REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2004年09月29日

ホリプロ・テレビ朝日・朝日新聞社・TOKYO FM『デフ・ウェスト・シアター「ミュージカル ビッグ・リバー」』09/28-10/24青山劇場

 正式タイトルは“BIG RIVER THE ADVENTURES OF Huckleberry Finn”です。マーク・トウェイン原作の「ハックルベリー・フィンの冒険」をもとにしたミュージカルで、舞台版オリジナルは1985年に発表され、トニー賞を受賞しています。1988年には真田広之さんも出演されているんですね。知らなかった。
 興奮冷めやらぬ初日の夜が明けて、メルマガ号外(2004/09/29)を出しました!

 ディスカウント・チケット情報はこちらへ!

 オープニングで、マーク・トウェイン役のダニエル・ジェンキンズさん(この方が主役のハックルベリー・フィンの声も担当します)が登場して話し始めた段階で、涙が出そうになりました。すっごく不思議な感覚でしたね・・・たぶん何かがすんなりと心に、体に沁み込んだのです。まだお話も始まっていないし歌さえ歌われていないのに泣くなんて、いくら私でもありえない(笑)。きっと今までにあまり感じたことのない何かだったと思います。

 デフ・ウェスト・シアターの「デフ」は英語でdeaf、つまり聾者(ろうしゃ。耳の聞こえない方)という意味です。聾者の俳優さんは声を出さずにアメリカ式手話(American Sign Language)で語り、聴者(耳の聞こえる健常者)の俳優さんが聾者の俳優さんの裏、または横でセリフをしゃべったり歌ったりします。

 大人数でそろって手話をするのはとてもきれいでした。アメリカ式手話がいわばダンスの振付になっているのですね。これがこの作品の大きな特徴であり、私が何とも表現しがたい感覚に襲われた原因だと思います。普通の振付には感情や意味が付加されますが、手話の場合はさらにその上に「言葉」が追加されます。その「言葉」は歌声でありながら、同時に身体でもあるのです。ミュージカルの要素がひとつ増えたような感覚といえば良いでしょうか。

 《ここからネタバレします。この下の段落です。》

 ラスト近くの大合唱の中、あるひと時だけ音楽と歌が消える瞬間があります。劇場全体がシーンと静まりかえる中、聾者の方々は変わらず全身全霊で手話をします。そこには「あなた(観客)に、伝えたい」という心がありました。舞台上にいる俳優さんたちから、全力投球の無償の愛がゴーっ!と(無)音をたてて、私のところまで一目散に飛んできてくれたように感じました。またもや涙がボロボロです。こんなに安らかな気持ちになって、ありのままの私でいられる青山劇場は初めてでした。

 手話の話ばかり書きましたが、音楽も歌も素晴らしかったんですよ。明るいアメリカン・カントリー・ミュージックにソウルフルな黒人のゴスペルが合わさり、思わず顔がほころんでしまうような優しさと、体にじ~んとくる力強さがありました。生演奏も軽快ですごく楽しかったです。舞台上の俳優さんたちとアイコンタクトで息を合わせているのを見るのも嬉しくなります。

 ストーリーは、黒人奴隷売買をしていた時代のアメリカの南部が舞台ですので、つらいエピソードも有るのですが、決して重すぎたり嫌みにはなったりせずに、一つ一つ危険を乗り越えていく少年の冒険物語の形を守りました。私が世界名作アニメ劇場「トム・ソーヤの冒険」を観ていた頃に想像していた、アメリカの良い部分が前面に出ていた感じです。

 装置は東京ディズニーランドの「くまのプーさんのハニーハント」に似ていました。舞台上に等身大の大きな本があり、そびえているページが開いたり、移動したりして場面転換します。マーク・トウェインの小説を旅しながら、目の前にいる聾者の聞こえない歌声に心を振るわせました。

 演出は普通のミュージカルらしいもので、「今から歌うよ~っ」という掛け声が聞こえてきそうなぐらいあからさまなタイミングで歌い始めますし、決してクールだとは言えないのですが、かえって技巧に走らずに自然に歌いあげるスタイルが、どんどんと感動を呼びます。かっこつけてないんですよね。楽しんでもらいたい、分かち合いたいと思ってらっしゃるのが伝わってきます。

 初日ということで豪華絢爛な客席でした。秋篠宮紀子様がいらしていたのが一番の目玉でしたね。青いスーツが美しかった。なんと紀子様はアメリカ式手話がおできになるそうなんです。素晴らしい!!終演後、あまりに感動されて、すぐにはお席をお立ちにならなかったとか。
 ホリプロ主催公演ということで女優の石原さとみさんもチラリ。思ったよりも小さい方で、めちゃくちゃキュートでした。下くちびるが分厚いのが可愛らしかったです。

初日が開けてすぐトラックバック等を頂きました。
 → クワストさんの「ビッグ・リバー」応援サイト
 → インターミッション~ 幕間のおしゃべり~「祝:東京公演初日!!」
 → U.Kaye Presents ニューヨークへ行きたいっ!「ビッグ・リバー絶賛公演中!」

レビューもあがってきています(2004/10/04)
 → 藤田一樹の観劇レポート

観に行くことに決めた方も!
 → stage note archives [雑談]今月の予定
   ユリイカ!のぴーとさんのご予定です。

演出・振付:ジェフ・カルフーン 音楽監督・指揮:スティーブン・ランドー 音楽・作詞:ロジャー・ミラー 脚本:ウィリアム・ホープトマン 原作:マーク・トウェイン
出演:タイロン・ジョルダーノ(ハック)、ダニエル・ジェンキンズ(マーク・トウェイン)、マイケル・マッケロイ(黒人奴隷のジム)、他
招聘・制作:ホリプロ
『ビッグ・リバー』公式:http://www.big-river.jp/

Posted by shinobu at 2004年09月29日 02:04 | TrackBack (3)