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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年12月30日

乞局『雄向葵(オマワリ)』12/28-31王子小劇場

 「暗くて気持ちわるい(悪い意味じゃないです)」という噂をよく聞く乞局(こつぼね) 。私は前々回公演『汚い月』が初見で今回が2度目です。
 作・演出の下西啓正さんはチェルフィッチュによく出演される俳優でもあります。『汚い月』は第11回劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作に選ばれて、前作『耽餌(たぬび)』が第5回かながわ戯曲賞の佳作に入選しましたね。
 今回も喪服割引(500円引き)がありました。受付さんがみんな喪服(笑)。

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 ≪あらすじ≫
 日本のどこか架空の観光地。その古都は異常なほど閉鎖的で、観光客以外のよそ者を寄せ付けないし、人種差別も当然のようにはびこっている。川に面したオープンテラス風の食事処“鳳樹苑(ほうきえん)”は、夏は観光客でにぎわうが冬は完全なオフシーズン。従業員は信じられないほど無礼でやる気がない。
 ある日、寝たきりだった鳳樹苑の女将が死んでしまう。女将を看病していた従業員の禮丸(とよまる・石井汐)と外山田(とびた・青木宏幸)は、死体を隠そうとするが・・・。
 雄向葵(オマワリ※架空の花)はその古都によく咲いている花。花言葉は「許せない奴がいる」。
 ≪ここまで≫

 今回もたしかに気持ち悪かったです。でも前々作と比べると笑えるところがすっごく多くて、私はそれで満腹でしたね(笑)。
 わざとらしいほどにどんより暗くてシーンとした空気の中、エログロお下劣でナンセンスな出来事が起こり続けます。登場人物は無礼で傲慢で子供っぽい人ばかり。彼らはいちいち悪意を垂れ流します。
 女将は他殺されたかもしれないし、さらにその死体を隠そうとするのでサスペンスドラマの色もあるのですが、物語の流れや顛末よりも、人間の悪意から生み出される居心地の悪いムードと、そこから唐突に、だけどサラリと飛び出してくるブラックな笑いが独特です。

 静かなナンセンス風ギャグ(?)がおり重なって、私は苦笑の連発(笑)。客席に座って観ていてですねぇ、「ココで笑うなんて、私かなりヤラしくってヤなヤツだと思われるんじゃない!?」という風に、笑うのが恥ずかしくなるんですよ。お下劣で不謹慎でインモラルで。それでもどうしても笑わずにはいられなくって、私はもう、開き直って笑いましたけどね!私の好きな企画ユニット・ブラジルも苦笑系の作品を作っていますが、今作はブラジルよりもさらに笑いにくかった!(笑)

 ここからネタバレします。明日12/30(金)のお昼で千秋楽ですよ。

 不必要に食べ物を吐き出したりとか、なぜかズボンを脱いだりとか、○ンドームから白い液体をわざとこぼして歩いたりとか・・・あぁ書いてて恥ずかしい・・・。いちいち下品なんですよ。でも地味~な動きであまりにさりげなくこなすものだから、プっと元気に吹き出すのではなく、うつむいて失笑するしかない・・・(笑)。夏に旅行に来たはずの男2人が冬になると住み込みバイトになってるのとかも爆笑でした。
 決して笑いをメインにしたお芝居ではないと思うんですよ。暗いし怖いし気持ち悪いし・・・。でも間合いとセリフがすっごくイカしてて、とにかく私は楽しかったです。

 雄向葵(オマワリ)という架空の花が、実は人の身体を侵食していく・・・というのは、雰囲気だけで充分でした。具体的に身体に草がまとわりついていたり、陰部が草になってたりとかは、私にはおもしろポイントで・・・顔をこわばらせつつ、息声で笑っちゃいました。
 カーテンコールはみんな舞台で土下座だし・・・これまた拍手するよりも笑えてきちゃいました。舞台両脇の超下品な(苦笑)男女の下半身のみの裸体の置物も可笑しいし、その置物にピンクの照明がパっと当たったタイミングも可笑しすぎました。演出意図はわかりませんが、私はとにかく心から面白くて、笑っちゃいました。

 美術はきれいに建て込まれた和風の食事処でした。手前と奥の空間の間に段差がある和室は、高さも奥行きもあって見栄えが良かったです。舞台奥の窓からは川辺の風景が見える設定で、上手前には水底につながる穴があり、死体がそこを行き来するのも気持ち悪くて良かった(?)ですね。

 鈴木享さん(スズキ・ユキさんとお読みするのですよね)。住み込みバイト君(小島フェニックス)のストーカー女役。あーーーー・・・もーたまらん!あんなにキュートな童顔で、あんな下品な“求愛行動”をされちゃったらねぇ・・・(苦笑)。そりゃバイト君もタつでしょうね!!!(もーいいや、書いちゃえ!) 「なぐって!」と叫びながら床に転がったりさ、指をしゃぶったりさ、もー顔をうつむけながらも笑いまくっちゃいました。
 小島フェニックスさん。住み込みバイト君役。私が今までに拝見した限りでは、アドリブを連発したり、個性(アク)の強い役が多い役者さんですが、乞局に意外にフィットしていましたね~。バイト君はいわゆる普通の人なので、登場してくれる度にホっとしました。彼が居ることによっていいムードの笑いが生まれていたと思います。

出演=青木宏幸(スロウライダー)/秋吉孝倫/小島フェニックス/佐野陽一/下西啓正/三橋良平/五十嵐操/石井汐/鈴木享/二宮アカリ(アンチ☆ヒール隊)/古川祐子
作・演出=下西啓正 舞台美術=谷澤拓巳 照明=椛嶋善文 照明操作=谷垣敦子 音響効果=木村尚敬 平井隆史(末広寿司) 演出助手=田中則生 舞台監督=谷澤拓巳+至福団 衣裳=中西瑞美 宣伝美術=石井淳子 WEB管理=柴田洋佑(劇団リキマルサンシャイン) 制作=阿部昭義 菅原香子 制作協力=玉山悟 尾形聡子 酒井純 製作=乞局
前売2500円 当日 2800円 学生割引 2000円 (要学生証提示) 喪服割引 2000円 (劇団予約のみ)
劇団=http://kotubone.hp.infoseek.co.jp/

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Posted by shinobu at 2005年12月30日 23:13 | TrackBack (0)