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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年02月21日

Bunkamura『労働者M』02/05-28シアターコクーン

 ナイロン100℃のケラリーノ・サンドロヴィッチさんが、シアターコクーンに書き下ろして演出する第2弾(第1弾はこちら)。豪華キャストのプラチナチケットは立見席も前売り完売です。※当日券のお求め方法はコチラ
 休憩15分を挟んで約3時間30分の上演時間ですが、私はそれほど長いとは思わなかったですね。前半が終わった時に、すかさず時計を見てしまいましたけど(苦笑)。だって普段ならもう終演するぐらいの感覚ですから。
 2つの世界が入り混じる構成でした。詳しい配役が演劇◎定点カメラにまとめられています。徳永京子さん(演劇ライター)による初日レポートあり。ケラさんへのインタビューはこちら(Yahoo!tickets)。

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 で、面白かったかどうかですが、率直に言って面白くはなかったです。でも不満は全然ありません。感動して泣いたとか、明日からの人生の糧になったとか、そういうことは全くなかったけれど、それで良かった、という感覚です。誰にでもお勧めできるかというと・・・絶対ムリですね(笑)。不快だったり、楽しめない人も多いと思います。

 ここから少しネタバレします。

 まるでちゃんとしたストーリーがあるかのように始まるけれど、てんでバラバラな方向に行ったり来たり。2つの世界が別々に進行するので「最後に集約するのかな」って普通は予想するんですが、それもハズレ。問題は解決しないし、納得の行く完結もない。

 シアターコクーンだとか、9000円払ってるとか、有名俳優が出てるとか、そういうレッテルから当然のごとく観客が持つ先入観を、ヒョイっとかわして、自分の信じる面白さを探求し、冒険しているように見えました。そういう意味で私は納得でした。
 「安いチケットの芝居はすべて面白くない」ということが成立しないのと全く同様に、「高いチケットの芝居はすべて面白い」とは限らないんですよね。そして、感動できたり面白かったりする芝居が良い芝居だというわけでもないです。

 シアターガイド3月号のケラさんのインタビューより↓
 ケラ『ここ数年、“何が言いたかったの?”“分からない”と感じるお客さんとの闘いを続けています。ダンスや現代美術を観て「分かんねぇよ」って言わないでしょ。なのに演劇になった途端分からないと不安になる。作品の印象なんて、観る人によって違うほうがいいんです。』
 お芝居も、人間や人生と一緒で、予想がはずれることだらけでいいんだと思います。そして感じたままに考えて、一人よがりに解釈して、勝手に楽しみたいなって思います。

 ここから完全にネタバレします。

 【A】“いのちの電話”のフリをして実はねずみ講をやってる会社(現代)と、【B】土星人との戦争が終結して荒れ果てた国の収容所(近未来)の2箇所のお話が交錯します。

 【A】では室長がずっと行方不明で、【B】では幹部の支配者“M”が、通信で指令をするだけで姿を現しませんでした。「道しるべを失って迷走する」「誰か(何か)に頼って自分の意志がない」「盲目的に信じていた“何か”はもとから存在しなかった」などが受け取れました。

 いろんな種類の笑いがいっぱいありましたね。シアターガイド3月号のインタビューより↓
 『以前はひねりのあるボケに、さらにひねりのある返しをするための一言を一晩かけて考えた。でも今は・・・(中略)・・・脳ミソを通さない会話をしている人の状態をスケッチしてニヤニヤしたい。話してる情報ではなく、状態こそが面白いんです。そういう実験を楽しんでるという意味で、前回とは大きく違います。』

 市民管理局のサキ(犬山イヌコ)は、収容所の内部監査にやってきて、なかなか帰ろうとしません。そんなサキに向かって収容所幹部(堤真一)が「こうしてサキという女は出て行った!」とト書きを読み上げて、むりやり追い出します。ブルースカイさん演出の『ウチハソバヤジャナイ』を思い出しました。

 トマッソ(池田鉄洋)にチリと埃がいっぱい入ったスープを飲まされたポタージュ(山崎一)。「ポタージュがスープ飲んでら!」
 クラウス(田中哲司)がゼリグ(堤真一)のコートを着ていたせいで、勘違いでピエンタ(篠塚祥司)に銃殺されます。サキ(犬山イヌコ)「今すごくうまく出来てたのに・・・二度見。」

 小道具にこだわりが感じられました。朝鮮人参のような土星人人形が妙にリアルで可愛かったです。通信機の中に通信機があって、最後に「も~」っていう鳴き声がするのも。ミサオ(明星真由美)が奮闘する銀色のトラッシュケースの仕掛けも面白かったですね。
 場面転換の時に壁の模様として使われる映像がかっこよかったです。特に黒い染み(しずく?)がぼとぼとと落ちて暗転していくのはゾクっと来ました。物語の補足として使われたのもわかりやすかったです(土星人の緑ビームで人間は溶ける等)。

 近未来編のラストシーンでは収容所で爆発(?)が起こり、空から石が山ほど降ってきます。まず天井から、白く光る一本の線がシュルルルルー!っという音を立てて一直線に床に落ちて来たのに驚きました。水かな?って思ったんですけど、クサリでしたね。クサリが落ちてきた衝撃と重みでキャットウォークの床が開くのでしょうか。大きくて頑丈そうな収容所の屋台崩しは大迫力でした。

 小泉今日子さん。【A】誰とでも寝る女ミミ役。【B】支配者“M”の通信を受ける収容所幹部リュカ役。ミミ役のあばずれ演技が気持ちいいぐらい性悪で良かったです。
 貫地谷しほり(かんじや・しほり)さん。【A】益子の妻役。【B】リュカ(小泉今日子)を訪ねるレナータ役。最初のダンスの時から目につきました。リュカとの「落ち着き!(by 秋山菜津子)」対決は見事。田中哲司さんとのHシーンも堂々としてて、お若いのに貫禄でした。
 田中哲司さん。【A】とにかく女とやっちゃう目崎役。【B】過去にはゼリグ(堤真一)と運動をしていたクラウス役。目崎役のエロ狂いのワルと、クラウス役のゆらゆら、ふらふら、いい加減な感じがとても対照的で、そのやわらかさがセクシーでした。

出演=堤真一/小泉今日子/松尾スズキ/秋山菜津子/犬山イヌコ/田中哲司 /明星真由美/貫地谷しほり/池田鉄洋/今奈良孝行/篠塚祥司/山崎一
作・演出=ケラリーノ・サンドロヴィッチ 美術=中越司 音楽=伊藤ヨタロウ 照明=原田保 衣装=前田文子 音響=水越佳一 映像=上田大樹 ヘアメイク=川村陽子 振付=横町慶子(ロマンチカ) アクション指導=西村良治郎/西村陽一(JAE) 演出助手=石丸さち子/相田剛志 技術監督=堀内真人 舞台監督=明石伸一 宣伝美術=永石勝 制作=佐貫こしの プロデューサー=加藤真規 企画・製作=Bunkamura 主催=Bunkamura
(水)休演。28ステージ。2005年 11月19日(土)S席¥9,000 A席¥7,500 コクーンシート¥5,000 中2階立見券¥3,000
公式=http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/event/kera/index.html

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Posted by shinobu at 2006年02月21日 00:44 | TrackBack (0)