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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年11月16日

G-up sideB;session『ゼロ番区』11/15-20新宿スペース107

 松本匠さんが作・演出・主演されているプロデュース公演です。2001年初演で今回が再々演なんですね。
 『ゼロ番区』とは死刑囚舎房のこと。男ばかりのシリアスな7人芝居は少々地味すぎる雰囲気でしたが、ラストは客席中ですすり泣く音が響きました。
 ※イープラスの得チケに、日にちにより残席あり。

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 ≪あらすじ≫
 東京拘置所にある死刑囚舎房は通称“ゼロ番区”と呼ばれる。入所して数年経つ南(松本匠)、秀島(大内厚雄)、浜田(入山宏一)はあきらめとともにゼロ番区での生活に慣れてきたが、入ってまだ間もない今西(岡安泰樹)は「自分は冤罪で拘置された」と主張し、再審を求める手続きに没頭している。
 数日前から新しく配属された看守長(関秀人)は、ゼロ番区の囚人たちに異常につらく当たる。部下の藤原(日高勝郎)と小松(濱本暢博)も不穏に思うほどだ。実は看守長は過去に・・・。
 ≪ここまで≫

 前半は役者さんの演技が硬くて会話がうまく回っていないようでした。特に主役の南やすし役の松本匠さんの演技が、「セリフを読んでます」と言わんばかりの状態でちょっと困りました。でも中盤ぐらいから言葉もだいぶん伝わってくるようになり、会話もスムーズに受け取れるようになりました。初日だったからかもしれませんね。

 ステージの上に3つの四角い島舞台が設置してあり、3つをひっつけて雑居房、別々にして独房というように変化させます。舞台が刑務所内なので意図的なのかもしれませんが、装置は全体的に地味でした。終盤になると照明にも大胆な変化があって良かったですが、前半から中盤は、空間の演出がシンプルすぎるように思いました。

 風琴工房の『ゼロの柩』を観た時と同じで、答えは出ませんでしたけど、「死刑って何なんだろうなぁ・・・」と考えました。裁判で死刑の判決を下すのは裁判所ですが、実際に死刑執行を決定するのは法務大臣で、執行の瞬間のボタンを押すのは看守なんですよね。ものすごい乖離を感じます。

 殺人は犯罪ですし取り返しがつきません。殺された人やその親類、友人の傷みは、殺人犯が死刑になったからといって完全に癒えることはありません。でもその殺人犯に死刑が執行されると決まったら、彼の周りに居た人間はやはり別れるのが悲しくて泣くんですよね。その意味で死刑は刑罰であり、殺人でもあります。

 ここからネタバレします。

 南は幼い頃に強盗3人に両親を惨殺されたので、大人になってからその強盗3人を刺し殺しました。彼はその殺人罪で死刑囚となったのですが、死刑執行直前に「看守長が正しいです。殺しても何にもならなかった」と言います。彼は自分の罪を罪として受け止め、それゆえの死刑に納得していました。
 看守長(関秀人)は若い頃に実兄を殺された恨みを晴らすために、ゼロ番区の死刑囚達にやつ当たりをしていました。でも南の殺人が両親の復讐のためだったと知り、南の罪と自分のやっていることを重ね合わせて考えた結果、「自分が間違っていた」と気づきます。この2人の気づきが、暗くてシリアスなドラマの本質的な救いとなっていました。

 私は輪廻転生を信じています。そして人間がこの世に残した強い意志や感情は、それが愛だとしても恨みだとしても、来世へと引き継がれるのではないかと考えています。だから死刑が執行された時、その死刑囚が自分の罪を罪だと思っていなかったり、今西のように「冤罪なのに」と恨んでいたりしたら、おそらくその人は来世でも何かやってしまうのではないかと私は想像します。だから、南がそんな恨みをいっさい持たずに天に召されるというエンディングを嬉しく思いました。

 浜田(入山宏一)の病死後に新聞に掲載された俳句「叫びたし 寒満月が 割れるほど」(うろ覚えです)は、とてもいい歌だと思いました。

 関秀人さん。非情の看守長役。全体的に声が聞こえなかったし大人しかったですねぇ。暴力を振るったり残酷なことを言い放ったり、けっこう怖い役のはずなのですが、敢えて押さえた演技をされていたのでしょうか。でも最後に南(松本匠)に謝るところの弱々しい、だけど真摯な気持ちが表れた表情は、めちゃかっこ良かったです。

 南(松本匠)の死刑執行が言い渡されたところで、今西(岡安泰樹)がおんおん泣きながらしゃべっていたのが良かったです。あれで私は泣いちゃいました。

出演=関秀人/大内厚雄(演劇集団キャラメルボックス)/岡安泰樹(エル・カンパニー)/入山宏一(絶対王様)/日高勝郎(InnocentSphere)/濱本暢博(劇団OUTLAWS)/松本匠(エル・カンパニー) 声の出演=山野勝/内田びん太(俳協)/今西恵子/瀧澤奈々絵(フラッシュアップ)
作・演出=松本匠(エル・カンパニー) 音響=平田忠範(GENG27) 照明=廣井実 舞台監督=長谷川裕 演出助手=田村友佳(KAKUTA) 宣伝美術=松井秀樹写真事務所 制作=伊藤恭子 企画=RISU PRODUCE 製作=G-up プロデューサー=赤沼かがみ
全席指定 前売3,800円 当日4,000円
G-up=http://www.g-up.info/

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Posted by shinobu at 2005年11月16日 00:58 | TrackBack (0)