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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年05月28日

tpt『nine THE MUSICAL』05/27-06/12アートスフィア

 トニー賞も受賞しているデヴィッド・ルヴォーさん演出のブロードウェイ・ミュージカル『ナイン』日本版の再演です。
 熱気ムンムンの東京初日を観て参りました。予想通り、初演よりもずっとずっと良かった!アーティスティック、スタイリッシュ、セクシー、ゴージャス、な、完全に大人向けのミュージカルです。デートにぴったり♪ 6/12(日)まで!

 ほぼ日刊イトイ新聞の『ナイン』応援サイトに、作品についての詳しい解説や演出家へのインタビュー、キャスト紹介、そして舞台写真などが溢れんばかりに公開されています。これから観に行かれる方は、“『ナイン』勝手に観劇ガイド!”を読んでおけば、かなりスムーズに『ナイン』の世界に入っていけると思います。

 ストーリーや舞台の概要は初演のレビューをご覧ください。

 宣伝がだいぶん行き渡っていたからでしょうか、観客も一緒に『ナイン』を盛り上げようとしている雰囲気が劇場に満ちていました。嬉しかったな~。やっぱミュージカルはこうでなくっちゃ!

 初演との一番大きな違いは、16人の美女に囲まれる主人公グイード・コンティーニ役が、別所哲也さんになったことです。わがままで嘘つきで夢想家で、女に目がない甘え上手の色男。女に、自分だけを必要として、愛してくれていると思わせるカサノバ。それがこのミュージカルの主人公の、世界的に有名なイタリア人映画監督グイード・コンティーニです。別所さんは甘いマスクで背が高くて体格もいいし、女性をエスコートする姿がすっごく板についていて、グイード役にぴったりでした。

 歌も音楽も初演より確実にグレードアップしています。歌は、グイードの愛人カルラ役の池田有希子さん、映画プロデューサー役の大浦みずきさん、グイードのミューズである女優クラウディア役の純名りささん、9歳のグイードに愛を教えた海辺の女役の田中利花さん、グイードの母親役の花山佳子さんが良かったです。当然のことながらコーラスは全体的にレベルアップしています。
 初演同様、やっぱりカルラ役の池田有希子さんは観ないとダメでしょう。必見です、必見!

 初演では、目に入ってくる情報(美術、衣裳、美しい女たち)ばかりが印象に残っていましたが、今回はストーリーもじっくり味合うことができました。パーッと明るく描いていますが、実はすっごく退廃的な世界なんですね。

 ここからネタバレします。

 2幕がはじまってからすぐのグイードとクラウディアのシーンで、クラウディアの気持ちが痛いほど伝わってきました。彼女は理性的に自分の人生について考え、彼から去っていきます。だけど彼女もまた妻のルイザと同様に、グイードを心から愛していているんです。ルヴォーさんの「『ナイン』では、「ロマンティックなのは女性 男性は現実的」っていう固定観念が、実は逆だということを証明してる。」というお言葉に納得です(引用元:ほぼ日「ナイン」応援サイト)。

 グイードは9歳の時に規則が厳しい教会学校に通っていながら、海辺の女に人間の愛(性)の真実を教えられてしまい、清らかなものと汚れたものが混ざり合う矛盾に包まれて育ったんですね。海辺の女役の田中利花さんが踊りながら堂々と歌う“Ti Voglio Bene/Be Italian”が甘くて切なかった。

 映画のアイデアが全然浮かばなくなったグイードは、とうとう自分のあるがままの生活を映画に撮り始めてしまい、夢と現実が完全にひとつになってしまいます。自分のことを映画に撮られ、耐えられなくなった妻のルイザが「やめて!」と言っても、愛人のカルラが泣き続けても、グイードは「(カメラを)まわせ!」と言って撮影を続けます。このシーンは・・・悲しかったけど、すごく共感もしました。創作する人間は、自分の人生も素材(ネタ)にしてしまう、それがいかにつらい、残酷なことか、自分の大切な人たちを傷つけることかがわかっていても、止められないんですよね。

 再演を観てわかったことは、グイドは最後に死んだんだってことです(あ、わかってなかったのがヘン??)。現実世界に生きるドライな女たちは次々とグイードから去っていき、グイードにそれを引き止める手立てはなく、彼はただ一人、取り残されます。しかし彼の生涯を彩るのはやはり美しい女たち。彼の人生の最後には天から螺旋階段をつたって女神達がグイードのもとへと舞い降りてきて、エンディングです。舞台下手奥の天へと向かって伸びる螺旋階段は、夢と現実との架け橋でもあり、天国への道でもあり、DNAにも見えますね。グイードのDNAには無数の女たちが刻まれている(笑)。

 カーテンコールは3回ありましたね。2度目はデヴィッド・ルヴォーさんも登場してスタンディング・オベーションでした。私も観終わった時はかなりの満足感でした。それでもメルマガ号外にあと一歩いたらなかったのは、歌唱力です。本場のブロードウェイ・ミュージカルの歌手にはかなわないと思いました。そもそもこの音楽に日本語の歌詞はちょっと厳しいですしね。

 子役の男の子は、たぶん初演時に私が観たのとは違う男の子でした。となると向笠揚一郎くんですね。残念ながら動きも歌もおぼつかなかったです。樋口真くんの回がお薦めです。

≪シアターガイドより≫
 tpt『nine THE MUSICAL』制作発表
 『ナイン THE MUSICAL』が六本木ヒルズに登場
 tpt『ナイン THE MUSICAL』公開舞台稽古

≪大阪、東京≫
出演:別所哲也(グイード) 池田有希子 高橋桂 純名りさ 大浦みずき 花山佳子 田中利花 鳥居ひとみ 井料瑠美 剱持たまき 宮菜穂子 江川真理子 家塚敦子 福麻むつ美 高塚いおり 岡田静 山田ぶんぶん
リトルグイト(ダブルキャスト): 樋口真 向笠揚一郎
脚本:アーサー・コピット 作詞・作曲:モーリー・イェストン 翻案(イタリア語から):マリオ・フラッティ 翻訳・訳詞:青井陽治 演出:デヴィッド・ルヴォー 振付:ジョナサン・バトレル 振付:グスタヴォ・ザジャク 美術:スコット・パスク 照明:沢田祐二 衣裳:ヴィッキー・モーティマー ヘア&メイクアップ:鎌田直樹 音響:山本浩一 音楽監督:深沢桂子 音楽スーパーバイザー:樋口康雄 装置スーパーバイザー:礒沼陽子 衣裳スーパーバイザー:増田恵美 舞台監督:北條孝/有馬則純
S席:12,000円 A席:8,000円 B席:5,000円 ナインシート(1階前方両サイド):8,000円
tpt:http://www.tpt.co.jp/
イープラス特集:http://eee.eplus.co.jp/s/nine/
天王洲アイル:http://www.tennoz.co.jp/sphere/pickup/nine/f_topic.html
★「ほぼ日」応援サイト:http://www.1101.com/nine/index.html

Posted by shinobu at 2005年05月28日 00:38 | TrackBack (0)