな思いを込めて創りました。」
 演劇を通じてこのような気持ちを伝えようとされているのは貴重なことだと思います。次回も12月に公演が決まっているようですので楽しみです。

 エンディングがシンプルで衝撃的でした。もうちょっと暗転が長かったら良かったと思います。恵教が1000年後の世界(つまり2004年)に来るまでは比較的スローペースだったのですが、そこから世界旅行を経て、約56億年後の世界からラストまでの展開が速すぎて、「無」を味わう時間も余裕も無かったです。そして、カーテンコールをすべきでした。これは絶対にはずしてはいけないと私は思うのです。
 
 さまざまな分野の芸術が集められた公演でしたので、心に残ったことを書き留めてみます。
 ベリー・ダンスとバレエがありました。ベリー・ダンスの方は発表会になってしまって残念でしたが、後で出てきたバレエで挽回しましたね。あくまでも恵教と常陸房が世界を旅していることを表すものであるべきだったと思います。
 殺陣は型を見せるスタイルでした。オープニングにいきなり形式美から入ったので、いくらエッヘとラブリーヨーヨーというエンタテインメント系の役者さんが出ているとはいえ、リラックスするまではちょっと時間がかかりましたね(笑)。でも、見所があると思いました。
 雅楽の生演奏は聴き応えがありました。上手の袖で演奏していらっしゃったのですが、幕の後ろだったので全然見えなかったのが本当に残念。せっかく生演奏なのですから奏者の姿を見ていたかったです。作曲家であり笙(しょう)の演奏者の真鍋さん、この公演のために坊主頭にしていらしたらしいんですよ!観客からは見えないのに・・・気概を感じます。

 美術は舞台全体が真っ白な布に包まれただけの抽象的でシンプルなものでした。ビジュアル面の大半を担っているとも言える照明(松本大介)が素晴らしかったです。赤、黄、青などの原色を基調にじっくりとその色合いを見せます。時空寺の室内シーンで特に技術を感じました。最後に僧正とが天国(?)にたどりついた時は、ゆ~っくりと白く明るく輝いていくグラデーションが荘厳でした。

 動画が使われるのは知っていたのですが、まさか床に映すとは!ヤられたな~。タイムトリップのシーンはちょっと時間的に長い気がしましたが、ダイナミックで良かったです。

 役者さんは、全員が早口であせっているように見えました。しっかりじっくり見せて聞かせれば面白いところばかりでしたので、自信を持って臨んでもらいたいです。ギャグは特に、もうちょっと頑張ってもらいたかったです。また、役者さんの技術に差があり、主役以外は完全な脇役という風に感じられたのは残念なことでした。

 山田伊久磨さん(エッヘ)。見事な僧侶役でした。大量の難しいセリフをしっかりかみ締めて語られていたので、死を怖れない、証し(あかし)を得るために生きる主人公“恵教”そのものに見えました。他の舞台では、ほぼ全裸(ブリーフ姿)の伊久磨さんしか印象に無かったので(笑)、堂々たるお姿にずっと魅せられていました。お笑いやコント等で大変ご活躍ですが、これを機にストレートプレイの世界にも進出していって頂きたいです。
 田中聡元さん(ラブリーヨーヨー)。僧兵の常陸房役。根っからの目立ちたがり屋さんなのでしょうね。生き生きのびのびしてらっしゃいました。明るくって本当に素敵。
 ザンヨウコさん(危婦人)。キュートで包容力のある女優さんです。コメディセンスが抜群。ザンさんが出てくる度に嬉しくなりました。

作・演出/栗原明志 作曲/真鍋尚之
出演/山田伊久磨(エッヘ) 田中聡元(ラブリーヨーヨー) 土井俊和(劇団BISHOP) ザンヨウコ(危婦人) 鈴木勝比古  前里瑛一 宮久保祐紀 坂巻秀人 佐藤樹呼 黒田倫代
演奏 笙/真鍋尚之 打楽器/多田恵子・藤田一行 ダンス バレエ/市山美沙 ベリーダンス/高尾洋香・石神明子 スタッフ 総合美術監督/美澤修 演出補/スギタクミ(危婦人) 演出助手/土
井俊和・金野潤 殺陣指導/島口哲朗(剱伎衆かむゐ) ベリーダンス振付/海老原美代子 舞台監督/小野八着(Jet Stream) 音響/中村嘉宏(atSound) 照明/松本大介 衣装製作/ジョーメグミ(危婦人) 宣伝写真/コスガ・デスガ 書/鈴木康予 制作/小林千晶・タンタン・花田裕美・林愛華・渕上愛亜 プロデュース/猪川哲一朗 企画製作 office bishop
office bishop:http://www.office-bishop.com/

Posted by shinobu at 2004年08月02日 16:49 | TrackBack (0)