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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年10月13日

ONEOR8『ゼブラ』10/12-17THEATER/TOPS

 ONEOR8(ワンオアエイト)は田村孝裕さんが作・演出される劇団です。私は『最後の恐竜』以来の観劇になりました。
 決して多くはないセリフのやりとりで、心の機微を描き出す脚本がすごいなぁと思いました。

 ≪あらすじ≫
 時は現在。場所は4人姉妹が育った手塚家の居間。昭和の匂いがぷんぷん漂う古びた住まいだ。母親(和田ひろこ)は入院している。
 次女(星野園美)の引越しのために姉妹とその夫たちが集まってきた日、突然、葬儀屋が訪ねてきて・・・。
 ≪ここまで≫

 登場人物一人一人のバックグラウンドが丁寧に書き込まれていて、でも決して説明くさくはならない、とてもよく出来た脚本でした。家族のお話だけに留まらず、葬儀屋の兄弟(津村知与支と野本光一郎)のドラマもきちんと盛り込まれて、嬉しい驚きでした。
 役者さんは、それぞれのキャラクターがしっかりと立っていて、どんな人にもその人独自の世界があることがちゃんと感じられました。そしてその世界と世界のぶつかり合いの中に、人と人とのコミュニケーションが生まれていました。

 なんだかべた褒めしてますが、私の人生に大きく影響する作品だったかと言うと、それほどではないんですよね。でもとても充実した2時間弱でした。

 ここからネタバレします。

 四姉妹がまだ少女だった頃と、大人になってそれぞれ自立した現在を何度か行ったり来たりする構成で、必要最小限の自然な会話から、その家族の数十年の歴史を埋めることが出来ていました。役者さんの演技の質に少々ばらつきがあったため、中盤までは冷静に眺めている状態だったのですが、母親の訃報を皮切りに次々と起こる修羅場の連続に、どんどん引き込まれていきました。

 父親が出て行ったため、四人姉妹は幼い頃から母親(和田ひろこ)との5人暮らしでした。現在、末期がんで入院した母は痴呆が始まっており、長女(弘中麻紀)は夫(瓜生和成)に浮気されていて、おデブちゃんの次女(星野園美)はマリッジ・ブルー、三女(今井千恵)はマザコンのいかずごけ候補、末ッ子の四女(吉田麻起子)はパチンコをやめない夫(冨塚智)といつもケンカ。家族ならではのあけっぴろげで乱暴なコミュニケーションに、自分も思い当たるところがあるなぁ・・・と、少し照れたり、懐かしく感じたり。
 泣きっ面に蜂とは言ったもので、事件(母親の死)がある時にかぎって、さらに余計な事件(長女の夫の愛人が登場)が起こるし、人間の死には修羅場(長女が父親に連絡を取ったことがマザコンの三女にバレる)がつきものなんですよね。
 無理を感じることなく、しみじみと、心でうなづきながら最後まで楽しませていただきました。

 一箇所だけ疑問だったのは、長女(弘中麻紀)とその夫の愛人(冨田直美)との会話です。あの愛人、めちゃくちゃ無礼でしたよね~。見ていてムカムカしました。仏前に顔を見に行ったのにお線香を上げないって、相当な無神経ですよね。なのに長女は彼女に頭を下げるし、息子のことを褒められてちょっと嬉しいような感覚も見せていました。私だったら逆上するんじゃないかな・・・(苦笑)

 美術は、柱や鴨居が部屋の輪郭をなぞって、壁はすべて取り払われています。居間と、壁の向こう側の廊下や階段で起こっていることが同時に見られるのが面白いです。リアルな家財道具と置物で1970年代からあまり変化していない家をばっちり演出していました。

出演=今井千恵/冨塚智/平野圭/冨田直美/恩田隆一/和田ひろこ/野本光一郎/弘中麻紀(ラッパ屋)/瓜生和成(東京タンバリン)/星野園美(石井光三オフィス)/津村知与支(モダンスイマーズ)/吉田麻起子(双数姉妹)
作・演出=田村孝裕 舞台美術=香坂奈奈 照明=和田典夫(満平舎) 音響=今西工 舞台監督=村岡晋 宣伝美術=美香(Pri-graphics) 宣伝写真=岩田えり 票券=上田郁子(Office Mube) 制作=神野和美 制作協力=Habanera・松尾由紀
前売り=指定席3000円 自由席2800円 当日=3300円(料金に関係なく全日共通)★10/13(木)14:30の回のみ前売り2500円(全席指定・Habanera取り扱いのみ)※その他先行割引販売などあり。
ONEOR8=http://homepage2.nifty.com/oneor8/

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Posted by shinobu at 2005年10月13日 22:54 | TrackBack (0)