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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年09月19日

KAKUTA『北極星から十七つ先』09/15-19シアタートラム

 大人気の劇団KAKUTA(カクタ)のダブルキャスト公演です。立見席も満席で通路に人が一杯の大盛況でした。
 私はデネブサイドを拝見いたしました。観終わった後、ヴェガサイドも観たいなぁと思ったのですが残念ながら叶わず。デネブは東北地方の方言で、ヴェガはより南西の地域の方言が使われていたそうです。

 私と同じステージをご覧になっていた方の感想はこちら。
 →脚本家・演出家 ブラジリィー・アン・山田の活動日記「汁だし」

 初演についても言及していてキャスト表もある感想はこちら。
 →休むに似たり。

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 ≪あらすじ≫
 とあるド田舎のサビれた駅の、朝から夜までのお話。駅員(本間剛)と売店で働くコウメ(原裕子)、近所のコンビニの店長(松井基展)、そして謎の女サリー(いしいなつき)は駅の常連。
 100年に1度の大流星群が来るという日(といってもそれは隣りの駅のことなのだけれど)、いつもより多く人が訪れた。まず、新任の駅員(成清正紀)が登場。さらに、昨日から勝手に駅長室に泊まりこんでいた女(瀧山雪絵)がいて、それはコウメの高校時代の同級生の祥子だった。
 ≪ここまで≫

 なぜ、こんなにさわやかな気持ちにさせられるのだろう。KAKUTAを観ていつも思います。よくありそうなワン・シチュエーション・青春ドラマかと思いきや、針でチクっと刺さすような刺激とともに重たいテーマも忍び込ませます。

 ここからネタバレします。

 祥子(瀧山雪絵)が待ち続けていたのは恋人。でも彼には同級生の寄子という妻(山中郁)がいる。駅で出会った祥子と寄子の女同士のガチンコ勝負になるのですが、あくまでも女の子のままなのがいじらしい。そして恐ろしい。これは女性演出家ならではの空気感だと思いました。

 シアタートラムは天井が高くて間口が広く、難しい空間だそうですが、しっかりと立て込まれて立体感のある美術に満足でした。駅のホームと改札口の間にある中2階のような空間が効いています。

 登場人物が音楽に合わせて踊りの振付のように動き、時間の経過を表すシーンは良いスパイスになっていました。『青春ポオズ』の時にも似た演出があって、その時もものすごく楽しかったんですよね。

 ただ、これだけ気持ちよく観させてもらったものの、誰かにお薦めできるかというとそれは難しい、という気持ちでした。
 KAKUTAの役者さんばかりではなく、今公演のために呼ばれた(もしくはオーディションで受かった)外部の役者さんが出演されています。役者さんの一人一人はしっかりと地に足がついた演技をされているのですが、全体と交わりあって一つの世界へとまとまっていないように感じられたのです。プロデュース公演によくあるんですよね。

 KAKUTAは今年、「星の一年」と名づけて星にまつわる3作品を上演していかれるそうです。第ニ弾はプラネタリウムを舞台に選んだ「朗読の夜」Vol.2。第三段は再び花やしきを占拠するようです。これは見逃せませんね。

ヴェガサイド【Vega】=若狭勝也/川本裕之/佐藤滋/高山奈央子/野澤爽子/馬場恒行/今林久弥(双数姉妹)/中野英樹(グリング)/舘智子(タテヨコ企画)/青山麻紀子/矢島淳子/吉田小夏(青☆組)/久保貫太郎/山口享佑子/熱田福美
デネブサイド【Deneb】=成清正紀/松田昌樹/原扶貴子/大枝佳織/横山真二/桑原裕子/松井基展/本間剛/いしいなつき/辰巳智秋(ブラジル)/山中郁(bird`s-eye view)/瀧山雪絵/吉田久代(ククルカン)/武藤心平(クロム舎)/長谷川美玲
作・演出=桑原裕子 舞台美術=鈴木健介(青年団) 舞台美術協力=横田修(突貫屋) 舞台監督=古賀裕治(ワーズ) 照明=西本彩(青年団) 音響=島貫聡 選曲=真生 衣装=山崎留里子 演出助手=田村友佳 宣伝美術=川本裕之 宣伝写真=相川博昭 写真モデル=北川義彦 田仲祐希 制作=前川裕作 五十嵐正至 企画・製作=K.K.T
ヴェガサイドとデネブサイドのダブルキャスト公演。
全席指定 一般 前売3,200円/当日3,500円 V・Dセット券5,800円(劇団のみ取扱い) SePT倶楽部会員割引 2,800円 世田谷区民割引3,000円
公式=http://www.kakuta.tv/

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Posted by shinobu at 23:52 | TrackBack

innerchild『遥〈ニライ〉』09/16-23吉祥寺シアター

 小手伸也さんが作・演出されるinnerchild(インナーチャイルド)の第10回公演です。小手さんは劇団☆新感線にも出演される役者さんですが、ご自身の劇団では精神世界に焦点をしぼった劇作と演出を続けていらっしゃいます。
 琉球とアイヌ、現世とあの世を飛び交う物語。少々難解ではありましたが、数ある戦争を題材にしたお芝居の中でも異彩を放つ視点を持つ作品でした。

 ※BACK STAGEにインタビュー等の充実した特集があります。

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 ≪あらすじ≫ 
 葦原ヤマト(三宅法仁)は沖縄の長老夫婦(今村佳岳・小椋あずき)を訪ねた。夫婦はその地で60年前に起こった出来事を語り始める。
 本土決戦間近の日本。平和に暮していた沖縄の若者達にも赤紙が届きはじめる。クシラ(古澤龍児)は海で死んでしまった恋人のカナ(石川カナエ)を探しに船を出す。嵐に呑まれて、時も空間も越えてたどり着いたのは、アイヌの地だった。
 ≪ここまで≫

 琉球語(琉球についてはこれからは沖縄と表記)とアイヌ語と現代日本語が混ざったセリフの応酬に頭が混乱して、前半は設定とストーリーを理解するのがすごく難しかったです。ちょっと眠くなったりも・・・。でも沖縄とアイヌが頻繁に行き来するようになってからは空間演出にグッと引き込まれ、涙がボロボロとこぼれてしまいました。死者と、そしていつか死者となる私達が吉祥寺シアターで出会いました。

 ここからネタバレします。

 沖縄の異界伝説「ニライ・カナイ」はアイヌ語で「根の下・空の上)」を意味するそうです(当日パンフレットより)。日本(本土)とアメリカの戦争の犠牲になった沖縄、江戸幕府に(領土と言う意味で)征服されたアイヌという点でも、沖縄とアイヌには共通するものがありますよね。この物語では、1945年の沖縄で死んだ若者は、おそらく18~19世紀頃の北海道に流れ着きます。

 クシラ(古澤龍児)にイクマ(小手伸也)が何度となく訴える「お前の善意に俺を巻き込むな!」というセリフに、今も昔も変わらない戦争の原因が表されているように思います。
 「自分の大切な人を守りたい」「無駄死にはしたくない」という“善意”から米兵を殺しに行く若い兵隊(ナサキ、テッタ、ムクオ)は、クシラ達と同様に死んでアイヌへと飛び、なんとアイヌ征伐軍(幕府軍?)となって現れ、アイヌとして平和に暮していたクシラやカナ、ヒカリの前に鉄砲を持って攻めてきます。
 1945年の沖縄で祈祷師(?)となってその場を霊視するハル(石村実伽)、青年に話して聞かせる老夫婦、そして芝居を観ている観客という、時間を越えた多数の視点からこのシーンを描くことで、その戦闘が今、芝居を観ている現実と同時進行で起こっているように感じられました。

 地球上で起こっている出来事は、どんなに遠い場所だとしても全てつながっています。イラクに無数の劣化ウラン弾が落とされたことも、アメリカをハリケーンが襲ったことも、日本に住む私達と密接な関係があります。
 私は輪廻転生を信じています。この作品で表れされる輪廻転生とよく似ているような気がしました。私が昨日ケンカした友達は、昔、私の母だった人かもしれない。彼が戦争で殺したあの人は、昔の恋人だったかもしれない。肉体を離れた命は、今も私のそばに居るかもしれない。
 つまり、はるか昔の出来事さえも実は現在と同時に起こっていて、過去の人(死んだ人)も現在の人(生きている人)も一緒に存在し、そしてそれらはぴったりと重なるぐらいに響きあい、結ばれているのかもしれない。少なくともあの瞬間、吉祥寺シアターの客席で私は、あらゆる命がひしめきあい、その光が縦横無尽に飛び交い、ぶつかり合っているように感じました。

 沖縄で長生きして天寿を全うしたハル(石村実伽)は、アイヌで死んだクシラ(古澤龍児)と死後の世界で出会います。無数の死者が行き交うラストシーンには涙が止まらず、終演後もしばらくは席から立てませんでした。

 平たく広がるステージを囲むように、さとうきびを象徴する細長いオブジェが高く伸びています。舞台の上下の袖だけでなく、床下(奈落)からも出入りがあります。死んだ人たちがニライ=根の下・根の国(黄泉)から出てくるのに背筋がゾクっとしました。

 お話や世界観には強く共感し、感動したので満足でした。以下、気になったところ。
 オープニング映像(役者紹介含む)が始まったのが開幕から約40分後でした。上演時間が2時間強の作品ではいくらなんでも遅すぎるか、と(笑)。映像が始まった時、思わず時刻を確認しましたし、「3時間ぐらいある大作なのかしら・・・(汗)」と思いました。

出演=古澤龍児/菊岡理紗/土屋雄/三宅法仁/宍倉靖二/小手伸也/石村実伽/小椋あずき/森岡弘一郎(無名塾)/児島功一(劇団ショーマ)/今村佳岳(カムカムミニキーナ)/池内直樹(SUPER★GRAPPLER)/岩﨑龍/櫻井無樹(千夜二夜)/石川カナエ/金子恵/笠井里美/中谷千絵(天然工房)/根岸絵美
作・演出=小手伸也 舞台美術=u-rec-a 舞台監督=清沢伸也 照明=伊藤孝(ART CORE design) 署名操作=大谷わかな 音響=尾林真理 映像=神戸ちぎ 衣裳=渡辺まり 衣裳製作=黒沢さおり ワタナベユカ 宣伝美術=土谷朋子(Citron Works) 小道具=櫻井徹 メイク=萩原麻弥 演出補佐=三嶋義信 GP撮影=田中亜紀 当日運営=三村里奈(MRco.) 制作=インンーチャイルド制作部 G-up(赤沼かがみ・伊藤恭子) 企画・製作=innerchild 後援=財団法人東京都歴史文化財団
全席指定 平日3,000円/土・日・祝3,200円 前売り開始 2005年8月15日(月)  全11ステージ
公式=http://www.innerchild-web.com/

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Posted by shinobu at 21:11 | TrackBack