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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2005年09月02日

プレイボ~イズ『クライムス・オブ・ザ・ハート(CRIMES OF THE HEART)~心の罪~』09/01-04劇場MOMO

 プレイボ~イズサードステージ所属の俳優さんを中心としたの試演会ユニットです。今公演は大っぴらな宣伝はしていないそうですが、今日は満員でした。

 “CRIMES OF THE HEART”は1981年ピューリツァー賞受賞作で、アカデミー賞女優ばかりが出演した映画「ロンリー・ハート」の原作戯曲なんですね。私が映画を見たのはたしか中学生の時でした。で、今日この作品を観てわかったのは、当時の私はこの作品の意味が全くわかっていなかったということ(笑)。これは大人じゃないとわからないだろうな~。

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 アメリカが舞台ですので登場人物の名前がレニーやメグ、ベイブですし、出てくる固有名詞も英語をカタカナ日本語に直したものになっています。中盤まではその言葉にどうしても慣れなくて(役者さんの演技がおぼつかなかったのも原因だと思いますが)、誰の話をしているのか、何が起こったのかわからないままでした。※パンフレットに登場人物相関図が載っています。ぜひ開演前にお読みになってください。

 なのに、中盤から突然に涙がボロボロボロ~っ流れ出して、もーそこからはエンドレス。めちゃ悲しいんだもの!痛い痛い!胸がぎゅーってなるよぉ・・・(涙)。ということで最初はちょっとつらいですが、登場人物たちを見守りながらついて行けば、深い深い人間ドラマを味わえること間違いなし。特に20代以上の女性はかなり感情移入できるのではないかと思います。

 ここからネタバレします。

 ≪あらすじ≫
 アメリカ南部の片田舎の閉鎖的な街。祖父の面倒を見ながら一人で家を守っている長女レニー(30歳:生方和代)のもとに、ハリウッドで歌手を目指している次女のメグ(27歳:太田緑・ロランス)が帰ってきた。というのも三女のベイブ(小宮山実花)が大事件を起こしたからだ。ベイブは地元の名士ザッカリのもとに嫁いだが、そのザッカリを銃で撃ってしまったのだ。
 ≪ここまで≫

 この三人姉妹、登場した時はフツウの女の子たちに見えるのですが、家庭環境がめちゃ不幸なのです。まず、父親が蒸発しています。そして母親はそのショックで、猫を道連れにして首吊り自殺をしています。残された三人姉妹をひきとってくれたのがおじい様。そのおじい様も今は入院中で、家に一人残った長女のレニーが面倒を見ています。レニーは奥手で、実は子供を生めない体です。次女のメグは歌手を目指してロスに出て行ったのですが、歌が歌えなくなったために精神に異常をきたした時期もありました。三女のベイブは夫のザッカリから暴力や精神的苦痛を受けていました。

 舞台は「心の罪」でいっぱいでした。人は言葉で人を殺せると思いました。ベイブが黒人少年ウイリーと肉体関係を持ったことを聞いて、メグが「ニグロなのに!信じられない」と言ったり。ベイブの夫のザッカリが「決定的な証拠(ベイブとウイリーの密会現場写真)があるからお前は第一級殺人罪になる!」とベイブに電話で直接言ったり。従姉妹のチック(津留崎夏子)が「マグラス家(三人姉妹)に振り回されるのはもうたくさん!この家はおじい様の家なのよ!」と叫んだり。自分が何のためらいも無く正しいと思っていることって、実は鋭利な刃物のように他人に致命的なダメージを与えられるのですね。※セリフは完全に正確ではありません。

 英語から日本語への翻訳なのでどこかしら言葉づかいに違和感があります。その上セリフが膨大。また、三人姉妹はみな幼い頃に心に深い傷を負っており、ごく普通の女の子とはいえないキャラなんですよね。こういう役を演じることは、若い役者さんにとっては大きなチャレンジだと思います。

 生方和代さん。長女レニー役。子宮の病気で子供が生めないために、男の人に対して積極的になることができなかったというのが、終盤になってからしか明かされません。それが私にはツボでした。もー泣けて泣けて・・・。でも生方さんは深刻になりすぎず、明るく楽しい空気を生み出してくださったので、余計にその優しさが際立って、レニーの人の良さとなって現れていました。

 太田緑・ロランスさん。次女メグ役。母親の死体の第一発見者になってしまってから奇行に走るようになったメグは、一見、自分勝手で他人に迷惑をかけるばかりの人に見えるけれど、実は人の気持ちや苦しみがよくわかる優しい女の子だということが伝わってきました。自分の気持ちに正直に、感じるままに生きようとするために、常に我慢したり引っ込み思案になっている長女レニーと衝突しますが、それもレニーの本心(悲しみ)がわかるからじれったいんですよね。迫力のあるいい女っぷりを見せていただきました。

 小宮山実花さん。三女ベイブ役。いつも無理やり笑顔を作ってしまうという性格だったようです。それがわかるまでは意味不明な元気キャラでしたが、夫に暴力を振るわれていたこと、15歳の黒人少年と肉体関係を持っていたことなど、スキャンダラスな事実が明かされるにつれて、だんだんとその笑顔の意味がわかってきました。その時にはだいぶん彼女のことを好きになっていました。

 この三人姉妹の女優さんたちは、皆さん歌がとてもお上手でした。

"CRIMES OF THE HEART" by Beth Henley
出演=生方(うぶかた)和代/太田緑・ロランス/小宮山実花/津留崎夏子/辻京太/米山直之
作=ベス・ヘンリー 演出=ナンバー・ワン 音楽=小林章太郎 照明=伊藤孝(ART CORE DESIGN) 音響=会沢みゆき 舞台監督=上林英昭 照明操作=秋山絵美 音響操作=橋本絢加 舞台監督助手=金坂友美・橋本慶之 DMデザイン=ロノブ&サチ 写真撮影=板垣恭一&プレイガ~ルズ 制作=吉住太日誌 大蔵省三
日時指定・全席自由 ¥2500
プレイボ~イズ=http://www7a.biglobe.ne.jp/~playboys/

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Posted by shinobu at 2005年09月02日 23:49 | TrackBack (0)