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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年09月25日

劇団インベーダーじじい『あるやんごとなき夫婦の物語』09/22-25シアターiwato

 劇団インベーダーじじい は作・演出・主宰の なるせゆうせいさん が早稲田大学在学中に旗揚げした劇団です。世田谷パブリックシアターのくりっくステージに出場された時に「可笑しな劇団名だなぁ(笑)」と思ったのが私にとっての初めての出会いでした。作品は今回初めて拝見しました。

 役者さんはセリフをなぞってただ怒鳴るばかりだし、常に揶揄的な視点から描かれるストーリーは明らかに破綻しており、観ていて苦痛でした。ドぎつい下ネタが多かったのもつらかったです。

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 ≪あらすじ≫ ※公式サイトより引用。
 今ネット上で急増する個人発信でっちあげラジオ番組「デジオ」を題材に描く冷めた夫婦の愛憎劇。ある人気DJが発信するネットラジオ番組に一人の男が自分の妻の事を相談しにやってくる。しかし、やがて愛の行方を占うカリスマ占い師や姑をも巻き込んで、その問題は複雑に絡み合っていく…。
 ≪ここまで≫

 公演は終了していますので、ネタバレします。

 舞台はインターネットで無料放送されるラジオ番組の収録室。ステージ上は椅子以外何もありません。天井からテレビのモニターが5台、放送中に光る「ON AIR」のサイン・ライトが1つ、そして網に入った何か(見えませんでした)が数個釣り下がっています。
 舞台中央にはDJ(山村真也)が一人、パイプ椅子に座ってトークを続けています。ステージの上下に役者さんがパイプ椅子に座って待機していて、出番になると舞台にのぼったり、その場で立ってマイクでしゃべったりします。登場人物は計5人。

 当日パンフレットに書かれた作・演出のなるせさんの「ごあいさつ」の後半部分をご紹介します。(改行もそのまま反映)
【今年、戦後60年、だそうだ。
 だそうだ。と、なんともまあ、他人事のような気がするが、そりゃその通り。
 60年前僕は生まれてないわけで、平和を訴えかけられたところで、正直、クビをかしげる。うーん、て感じである。申し訳ねっす。
 一応あやまってみた。ぶっちゃけ、申し訳ないかどうかもわからない。終戦記念日とかさ、靖国参拝とかさ、リアルじゃない。
 今の僕らには、もっと平坦で身近なところで戦争は起きている。
 今年、戦後60周年、だそうだが、
 僕等の中で、一番リアルな戦争を描いてみようと思う。】

 そして今作品で描かれていたのは、ある夫婦の崩壊と再生(?)だったのですが、夫は「やんごとなき(家柄や身分がひじょうに高い・高貴である)」家系の人間で、ペンネーム(ハンドルネーム)が“皇太子”でした。その母親ももちろん「やんごとなき」人で、いかにも世間知らずなおバカ貴族っぽい演技をされていましたので、これは天皇制を風刺していたと考えてまず間違いありません。
 妻は防衛庁で働く若者と不倫しており、その不倫がバレた途端にその若者は、“皇太子”の母親からの圧力で中東の戦地へと派遣され、爆撃で死にます。
 終戦記念日や靖国参拝がご自分にとってリアルじゃないとおっしゃる方が、明らかに政治的な内容を盛り込んでいることに疑問を感じました。

 役者さんについては、観ていてすごく気の毒な気持ちになりました。役を理解して心から演じることが、誰もできていなかったからです。
 セリフはダジャレや先述の下ネタが多く含まれた膨大なもので、言葉遊びから展開していくこともあり、きちんと成立させるのにはスキルが必要なものでした。役者さんは大変だろうと思います。ずっとしゃべり続けるDJ(山村真也)は、大きな怒鳴り声で、まくしたてるように長いセリフをしゃべり続けました。観客に投げつける声、言葉、動き。私には暴力でした。また、ラジオでしゃべるというのは、舞台でお客様に向かってしゃべるのとは違う話し方になるはずですが(スクエアの『打つ手なし』はそれが秀逸でした)、その違いは演じ分けられていませんでした。
 妻は愛する若者が消えて頭が混乱し、なぜかラジオのDJに監禁されて狂ってしまうのですが、「狂った女」の演技っていうのは難しいんですよね。案の定、正視できる演技ではありませんでした。美人だし好感の持てる女優さんだったので残念。

 再びなるせさんの「ごあいさつ」より一部抜粋↓
 【・・・。今回のテーマにもさせていただきましたが、インターネットというものが爆発的に浸透して机の上ですべてが出来てしまう世の中で、わざわざ劇場に足を運んで頂けるという能動的な行動をしていただいた皆様に感服です。貴重な存在です。サンショウウオです。天然記念お客様です。演劇もまたサンショウウオのように貴重な存在の表現方法となりつつあるような気がします。・・・。】

 このように、演劇を作っている人が自ら「演劇はマイナーである」という発言をするのを見かけるのですが、勘違いだと私は思います。劇場が増えたり、ジャニーズ事務所が演劇公演を製作したり、ホリプロがアートスフィアを買収する(予定)など、舞台芸術はあきらかに盛り上がってきています。帝国劇場の東宝ミュージカルは1ヶ月興行が前売り完売だし、「2004年の演劇市場は、動員数・市場規模いずれも伸長し、2000年以降堅調に推移しています」(ぴあ株式会社2005年9月5日プレスリリースより)と、ぴあ総研『エンタテインメント白書2005』にも発表されています。劇場へ足を運ぶ人は天然記念物のように希少ではありません。

出演=山村真也/若狭ひろみ/棚橋幸代(トムプロジェクト)/児玉宣勝/矢野トモ子
脚本・演出=なるせゆうせい 照明=加藤学 照明オペレーション=秋葉奈々 音響=滝本千華 演出助手=鈴木仁美 映像=岸健太朗(黒子ダイル) 映像出演=高谷基史 衣裳=戸門由佳 宣伝写真=菅正輝 柔道指導=金子剛(シアターナノ.グラム) 当日制作=真子母都子(Follow Follow) 
劇団=http://www.inveider.com/

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Posted by shinobu at 2005年09月25日 22:22 | TrackBack (1)