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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年08月31日

tpt『道成寺一幕』08/20-09/4ベニサン・ピット

 どんな演目であろうと絶対に観ることにしているtptの公演です。三島由紀夫の「近代能楽集」の中の「道成寺」を、ドイツ人のトーマス・オリヴァー・ニーハウスさんの演出で。公演詳細はこちら

 ニーハウスさんはtptで『時間ト部屋』も演出されています。役者さんもその時のメンバーが多いですね。う~ん、今回も奇抜な演出でした。

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 ≪あらすじ≫
 年代物の巨大な衣裳箪笥(今で言うなら持ち運び可能なウォーク・イン・クローゼット?)が競りにかけられている。大金持ちが集まり華やかにオークションが始まるが、「300万円!」などと声のあがる中、一人「3000円!」と法外な安値を叫ぶ少女(中嶋朋子)が現れる。清子と名乗るその少女は箪笥の由緒について語りだし・・・
 ≪ここまで≫

 美術はいつも通りうっとりさせてくれるクオリティーです。劇場は額縁形式で、上手から下手へと白木の廊下が通っているかような、間口が広い、細長いステージ。上部にステージと同じ長さの装飾つき天井板が吊り下がっているため、空間が余計に細長く見えます。ステージ板の前面の装飾を見ると、材質は分厚い大理石のよう。ステージは数本の黒い柱で支えられた台なので、黒びかりする地面から数十センチ浮かんでいるようにも見えます。

 ステージの背後中央に一本ある柱の奥には真っ黒な倉庫のような空間が広がっており、その上手奥コーナーには家具(おそらく椅子ばかり?)が山のように積み重ねられています。舞台中央から客席の中央へと垂直に、ステージの白と同じ色の通路が設けられており、客席のド真ん中までが演技スペースです。

 オープニングでファッション・ショーのように颯爽と登場した役者さんたち。衣裳の形はスーツや夜会服のような黒色のフォーマル風ですが、上から個性的な生地の白いガウンを羽織っています。ステージ中央で客席を向いてキメ笑顔しちゃうし、一体何が起こるんだろう!?とドキドキしました。

 ここからネタバレします。

 モデルのように美しいそれらの人々はオークションに招待された資産家たちでした。清子と骨董屋主人(塩野谷正幸)の2人語りのシーンになってからは、舞台上手奥の家具コーナーで2人を見守り続けます。ときどき会話中の人物になって現れたりします。
 清子と主人が「5万円!」「3000円」!と値段交渉しているシーンでは、見守る人々はまるで情事のあえぎ声のような息声を発しながら、表情はクールなまま、楽しげにお花見をしていました。桜=春=愛=情事=戦争=値段交渉、という式が浮かびました。めちゃくちゃ面白かったです。

 Club Silencioで書かれているとおり、私も清子役の中嶋朋子さんの演技がどうも受け付けづらかったです。お話の中、そして想像(夢)の中に入って行きたいのに、主役の彼女が現実世界の個人的感覚に浸っている様子で、私もベニサン・ピットの客席に座っている自分のままで居るしかありませんでした。でも、言葉がはっきりと伝わってきたので、お話の意味は非常にわかりやすかったです。
 他の役者さんはそれぞれの役になりきっており、その役の感情が表れていたように思います。それにしても皆さん(アンサンブル?の方々)、めちゃくちゃかっこ良かったなー・・・。最高に気取っていて、おしゃれで。こういうの、tptでしか観られないと思います。

 ≪あらすじ2≫
 巨大な衣裳箪笥の持ち主だったある富豪夫人は若い男と不倫をしていた。しかし嫉妬に狂った夫が箪笥の外側から銃を何発も打ち込み、中で情事を楽しんでいた夫人と若い男は多量の血を流しながら死に絶えた。
 その若い男というのが清子の元・恋人で、清子は愛する男の墓場となったその箪笥を手に入れるためにやってきたのだ。
 ≪ここまで≫

 衣裳箪笥という密室での禁断の情事、そして嫉妬から生じた血まみれの地獄。そんなインモラルでアングラな耽美的世界が、清子の語る言葉のみから想像できて非常に心地よかったです。クール&モダンで、いわば無機質な空間に居ながら、頭に浮かぶのは不実の熱愛とそれが招き入れた流血の惨劇。官能的です。

 死んでしまった恋人に自分の死(顔を硫酸で壊すこと)をもいとわないほどの執着心を持っていた清子は、箪笥の中の鏡に映った自分の顔を見つめて、「どんなに怒りや嫉妬、悲しみなどの感情にさいなまれ、苦しもうと、自分の顔を変えることはできない」という境地に達します。そして「自然と和解」した清子が執着から解き放たれるという結末に、納得はできました。でもあまりにすんなり過ぎたように思います。最後の音楽が軽すぎたんじゃないかしら。出演者全員がニコニコしているし、異様に素直な盛り上がりのハッピーエンドになっていて、腑に落ちなかったです。もしかすると私が見当違いしているのかも?

 溶ける氷、冬眠から覚める動物達、つぎつぎと土から顔を出す新芽、満開の桜、青い空(セリフではありません)。中嶋さんが萌える春をイメージさせる言葉をどんどんと発している間、新しい命が息苦しくなるほどに充満した空気を想像することができました。春は愛、愛は情事。そして咲く花、生まれる命。でもセリフから感じとったことなんですよね。本当のところはもっと他のことも伝えたかったんじゃないかなと思います。

作=三島由紀夫 演出=トーマス・オリヴァー・ニーハウス(Thomas Oliver Niehaus) 美術=松岡泉 照明=笠原俊幸 音響=長野朋美 衣裳=原まさみ ヘア&メイクアップ=鎌田直樹 舞台監督=益田裕幸/久保勲生
出演=中嶋朋子/塩野谷正幸/大浦みずき/千葉哲也/植野葉子/池下重大
一般発売開始=7/30(土)10:00 全席指定=6,300円
公式=http://www.tpt.co.jp/

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Posted by shinobu at 2005年08月31日 00:20 | TrackBack (2)