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2005年07月29日

アートネットワーク・ジャパン『夏休み親子で楽しむ「赤い鳥夕涼み会」』07/29目白庭園内 赤鳥庵

 目白庭園指定管理者である西武グループ環境パートナーズが主催する地域の子供向けの催し物です。Ort-d.dのメンバーが構成・演出・出演されるので観に行きました。
 目白庭園はJR目白駅から徒歩10分ほどの小さな日本庭園で、閑静な住宅街の中にぽつんとあります。赤鳥庵は池のほとりに建っている数奇屋建築の美しい日本家屋でした。(目白庭園についてはこちらこちらにも詳しいです。写真はこちらにも)

 涼しくなってきた夕ぐれ時に庭園を訪れ、石畳を少し登って赤鳥庵に足を踏み入れると、浴衣姿のお兄さん、お姉さんがにこやかに迎えてくれました。そして畳の匂いがぷ~ん。いっそう涼しい心地になりました。

 会場は真ん中の仕切りが取り払われた16畳(8畳間が2間)の和室で、座布団が沢山置かれています。部屋の真ん中、つまり客席と客席の間に通路スペースを設け、そこと和室のまわりの広縁が舞台になります。

 客席には3歳から5歳ぐらいの幼稚園児、もしくは小学校低学年の子供とその保護者が多く見受けられました。ピンクの浴衣を着た女の子や、ランニングシャツに半ズボンの男の子など、夏の装いの子供達はすごく元気。お芝居をずっと静かに観ていられるのかしら?と思ったのですが、心配する必要は全くなく、子供達はお話が始まるとちゃんと座布団に座って、最後までお行儀良く観劇していました。和室でシーンとなる瞬間って気持ちがいいです。


【第1部】レコードと朗読でつづるおはなし「注文の多い料理店」 ※こちらで全文読めます。

 登場するのは白いシャツに黒い吊りズボン姿の男2人と、紺色の浴衣を着た女3人、そして朗読をするお姉さん(女性はみなさん和服です)。男2人はもちろん原作に登場する猟師たちですが、女3人は“西洋料理店 山猫軒”の店員である山猫たちでした。にゃお~んと鳴いたりネコのような動きをしながら猟師たちを可愛く翻弄します。
 おどけた演技や踊りながらの合唱など、子供達を楽しませる要素も沢山ありましたが、声を荒げてセリフを言ったり、ちょっと怖いなと思わせる演出もあり、笑ったりドキっとしたり、よく知っているはずのお話なのにすっかり集中して最後まで拝見できました。

 「注文の多い料理店」は私も絵本で持っていまして、子供の頃から何度となく読んでいましたが、山猫たちはボスのために料理を用意しなければならなかったんですね。そういう上下関係に初めて気づきました。うーん深いわー。
 音楽はクラシックで、モーツァルトのオペラがかかった時は面白かったな~。

 10分間の休憩時間は子供達が舞台になった広縁を行ったりきたりして大はしゃぎ。お姉さんが演奏していた打楽器の周りにもたくさんの子供達が集まって仲良くおしゃべりしています。あぁなんて幸せな瞬間っ!


【第2部】どうぶつたちのうた と おはなし ~児童文学雑誌「赤い鳥」より

 少しライトアップされた池と緑をバックに、浴衣を着たお姉さんたちが明るく楽しく、そしてときどき恐ろしくお話してくれる動物のお話が3編。音楽も歌も満載。
 一つのお話が終わって次が始まるまでの、作品と作品をつなぐ演出がものすごく丁寧で、上手かったです。お話の終わりをきちんと作り、でも全体の空気は損なわずスムーズに、しかも「次が楽しみ!」と期待しちゃうような誘導なのです。和服のお姉さんたちが作り出す日本語空間にどっぷり浸かった1時間弱(45分ぐらい?)でした。
 出演者は皆さん和服ですが、かえる、がちょう、かに、ぞうなどの、布や色画用紙で作った被り物を被っているのが可愛らしくて可笑しいです。
 小さな電子ピアノを弾かれていたのは吉本菜穂子さん。打楽器は構成・演出の田丸暦さん。「あかいとり」などの童謡を歌ってらした女性は誰なのかしら。力強くて美しい歌声に聞き惚れました。


 「目白庭園のことを地域の皆様に知っていただくべく、楽しいお芝居をご用意いたしました」という主催者挨拶で始まったこの子供向けイベントは、終演後は微笑みがいっぱいでした。美しい目白庭園を見下ろす涼やかな和室で、和服のお姉さんたちが見せてくれた日本のお話は、子供も大人もきっと忘れない、夏休みの豊かな思い出になったことと思います。
 こういう作品が日本全国の公共施設で催されたら、日本人の日常の幸せが広がる気がします。この「赤い鳥夕涼み会」は去年から開かれており、次回は9月のお月見の頃を予定されているそうです。


『夏休み親子で楽しむ「赤い鳥夕涼み会」』
おじいちゃんおばあちゃん が こどもだったころ の うたとおはなし
第1部 レコードと朗読でつづるおはなし「注文の多い料理店」
出演=市川梢/大内米治/岡田宗介/小田さやか/杉村誠子/高橋琴美
作=宮沢賢治 演出=倉迫康史(Ort-d.d)
第2部 どうぶつたちのうた と おはなし~児童文学雑誌「赤い鳥」より
「がちょうのお誕生日」「かにの散髪屋さん」「ぞうの鼻はどうして長い?」(タイトルは私が勝手に創作)
構成・演出=田丸暦
出演=三橋麻子/鈴木陽代/吉本菜穂子/安本美華/土井都希和/佐藤浩子/清水さと
定員:60名 参加費:300円(ただし保護者一名につき小学生以下一人無料)
申込み・問合せ:〒171-0031豊島区目白3-20-18 目白庭園 TEL 5996-4810 FAX 5996-4886
企画・制作=NPO法人アートネットワーク・ジャパン 主催=目白庭園指定管理者(西武グループ環境パートナーズ)
Ort-d.d=http://ort.m78.com/

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Posted by shinobu at 2005年07月29日 23:00 | TrackBack (1)