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2005年09月06日

世田谷パブリックシアター『敦 ―山月記・名人伝―』09/06-15(9/3, 4プレビュー)世田谷パブリックシアター

 野村萬斎さんが、中島敦の小説「山月記」と「名人伝」を狂言師による現代劇として演出されます。
 劇場を支配するのは狂言師だからこそ創り出すことのできる荘厳な空気と、研ぎ澄まされた、透き通るような美しさです。前半は涙が溢れて鼻水がこぼれて(苦笑)止まりませんでした。
 大鼓(おおつづみ)と尺八ってあんなに凄い楽器だったんですね。今まで知らなかった。

 前売り券は完売です。私が観たステージについては当日券は約30枚出たそうですが日によって残枚数は変化します。また、当日券の内イス席は10席未満だったそうです。
 ※観に行かれる日の前日までなら、くりっくチケットセンター(TEL 03-5432-1515)で電話予約が可能。ただし予約できるのは立見席のみ。

 舞台写真あり↓(2005/09/29追記)
 野村萬斎構成・演出『敦』公開舞台稽古

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 今日は・・・野村万作さんに尽きます。もちろん萬斎さんの演出力があってこそ、この傑作が生まれたのだと思いますし、中島敦についてとか、狂言と現代劇との融合など、多くの視点から深い考察ができるだろうと思います。ただ、その中から一つだけトピックを選ぶとすると、万作さんの李徴(りちょう)なんですよね。

 珍しいことに今回、私は原作を読んでから伺いました。「山月記」は高校の授業で習った時、とても感動したんですよね。「名人伝」は自分が読んだ時に感じていたイメージと、今作品の演出とが全く違っていて面白かったです。

李陵・山月記
李陵・山月記
posted with 簡単リンクくん at 2005. 9. 6
中島 敦著
新潮社 (2003.12)
通常2~3日以内に発送します。

 ここからネタバレします。

 前半に「山月記」、休憩を挟んで後半に「名人伝」を上演する構成でした。脚本は小説をそのまま使用しています。狂言師の方々はあまりにセリフも演技も上手いので、「そして李徴は~~~と言った」というように自分で自分の役のト書きも読むのですが、違和感は全くなく、むしろそれも合わせて一つのセリフのように聴こえていました。

 美術はまさに漆黒の闇。黒光りする丸い床は鏡面仕上げで、立っている役者の足も映ります。その丸いステージの周囲を縁取るように一段高い三日月型のステージが設置されており、いわばキャットウォークのようになっています。可動式なので、舞台の周囲をぐるりと回って舞台前面に来る事もあります。

 「山月記」
 【配役】李徴=野村万作 袁さん=石田幸雄 敦=野村萬斎 敦たち=深田博治/高野和憲/月崎晴夫

 身動きひとつ許されないようなピーンと張り詰めた空気でした。闇に落ちる白い照明の中、4人の敦と白い虎=李徴(野村万作)が浮かび上がります。李徴が虎になって初めて兎を獲って喰らったことを語るシーンでは、舞い落ちる白い綿毛と白い虎に真っ赤な照明が当たり、狂喜と慟哭の地獄が一瞬間だけ現れました。美しすぎて、涙が止まらない。こんなことがあるんですね。

 野村万作さん演じる李徴および白い虎に、私の心の全てが奪われていたと思います。
 演技って一体、何なんでしょう。また全くわからなくなりました。万作さんは確かに李徴の憤り、悲しみ、悔恨などの感情を生々しく観客に届けてくださるのですが、決してご自身が感情に溺れてはいらっしゃいません。だけど能やパントマイム等のように完成された型から感情を伝えるような、ストイックな動きではありません。感情そのものを直接的に身体に反映するような、アグレッシブでリラックスした動きおよび発声をしていらっしゃいました。でも、実はそれも全て振付なのかしら?
 私が万作さんを通して感じたのは李徴の気持ちですし、また万作さんでもあったように思うのです。そして演出をされた萬斎さんと原作者の中島敦さんもまた、そこに居るような・・・。


 「名人伝」
 【配役】紀昌=野村萬斎 甘蠅・老紀昌=野村万之介 紀昌の妻・飛衛・主人=石田幸雄 都人士=深田博治/高野和憲/月崎晴夫

 前半と打って変わって、なんとコメディーでした。はっきり言って助かりました・・・前半で心身ともに疲労困憊しておりましたので、オープニングからクスっと笑わせていただいてホっとしたんです。

 天下一の弓の名人になろうと志した若者・紀昌(きしょう:野村萬斎)のお話です。まずは弓の名手・飛衛(石田幸雄)を師事し、過酷な修行を軽々とクリアしていきます。「虱(しらみ)」、「矢」、「的」などの漢字を動かす映像が愉快。

 萬斎さん演じる紀昌が、万之介さん演じる老名人の甘蠅(かんよう)の元で9年の修行をした後、萬斎さんは敦役に戻り、万之介さんが年老いた紀昌役になって山から降りてくるのは見事でした。
 でも萬斎さんが元気な紀昌役ではなくなった頃から、緊張感が持続できなくなって少し眠気が・・・ごめんなさい。前半で息絶えたも同然だったのですよ、私。 

 紀昌の妻・飛衛・主人の三役を演じられる石田幸雄さん。かつらが最高です。飛衛役の時に異常に大きな顎ヒゲを蓄えてらっしゃったのですが、そのヒゲを顎からクルリと顔の前をとおして頭上に置き換えると、女のかわいい丸髷(まるまげ)の出来上がり♪あの遊び心溢れるアイデアはどなたが出されたのかしら。

 萬斎さんは演出家としても一流なんですね。天才はやはり天才だ。

原作=中島敦 演出・構成=野村萬斎 美術=松井るみ 照明=小笠原純 衣裳=半田悦子 音響=尾崎弘征 演出助手=小美濃利明 舞台監督=勝康隆 プロダクションマネージャー=福田純平 技術監督=眞野純 かつら=川口博史(奥松かつら) 宣伝美術=杉浦康平+佐藤篤司+島田薫 
出演=野村万作/野村万之介/野村萬斎/石田幸雄/深田博治/高野和憲/月崎晴夫/亀井広忠(大鼓)/藤原道山(尺八)
S-7000 A-5000プレビュー公演料金:S-6000 A-4000
※月曜休演。未就学児童は入場不可。
公式=http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/05-2-4-21.html

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Posted by shinobu at 23:59 | TrackBack