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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年04月06日

劇団かしこい僕達『Fの感覚6 AREA83(はちみつ)』3/31-4/4ウエストエンドスタジオ

 “誰もが三十歳で魚になる魚楠町”という架空の町を舞台にしたシリーズ第6作目。私は初見です。
 初めて観ても全く問題なかった(内輪ウケがない)のがまず素晴らしいと思います。

 魚楠町に住む人々は誰もが30歳になると突然に魚に変化する。さばの子はさば、フナの子はフナに。しかし、違う種類の魚との混血人間は分類不可能で不安定な種の魚になってしまうため、それを防ぐ「血統管理」が施行されることになった。そこで起こる前代未聞の魚食事件。町から排除されようとしている83番目の魚(分類不可能な例外種)の仕業だとみて捜索が始まった・・・。

 ファンタジックなチラシのビジュアルに惹かれていたので、舞台美術が普通の現代劇の様だったのは意外でした。これでプレステのロールプレイングゲームに出て来そうな町が表現できるのかしら?と思ったのですが、そんな心配は無用でした。
 登場人物一人ひとりの気持ちがしっかりと脚本に込められていて、架空の町の風景が嘘っぽくなく、本当にそういう町があるかのようにどんどん入り込んで行けました。

 新劇っぽい演技というか、個人的な思い入れに偏った演技をされる役者さんが多かったため途中で眠くなったりもしましたが、ラストは一体どうなるんだろう!?とわくわくハラハラして最後まで楽しませていただきました。

 “fish is a food”というキャッチフレーズが何度も出てくるのはちょっとクドイと思いました。登場人物のバックグラウンドがとてもよく書けている脚本だから、セリフや演技による心情表現だけでかなり面白いと思います。

 ブラックライトが当たると壁に大きな魚の骨がたくさん現れるんは象徴的で、とてもきれいでした。

 新谷摩乃さん(Dotoo!) 。妹のために命をかけて魚狩り(?)をする姉役。ダントツで演技が巧かったと思います。本当にそこに存在する、悲しい人物でした。
 内海詩野さん(壺会)。「血統管理」を進める役人役。クールでワルい役人をきりりと演じてくださり、彼女が出てくると舞台が引き締まりました。足がきれい。

作・演出:さわまさし
出演:ふしみあきこ/泉 光典/井上カオリ/内海詩野(壺会)/斎藤剛/新谷摩乃(Dotoo!)/高屋七海/寺谷盾一 (スシドラゴン)/冨岡奈央子 / 福嶌 徹/村山たか緒/さわまさし
舞台監督:吉田慎一(MDC) 音響:田上篤志(atSound) 照明:吉川貴昌 舞台美術:有賀千鶴 衣装:フジタマサエ。 宣伝美術:サワダミユキ 受付:明度屋 制作:劇団かしこい僕達
劇団かしこい僕達:http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Stage/8789/

Posted by shinobu at 15:21

Ele-c@『Q.E.D.2004』4/1-6王子小劇場

 Ele-c@(エレカ)はモリタユウイチさんが脚本・演出・作曲など全体をプロデュースしている劇団です。
 特徴は舞台上で生演奏があること。モリタさんご自身がキーボードやギターを演奏しつつ演技もされるのは本当に独特だと思います。

 今公演は『Q.E.D.(キュー・イー・ディー)』の再々演だそうで、どうやらエレカの代表作なのでしょうね。パルテノン多摩演劇フェスティバルでも続いてこの作品を上演されます。

 山奥の別荘で音楽家が死んだ。第一発見者の妻から私立探偵に依頼が来る。「絶対に自殺じゃないんです。犯人を捜してください。」2組の私立探偵と警察官らが現場に向かうが、なぜかその別荘に閉じ込められてしまい・・・。

 演技のうまい役者さんとおぼつかない役者さんの差が激しくてちょっと感情移入しづらかったです。でも物語の謎があばかれていくセリフの掛け合いのシーンはどんどん引き込まれました。

 いつもの通り小型テレビがたくさん仕込まれていて、そこにCG映像が流れます。紗幕と舞台奥の幕にも映像が映るのですが、色が薄いし客席に近すぎて見えづらかったので、ずっとテレビの方を見ていました。オープニングの殺人現場シーンと重なってタイトルの上に血しぶきがつく映像が良かった。
 クライマックスでモリタさん(殺された音楽家役)のキーボードの演奏が激しく繰り返されました。電子音なんですがやっぱり生演奏はいいですね。
 急勾配の八百屋舞台でしたが、全てはラスト近くのあの床から差し込む照明のためでしょう。きれいだしかっこ良かったです。

 客席参加型クイズのような催しがありましたが、1度目は何のことだか全くわからず。2度目でやっとわかりました。ステージによってネタが変わるわけですね。私が見たのは金崎敬江さんの今どきの女子高生キャラと、本郷小次郎さんの“複数じゃないと萌えないの”キャラでした。もうちょっと余裕があると観客も参加しやすいんですけどね。

 本郷小次郎さん(ヰタ・マキ)。ベストを着た私立探偵役。濃いキャラをさらりと本気でやっちゃってくださるところがいつも楽しみです。今回もしっかりスター立ちで面白かった。演技も安心です。 
 金崎敬江さん(bird's-eye view)。頭のキレるメガネの探偵助手役。抑えた演技で美しい立ち居振る舞い。きれいです。衣装も一番様になっていました。

作・演出・テーマMUSIC:モリタユウイチ
出演:本郷小次郎(ヰタ・マキ) 森律子(Ele-C@) 代田正彦(北区つかこうへい劇団) 土屋美穂子(Attic theater)  laila.g.g*王子公演 ハセガワアユム(caprico)*入間・多摩公演 金崎敬江(bird's-eye view) 森田祐一(Ele-C@)
舞台監督:谷澤拓己 舞台美術:松本謙一郎×突貫屋 音響:一之瀬卓 照明:NORI(Media Youth)×佐藤威文 衣装:キタサコ製作所 映像ディレクション:かとうよういち(O-frame) CG:チェキラ(FITVIDEO) 宣伝デザイン:鈴木基文(Trouble and Tea DESIGN) 特設WEBサイト:田中秀吾 制作協力:TWIN-BEAT 制作助手:華王子 
エレカ:http://www.eleca.mu/

Posted by shinobu at 11:49