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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年10月30日

燐光群アトリエの会『ときはなたれて』10/01-11/02梅ヶ丘BOX

 無実なのに死刑囚となって何年間も投獄生活を強いられた人々が独白していく形式のお芝居で、ほぼ実話です。
 公演サイトより引用します↓
 “冤罪によって死刑判決を受け、苦難の末に解放された「元死刑囚」たち……。”“かつて死刑囚として刑務所に収容されていた経験をもつ40人の人々と、その家族へのインタビューをもとに、幾度かのリーディングを経て、練り上げられた。”
 こんなに暗そうで、怖そうで、つらそうなもの、なんで観に行くんだろう!?って思います。でも、観ずには居られないんです。それが私にとっての燐光群です。

 つらかった・・・途中で立ち去りたい、この場所から逃げ出したいと思いました。でも出入り口がステージで完全に塞がれているので動けません。まるで私が牢獄に居るみたい(苦笑)。
 私には座席が狭すぎたんです。そして、役者さんとの距離が近すぎました。

 梅が丘BOXはただでさえ狭いのですが、いつもより舞台を大きく、客席スペースを小さく作っていたと思います(『』と同じだったかもしれませんが)。観客一人一人のためのスペースが異常に狭いんです。金曜日の夜の疲れきった体で、こんなに重圧のあるお芝居を、ぎゅうぎゅう詰めの席で見るなんて・・・拷問でした。こんなことからレビューを書き始めたくないんですが、それを言わなきゃ始まらないんです。ごめんなさい。

 こんなに狭い劇場なのに大きな声を張り上げて熱い演技をされる方がほとんどでした(大西孝洋さんや猪熊恒和さんの声は気になりませんでした)。紀伊国屋サザンシアターじゃないんだから、違う作り方でいいんじゃないでしょうか。私にはその堅さが傲慢に感じました。
 アメリカの犯罪についての記述が多い脚本なので、汚い言葉がよく出てきます。決して品の良くないセリフを、ものすごく大声で、がさつにしゃべる女優さんがいて、その人が語るところでは耳をふさいでしまいました。

 坂手さんは今や日本を代表する脚本・演出家でいらっしゃいますから、どんどんと有名な俳優さんとお仕事をされています。だから“坂手洋二”というと豪華キャストのイメージもあるんです。アトリエの会は劇団員の方が出演されますので、そういう意味での華やかさはありません。今回は下総源太朗さんが『新・明暗』出演中、宮島千栄さんが『二人の女兵士の物語』稽古中・・・このお二人が出ていないのは痛かった。

 “『ララミー・プロジェクト』『CVR チャーリー・ビクター・ロミオ』に続いて、燐光群が上演する、アメリカ演劇最新作。”という文章をちゃんと読んでおけば良かったです・・・。私、『ララミー・・・』も『CVR』もすごく苦手だったんですよ。そして今回も然りでした。あの、アメリカ人っぽい、人になれなれしく話しかけるスタイルなんですよね。独白というよりは、どんどんと観客に話を投げかけてきます。「俺は、ケリー・マックス・クック!!」などと声を張り上げてガッチガチに言われちゃうと、めちゃくちゃ引きます。アメリカ人がやるなら自然だと思いますが、日本人ですからね、なにかしら工夫(加工)が必要なんじゃないでしょうか。

 脚本は、本当にこういう経験をされた方40人にインタビューをして、その内の6つを元に構成されたものです。ジェシカ・ブランクさんとエリック・ジェンセンさんに心から感謝します。事実を知ることが出来るのは幸せなことですし、必要なことだと思います。

作=ジェシカ・ブランク&エリック・ジェンセン by Jessica Blank and Erik Jensen
訳=常田景子 演出=坂手洋二
出演:中山マリ 猪熊恒和 大西孝洋 江口敦子 内海常葉 瀧口修央 裴優宇 久保島隆 杉山英之 小金井篤 樋尾麻衣子 工藤清美 亀ヶ谷美也子
照明=竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 音響=島猛(ステージオフィス) 衣裳=前田文子 美術=じょん万次郎 舞台監督=堀井俊和 演出助手=吉田智久 文芸助手=久保志乃ぶ 圓岡めぐみ 清水弥生 イラスト=山田賢一 宣伝意匠=高崎勝也 Company Staff=川中健次郎 鴨川てんし 下総源太朗 宮島千栄 樋尾麻衣子 宇賀神範子 向井孝成 桐畑理佳 工藤清美 亀ヶ谷美也子 塚田菜津子 制作=古元道広 國光千世
燐光群内:http://www.alles.or.jp/~rinkogun/tokihanatarete.html

Posted by shinobu at 00:57 | TrackBack