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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年08月11日

テレビ東京・アートスフィア・ポイント東京『LIVE ACT himself』08/10-18アートスフィア

 帝劇『モーツァルト!』で一躍スターになられた中川晃教さん主演の音楽劇です。ミュージカルとコンサートの間ぐらいですね。中川さん(愛称:アッキー)の最新アルバム「himself」の楽曲を全編で使っています。

 本編はシェイクスピアの『ハムレット』を元に独自の解釈と見せ方で、中川さんの歌を聞かせることをメインに作られたもので、私にはちょっと受け入れづらいものでしたが、カーテンコールで大盛り上がり!どうやら急遽やることに決まったのかも??即興でダンサーが踊りまくり、中川さんシャウトしまくりで、ファンがキャーッ!!って悲鳴を上げるほどのサービスでした。私もかな~り楽しかったです。やっぱり彼の声量はすごい。

 本日初日でこれからの公演は空席アリだそうです。中川さんがひとこと、おちゃめに宣伝されていました。

 『ハムレット』の原作を大胆に省略して、新しい解釈もつけて、しかも全く関係ない音楽を間にじゃんじゃん挟んでいきますので、ハムレット!ギルデンスターン!とか原作どおりの名前で呼び合っているのが不思議になるぐらいミスマッチな感覚でした。途中休憩で帰ろうかな~と思ったんですが(苦笑)、中川さんの歌の魅力に負けました。ストーリーなんてどうでもいい!彼のパワフル&ソウルフル声が聞けるなら♪・・ってことです。で、最後まで残っていて本当に良かった!ライブが最高でした。

 さて内容について。まず幸せだった頃のハムレットを描くことから始まるのが最も原作からかけ離れた脚色でした。叔父のクローディアスとハムレットがすんごく仲良しで、ギルデンスターンとローゼンクランツがクローディアスに呼ばれる前から親友としてハムレットのそばにいて、オフィーリアと超ラブラブで幸せの絶頂にいて・・・そして、父王は狩りの最中にピストルで殺されてしまうという感じ。オフィーリアにモーションかける男の子たち、という構図はめちゃくちゃノリが良くって可愛かったです。

 オフィーリアが自殺するシーンは、ナイフで手首を切ってそのままバスルームで死んだことになっていました。気が狂うのも「知らない女性が見える!」と幻想を見てしまう風にしていたのが面白かったです。オフィーリアに自殺をそそのかす「女」が、黒装束でかっこよく踊りながら彼女を陥れていくシーンはきれいでした。

 演出はクレッグ・デールさん。ロビーでお見かけしましたが上品な白人男性でした。やっぱり色使いとか見せ場の持って来かたとか、ちょっと変わってると思いました。おおざっぱなんだけど盛り上がりは逃さない、というか。
 振付(MAYUMI)がとても良かったです。ダンスシーンが始まる度に嬉しかった。最近こういう型の決まったダンスで見とれることなかったので。

 歌は全て中川さんのアルバムから使われています。音域が広いしリズムが普通じゃないですので、ミュージカル用には向いてないですよね。歌う人によってはものすごいミスマッチで笑ってしまったりもしました。
 例えば、瑳川哲朗さんが英語で“Good bye for the loneliness...”などと、たどたどしく歌うのは、申し訳ないですが笑えました(笑)。それに『ハムレット』自体はきっと何度も演じたことがおありだと思うんですよね。戯曲がかなり省略&脚色されて、あきらかに違う解釈の平易なセリフをしゃべってらっしゃるのを見ると、それもまた笑えちゃうんです。クローディアス役なんですが、オフィーリアの遺体を墓穴に埋めている最中にフェンシングの試合の話をしちゃうし、剣のきっさきを尖らせておくだけでなく、毒を塗ることも彼が提案します(原作ではレアティーズが提案する)。

 中川さん、ピアノで弾き語りもされましたね。明らかにそのためだけにピアノが一台だけ舞台上に置かれていたのはちょっと苦笑ものでしたが、まあ中川さんのファンの集いのような公演ですし(私もそうですし)良いと思います。隣りに座ってらした50代ぐらいの奥様が立てノリで「アッキー!!」って叫んでらっしゃってびっくり。帝国劇場に年10回とか通ってらっしゃる方みたい。そっか「モーツァルト!」からのファンなんですね。

 新納慎也さん(元NIRO)。背高い!足長い!声きれい!ソウルフルに歌ってらっしゃいました。かっこいいっす。お色気もあるけど、私は基本的に笑い担当の新納さんが好きです。(演劇実験室◎万有引力『さよならの城』の時みたいな)
 中川賢さん。ホレーシオ役。踊りがめちゃくちゃ上手くてびっくり!バレエをされているようですね。ジャンプが見事でした。
 速水けんたろうさん。ポローニアス役。元・NHKの歌のお兄さんですよね。けっこう声量がおありだったので聞き応えがありました。

 開演前でも幕間でも物販スペースは閑散としていたのですが、あのアンコールのスペシャル・ライブが終わった後は黒山の人だかりでした。パンフレットはもちろんのこと、アルバム「himself」も売れていました。私ももう少しでダマされるところだった・・・あ、いえ、すみません!!・・・だってアッキーは絶対ライブ(生)がいいはずなんだもの!録音は遠慮しまっす(笑)。

原作:W.シェイクスピア「ハムレット」より  演出/グレッグ・デール 音楽/中川晃教 映像/奥秀太郎
出演:中川晃教 吉野圭吾 新納慎也 安藤希 速水けんたろう 中川賢 小野妃香里 香坂千晶 瑳川哲朗 大橋てつじ 後藤大 KAJI 坂元宏旬
音楽監督:久保こーじ 映像・美術:奥秀太郎 メイク:柳延人 衣裳:久保薗美鈴 照明:成瀬一裕 効果:増原健市 振付:MAYUMI 歌唱指導:島田久子 演出助手:石丸さち子 舞台監督:高橋良直 宣伝写真:大森克己 宣伝美術:采澤聰 プロデューサー:高屋潤子 企画製作:ポイント東京・スフィア 企画協力:ミュージックパーク
《東京の前に地方公演→仙台、大阪》
中川晃教オフィシャルサイト:http://www.akinori.jp/

Posted by shinobu at 01:19 | TrackBack