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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年08月01日

道学先生『エキスポ』07/28-08/01紀伊国屋ホール

 劇団道学先生は今までも結構気になっていたのですが、なぜかご縁が無く、紀伊国屋ホール進出という機会でやっと伺えました。
 劇団の座付き作家である中島淳彦さんは色んなところに脚本提供されています。今回の演出は青年座の黒岩亮さんです。

 時は1970年、舞台は宮崎県のとある田舎の純和風の家の居間。奥の壁に白黒の幕(鯨幕)がかかっていて、喪服姿の女がバタバタと忙しそうに働いている。
 幕が開いた時に既に誰かが亡くなっていて、その人のお通夜からお葬式にかけてのシチュエーションコメディーというのは、演劇じゃなくてもよくある形式ですよね。色々予想通りの展開だったので中盤ぐらいまでは退屈でした。でも、終盤から”良く出来た形”がガラガラと崩れて行き、最後は名優・湯浅実さんがしっかりと締めてくださり、ほろりと涙できました。すごいですね~・・・こういうのを大人が安心して楽しめる作品というのでしょうか。

 亡くなった母親が連れ込み旅館(今でいうラブホテル)の女将だった、というのが上手い仕掛けですよね。誰にも言えない、隠されるべき、甘い秘密の宝庫ですから。

 九州男児って、こんな困ったちゃんばかりなのかしら・・・。私の周りにも九州出身の男性がたくさん居るんですが、ちょっと似てます(笑)。働かない、金もない、なのに口ばっかり達者で見栄っ張り(劇中の登場人物はこんな感じでした)。でも、憎めないんです。それどころかすごく可愛いんです。お世話したくなるんです。これだから女は負けっぱなしなんですよね~。

 エキスポとは、1970年に大阪で開かれた万国博覧会、略して万博(ばんぱく)のことです。私は大阪出身ですので岡本太郎氏が作られた“太陽の塔”にはすごく親しみが沸きます。三波春夫さんの“世界の国からこんにちは”は名曲ですよね!“月の石”が展示されていたというのは知りませんでした。

 キャッチコピーになっている「父ちゃん、人類の進歩と調和げな」という言葉は亡くなった母が最後に言った言葉で、何度もそのセリフが出てきます。70年代の日本で開かれた万博にはそういう気持ちが込められていたんですね。2000年代に入った世界は、変化のスピードがあまりに速く、しかも激しいので、そういう気持ちを味わう余裕がないというか、とどまる事ができづらい社会になっている気がします。でも、本当は自分で立ち止まって、自分から味わうべきなんじゃないかと思います。

 大西多摩恵さん。がんばって仕切る嫁役。ちゃきちゃき主婦を元気いっぱいに演じながら、作品全体を引っ張っていってくださっていたと思います。声がきれい。
 藤原啓児さん。東京で作曲家デビューした、妹の元・夫役。StudioLife公演でもすごく優しい演技をされているのですが、ここでもその優しさならではの滑稽さ・情けなさを楽しませてくださいました。

 まぼろしチャンネル内に「まぼろしの万博」ページがありました。

脚本:中島淳彦 演出:黒岩亮
出演:青山勝 辻勝八 藤原啓児 海堂亙 前田こうしん 東海林寿剛 照屋実 蒲田哲 田子裕史 本間剛 かんのひとみ 江間直子 大西多摩恵 湯浅実 
美術プラン:五郷順治 照明:大澤薫 舞台監督:尾花真 演出助手:齋藤理恵子 舞台監督助手:佐々木麻里 宣伝美術:いちのへ宏彰 美術:C-COM 制作:ジェイ・クリップ
劇団道学先生WEB:http://www.fan.hi-ho.ne.jp/doogaku/

Posted by shinobu at 2004年08月01日 20:07 | TrackBack (1)