REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2004年07月23日

ホリプロ・テレビ東京・朝日新聞社『PLAY WITHOUT WORDS』06/25-07/25シアターコクーン

 タイトルの意味は『台詞(セリフ)のない芝居』です。そうなんです、言葉を話さないで表現する演劇なんです。
 公式サイトにあるように“過去に来日したマシュー・ボーンの作品の中でも、最もセクシーでスタイリッシュな作品”でした。

 ダンスやバレエだと信じて観たら物足りない内容かもしれませんので、そういう先入観をゼロにして観るのが一番ですよね。でも、もちろんダンスとしても非常に高度で楽しめる作品だと私は思います。

 サイレント映画のようなレトロな味わいを持ちつつ、現代的な刺激のある演出で、舞台全体が常に大きく脈打っている生き物のようでした。食い入るように見つめつづけた2時間でした。

 ありそうで、なかったんだな~・・・というのが第一の感想です。セリフなしで、美術、装置、音楽、衣装、そして俳優の身体でストーリーを表現することって、劇中劇や道化の寸劇、コント等ではよく見かけましたが、それ自体を表現方法(売り)とした作品はきっとなかったんですね。1人の登場人物を2~3人で演じることも決して今までになかったわけではないのですが、それを主軸に持ってきて完成させているのが素晴らしいと思います。また、俳優ではなくダンサーである出演者の演技の素晴らしさも特筆すべきことだと思います。「演技」というものについてもう一度考える機会になりますよね。果たして「振付」と何が違うのか。この作品では、こういった新しい手法による効果、ビジュアル、雰囲気を味わうことが楽しいのだと思います。

 ちょっぴり告白します。つねづね感じていたんですよね、バレエやダンスの衣装って体のラインを露骨に強調していて、まるで裸みたいだよ!って(笑)。バレエのチュチュなんて女の子のお尻が丸見えですし、男性はパッツンパッツンのタイツなんですから。でも、それを「エッチだな~」って思っちゃいけないと思っていました。「バレエは歴史と伝統のある芸術なんだから、そんな想像は不謹慎なんだ」って。でも、それをマシュー・ボーンさんが取っ払ってくれました。やっぱりエッチなもんはエッチなんですよっ(笑)!そして、美しいものは美しいのです。ダンサーの鍛えられた体は観ているだけで目頭が熱くなるほど。女性の細い足首からふくらはぎ、もも、お尻へのラインは女の私が観ていてもどっきりするほどセクシーです。

 見所はやっぱりチラシのメインビジュアルにもなっている、アンソニーと女中(メイドのシーラ)の情事のシーンですよね~。あれは特に凝視しちゃいました(笑)。まず、女中が主人を誘惑するっていうのが王道ですよね。目下の女が目上の男をモノにするっていうのがそそるんです。黒の下着の上にV襟のざっくりとしたニットだけを着ている女中に、パジャマ姿のアンソニーがメロメロになっていくんですが、それって裸の上に男物のパジャマの上着だけを着ているグラビアアイドルと同じ?!いやはや、チラリズムの誘惑や悪女の魅力って世界共通なんですね~。私もそれにすっかりハマっりました(笑)。

 マシュー・ボーンさんの作品だと『Nutcracker!』や『SWAN LAKE』の時もそうでしたが、衣装がすごくきれいです。1960年代のイギリスのスタイルだそうですが、アンソニーのフィアンセ・グレンダの着ているスーツが素晴らしかった。生地の質も良いし・・・うっとりです。

 2つのドアと2つの階段が組み合わさっていて、結果的にに廊下やバスルーム等も一体化している回転式の装置は、ものすごくシンプルで機能的でドラマティックでした。こういうのを見せられると参っちゃいます。マシューさんのセンスに圧倒されて何も言えません。すごい。

 『SWAN LAKE』はオーチャードホールでしたが、この作品はシアターコクーンで上演されてるのがすごく親切だと思います。バレエじゃなくてPLAY(演劇)なので、小さな劇場じゃないとね♪

 2002年の『SWAN LAKE』で主役(トリプル・キャスト)の白鳥を演じられた首藤康之さんが、公式サイトにコメントを寄せていらっしゃいます。実は私の感想はこの首藤さんのコメントとびっくりするほど似ています。

演出・振付:マシュー・ボーン
PLAY WITHOUT WORDS :http://www.pww.jp/

Posted by shinobu at 14:53