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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年08月09日

ホリプロ『電車男』08/05-27パークタワーホール

 2チャンネルから書籍漫画(4種類あるようです)、映画TVドラマと話題爆発の『電車男』の舞台化。主役は武田真治さんです。
 もー・・・めっちゃくちゃ面白かったです!メルマガ号外を出しました。

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 私は『電車男』のことを口コミで知りました。まとめサイトを一晩かけてボロボロ泣きながら読了。映画はすっごく楽しみつつも少し不満が残り、TVドラマは4話(だったかな?)だけ見て途中で挫折。そしてちょっぴり期待しながらの舞台版でした。
 何も考えずに観に行って、その演出方法にまず衝撃でした。会場は爆笑の渦、そして、涙ぁ~・・・。

 ここからネタバレします。※有名な作品ですのであらすじは省きますね。

 舞台の上手と下手の両方に小さな部屋が積み重なった3階建てのタワーがあります。下手の1階には河原雅彦さん(イケメン・サラリーマン)、2階は脇知弘さん(おデブなアニメ・ヲタク)、3階は佐伯新さん(映画マニア)。上手の1階は鈴木一真さん(30代の不潔なひきこもり)、2階はモロ師岡さん(50代のセックスレスおじさん)、3階は千代将太さん(引きこもり中学生)。この6人がネットの住人(毒男)で、電車男(武田真治)を応援します。

 舞台中央の客席正面には大きなスクリーンがありました。これこそがこのお芝居独特の演出で最も面白いポイントなのですが、ネットの住人たちのPCにカメラが取り付けられており、住人がPCに向かってセリフを言うと、その顔がドアップで中央の大スクリーンに映し出されるのです。しかもセリフ字幕入り!鈴木一真さんのセリフは特にアスキーアート入り(笑)♪ 演劇なんだけど、テレビの生放送みたいで、ネットのチャットみたい!(観客はROMオンリーですが)

 セリフを言う役者さんに合わせて画面がどんどん変わりますので、セリフの文字情報と一緒に次々に変わる顔、顔、顔!すごいスピードです。最初は慣れなくて不思議な感覚でした。演劇を観に来たのにずっとスクリーン映像を見ている私(笑)。だけど舞台上で人がしゃべっているのを認識しながら生(ライブ)の映像を見ているので、臨場感はすっごくあります。徐々に慣れてきたら、各部屋で暴れている(笑)役者さんを観察したり、アップの顔と体全体を見比べたりできるようになりました。毒男たちが部屋を飛び越えてやりとりすることもあり、お楽しみが盛りだくさん。

 エルメスとのデートシーンは、電車男が舞台上でデートの詳細を語るのと同時進行で、武田真治さんとエルメス(若い女性。顔は映りません)が実際に銀座や青山を歩いて撮影した映像が、コマ送り風に映し出されました。その時は雰囲気重視で字幕なし。そういえばオープニングは音楽に合わせて東京の風景写真がどんどんと映される、スピーディーであかぬけたものでした。あの時にさすが堤幸彦さん(+大根仁さん)の演出だなぁと思っていたんですよね。それはほんの序の口で本編はもっと凄かった(笑)。

 電車男が少しずつアニヲタから卒業していく様子を、この舞台では最重要ポイントとして演出していました。これがサイコー。客席で鼻をすする音がいっぱい聞こえました。もちろん私も泣いちゃったよ。
 エルメスがGWの海外旅行に行っている間、自分がやっていたのは同人イベント(コミケなど)に行ったことだけ。電車男はすっかり自信をなくし、「もうエルメスのことはあきらめる」と弱音を吐きます。そこで毒男たちから返ってきた言葉は↓ ※下記のセリフは完全に正確ではありません。

 「電車男。お前は怖いんだ。エルメスに振られるのが怖いんじゃない。変化するのが怖いんだ。変化は恐ろしい。でも、変化しないのはもっと恐ろしい。それは自分の周りにゆっくりと檻(おり)を作っていくことなんだ。ゆっくりだから怖くない。だけど、少しずつ奥へ奥へと入り込んでしまい、その檻に手を差し伸べてくれる人がいたとしても、その手を取ることができなくなる。もう檻の中から出られなくなる。」
 「変化する前のお前を作ったのはお前だ。お前は凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い!」

 これは映画では描かれていなかったんですよね。TVはどうなるのかな~。

 電車男がデートから帰ってくるのをPC前でじーっと待っている毒男達、一人一人の見せ場がきちんとありました。ネットの住人の姿をかなり入念に描いていたことで、『電車男』という成長物語の核となる部分を際立たせることができたのだと思います。脚本・演出は堤幸彦さん大根仁さん、三浦有為子さん(劇作家。「Jam Films」に脚本参加)の3人体制のようです。

 武田真治さんは、秋葉クンの時の演技がほんとに気持ち悪くて(笑)面白かったです。セリフをよく間違われていましたが別に問題なし。でも美男になってからは本物のイケメンになってしまって物足りなかったですね。そのためラストで物語がしょぼんとへこんでしまって残念。小ぎれいにまとめず、もうちょっとヲタクモードで盛り上げて欲しかったです。これが原因でメルマガ号外を出そうかどうか迷ったんですが、やっぱり演出と脚本に軍配ということで発行いたしました。

 河原雅彦さん演じるサラリーマンだけが毒男ではなく、自分より明らかにレベルが低い者が集まる“毒男スレ”を眺めることで、憂さ晴らしをしているROMオンリーなイケメン・キャラでした。彼が観客の心を代弁して絶妙なつっこみを入れてくれるのがものすごく気持ちいいです。アドリブもさすが。
 鈴木一真さん、モロ師岡さん、佐伯新さん、脇知弘さん、千代将太さん・・・・皆さん素晴らしかったです!

 あと、これは個人的つぶやきですが、エルメスのあのチョーカーをペアルック前提でプレゼントされたら・・・・私ならスッゴイ引いちゃう(冷汗)!あのペアルックはつらいよっ。

≪東京、大阪、名古屋、仙台、長崎、北九州≫
出演=武田真治/鈴木一真/モロ師岡/佐伯新/脇知弘/千代将太/河原雅彦
原作=中野独人『電車男』(新潮社刊) 脚本・演出=堤幸彦+大根仁+三浦有為子 美術=升平香織 照明=笠原俊幸 音響=長野朋美 衣裳=十川ヒロコ ヘアメイク=河村陽子 映像=大根仁 演出助手=西祐子 舞台監督補=榎太郎 舞台監督=加藤高 宣伝写真=宮沢行生 宣伝美術=真々田稔 宣伝美術コーディネート=中村英莉
¥6,500(全席指定・税込)
舞台公式=http://www.densha-otoko.jp/

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Posted by shinobu at 2005年08月09日 21:45 | TrackBack (0)