REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2005年12月29日

【読者のレビュー】グリング『海賊』の感想(M.H.様より)

 メルマガを登録してくださっているM.H.さんより、グリング『海賊』のご感想メールを頂戴いたしました。メルマガ号外を読んでスズナリに足を運んでくださったそうです。
 私のメルマガがお役に立てたことが何より嬉しいかったですし、M.H.さんのご感想に、『海賊』にはあって、多くの小劇場演劇にはない重要なポイントが書かれていたように思います。
 ※関連記事⇒ fringe blog「週末だけの公演にクチコミはない

 ★人気ブログランキングはこちら♪

 有名アイドルやテレビ・映画のスターが出演する舞台作品が話題になり、そのチケットがよく売れている今の演劇界で、オリジナルの作品を自主製作し続ける小劇場劇団やカンパニーが、まずどんなハードルを越えればいいのか。

 ミニシアター系の作品をこよなく愛する映画ファンがいるように、小劇場演劇(=fringe)を愛する息の長い一般の演劇ファンを獲得するために、グリング『海賊』のような作品がもっと多く生まれる必要があると思います。

 M.H.さんにご感想の掲載許可をいただきましたので、下記に全文+αを載せさせていただきます。


■「海賊」のこと

今もほぼ毎日、しのぶさんのサイトにはお邪魔しているのですが、今回またまたしのぶさんのお陰様で良い芝居を見逃さずに済みました。
今回はグリングです。(前回は「山月記」でした)
2度と同じモノがない舞台を逃さずに済んだ幸せ、嬉しさがまだ持続しているうちにとメールしています。

グリングは「カリフォルニア」のチラシを見て以来とても気になっていたのですが、今回はあちらこちらで見かける評判の良さに加えしのぶさんが紹介してる、これは何としても行かねばと思い、腰の重い自分には珍しく、即スズナリに電話してチケットを予約し出かけて参りました。

良かったです。
ボキャブラリーの少ない私には上手く表現できないのが歯がゆいのですが、良かったです。

私は自分から舞台を見に行く時に大抵は出演される役者さんで選ぶ、それくらいしか選択の幅が無いような初心者(?)です。
まだまだ顔を知らない役者さんの舞台に行ったり、名前を見たことがあるだけの劇団や脚本家や演出家を自分に合うか試すような懐の深さもありません。(やみくもに出かけていきガッカリなんて、お金の余裕も無いですし・・・)
ですから最近観劇の回数が多くなって来たとはいえ、所詮有名どころだったり話題になっている舞台中心のセレクトになってしまっています。
そんな私ですから舞台そのものの楽しさをどれだけ理解出来ているのかと問われれば自信がありません。

実は出演している役者さんを誰ひとり知らないというような時には、何故か見ていても落ち着かなかったりします。
ホント上手く言えませんが見ていて、こちらがテレるような感覚とでも言うのか・・・。

それは私が出演している人を「素人」扱いしてしまうからかもと思っていました。

今回の「海賊」では私がかろうじて名前を知っている役者さんは峯村さんだけ。
ですが心地よいテンポで紡がれる日常、当たり前のように夫婦に兄弟に見える出演者の方々。
所々で笑いながら気がつくとラストに向かいどんどん引き込まれていました。

舞台の上の人達は極めて普通の人に見えましたし、普通の人が寄り添って暮らしている空気までもが見えた気がしました。
失礼な言い方かもしれませんが、やたらに華があれば良いというものでは無いのだと、今更ながらアホな私は気づかされました。
加えて以前感じた落ちつかない不安定な感覚は、「素人」扱いしてしまう私だけでなく役者のチカラの違いなのかもしれないとも思いました。

たんたんと過ぎていく日常。
良いなと思うシーンは幾つかありましたが峯村さんと中野さんが二人だけで話しをするところ、それとラストのとケーキを食べるシーンは印象に残りました。
どちらも自分の居場所が無い、孤独なんだと本心を晒す場面です。
峯村さんの言葉は同じような境遇の私には身につまされるようで辛いものでした。
必要とされる自分を失う怖さとでもいうのでしょうか。
そしてラストの中野さんが笹野さんに「じゃぁ一緒に寝よう。淋しいから。」と思い切り本心を投げ出した時にはヒリヒリするくらい哀しくて痛かった。
その言葉を吐きだした一瞬、兄の顔は潔いというか、やっと突き抜けたという表情に感じましたし、その瞬間の中野さんの顔が一番男前だった気がします(笑)
その後、笹野さんに拒絶されてケーキを食べながら笑う顔には何とも言えない爽快感が。

全てが一気に解決なんかしない、きっとこの後も誰もが不器用にもがきながら歩いて行くんだろう。
でも自分の荷物だけが重いんじゃない、重さも大きさも様々な見えない荷物をそれぞれが自分自身で背負って行くしかないんだという当たり前のことを見終わって感じました。

しのぶさんが取り上げてくれなかったらきっと見なかったでしょう。
見て良かったです。
ありがとうございました。
ではまた参考にさせてくださいね。
長々と失礼致しました。


≪下記は、ご感想の掲載許可をいただいた後のメールから引用≫

それにしても「海賊」を観れたことはこれからの劇場通いに一層拍車のかかるであろう「事件」でした。
これからも面白い舞台を観たいと心から思いました。

今後もしのぶさんの繊細感性と真摯な視点を参考にさせていただきますね。

では、また。

M.H.

■以上

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
●●●人気blogランキングに参加中!ポチっとクリックしていただけると嬉しいです。●●●
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。

メルマガを発行しております。過去ログはこちら
 毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
 ぜひご登録ください♪
 『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)

↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。


登録フォーム






解除フォーム




まぐまぐ


『まぐまぐ!』から発行しています。

Posted by shinobu at 2005年12月29日 22:47 | TrackBack (0)